【竹林崇|作業療法士】吉備国際大学 准教授 -第1章-

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CI療法は、麻痺手を生活で使うための手段です

―― 作業療法士を目指そうと思ったきっかけを教えてください。

 

竹林崇さん(以下:竹林)特別なことはないです。祖父が入院したときに、理学療法士や作業療法士という仕事があるということを知り、興味を持ちました。

 

―― 最初のお勤め先はどのような病院でしたか??

 

竹林 最初勤めたのは大学病院で、急性期がメインの病院でしたが、外来で慢性期の患者さんも診る機会もありました。

 

あとは、脳卒中に対するアプローチConstraint-induced movement therapy(以下:CI療法)を取り入れていたので、その経験もさせていただきました。

 

 

――ではまずCI療法について伺っていきたいと思います。CI療法というと、一般的に非麻痺側を拘束したり、使わせないというイメージがありますが、実際はどのような感じで行うのですか?

 

竹林 けっこうその辺で、誤解されている人が多い印象を受けます。

 

麻痺側に強制的な集中練習を行う機能的アプローチと思われていますが、CI療法の本質は、麻痺手の機能を効率的に生活への般化させることです。

 

歴史を遡ると1900年代くらいから基礎研究が始まっていて、臨床応用され始めたのが1980年代になります。

 

その当時は「Forced use therapy」と呼ばれ、確かに非麻痺側を拘束し、麻痺手を無理やり使うといった面が強調されていました。

 

ですが、今でいうCI療法は「生活における麻痺手の使用を麻痺手の使用に拘束(限定)する」といった意味を差します。

 

昔のように非麻痺手にミトンを付けるようなことは少なくなりました。(非麻痺手の脅迫的使用や前頭葉性の脱抑制が残存する症例といった意思に反して非麻痺手を使用してしまう症例などには非麻痺手の抑制は行います)

 

ーー ひとつの概念ということですね。私の周りでは、名前は知っているが実際に使っている人が少ないという印象があります。

 

 

竹林 学会発表を聞いていると、CI療法に関する演題の数は、かなり増えてきているように思います。

 

脳卒中のリハビリ関連の学会では、上肢に対するアプローチ関連の発表は、ロボット・CI療法・川平法・電気刺激のいずれかが大半を占めています。

 

そう考えると、実際に使っている病院数も増えてきていて、それだけ多くの人に認知されてきているのではないでしょうか。

 

ただ、個人的には「CI療法」という名前やメソドロギー自体が絶対的なものとは思っていません。

 

あくまで患者さんの目標を到達するためのひとつの手段にすぎないと思っています。選択肢のひとつとして、「CI療法という考え方、手段がありますよ」ということです。

 

 

新人でも実施できる?

 

―― 新人セラピストがやっても、効果は出るのですか?

 

竹林 1例も経験してない人と、5例くらいの経験がある人であれば、かなり効果は違うと思います。ただ、経験した症例が5例くらいから30例くらいまでの間では大きな差はない印象です。

 

従来法に比べて、比較的スキルが上がりやすく、一定の成果を残すことができる印象があります。

 

しかし、経験した症例が30例から50例くらいになると、また少しずつ効果が研ぎ澄まされる印象です。ですので、まずやってみることが大切だと感じています。

 

―― その「差が出る」というのは、何が違うんですか?

 

竹林 要するに引き出しの多さですね。CI療法では、基本的に私たちは患者さんに触りません。

 

患者さんへの課題の設定の仕方やその難易度、どのタイミングで難易度を上げるか、環境設定など、ある程度経験をつまないと分からないものです。

 

でも、他の徒手的な手段と比較すると、感覚的な要素や技術の練習はそこまで必要なく、方法が比較的システム化されているので、結果は出しやすいと思います。

 

 

―― 今の時代、療法士は患者さんを触りすぎだとかいう話も聞いたりしますが、竹林さんは徒手療法についてどのようにお考えですか??

 

 

竹林 世の中手段がたくさんありますが、役割がそれぞれにあり、目的が異なると思っています。

 

例えば、私は弛緩性の麻痺に対して、正直絶対的な手立てを持っていません。

 

CI療法をはじめとする患者さんに比較的触らない課題指向型アプローチでは対処が困難です。そうなると徒手的に介入しなくてはいけない。

 

私よりも徒手的な技術に秀でた方々はたくさんいますので、その方達の介入方法の方がより良い結果を示すことができるかもしれません。

 

逆に、弛緩性の時期を過ぎ、痙縮が亢進し、分離が向上してきた時期には、CI療法は大きな力を発揮します。

 

例えば、先行研究で、無作為化比較試験によって、脳卒中の方にCI療法を30時間、ボバースを10時間行う群に分け、治療効果を比べた報告があります。

 

この研究では、両群の機能面を比べると、介入時間に差があるにもかかわらず、有意差がないと言われています。

 

これは、麻痺手の分離を促すなど、機能面の向上に関しては、作業を使い、徒手的な介入を行わないCI療法はどうしても時間がかかり、非効率的です。

 

逆に、徒手療法だと手を介助しながら正確な運動の反復ができるので、とても効率がいい。

 

ただ、生活の観点でいえば、両群の間に機能面の差はなくても、CI療法のほうが生活における麻痺手の使用頻度が改善しています。

 

つまり、重度の症例や中等度以降の症例において、機能のみを改善したければ、徒手的な手段を使えばいいですし、機能だけでなくその機能を生活に般化するといった麻痺手の使用行動を変えたければCI療法のような課題指向型アプローチを行ったほうがいいということです。

 

それぞれの手段の特徴や役割を理解し、単一の手段にこだわらず、上手くコラボレーションして、病期や重症度、目的ごとに使い分けたりするのがいいと思います。

 

次のページ>> 生活期での「脳卒中後の上肢に対するリハビリテーション」

 

竹林崇さん略歴

学歴

2003年 川崎医療福祉大学 医療技術学部 リハビリテーション学科 卒業

2011年 大阪府立大学大学院 総合リハビリテーション学 入学

2013年 大阪府立大学大学院 総合リハビリテーション学 終了

2013年 兵庫医科大学大学院 医科学先行 高次神経制御系 

     リハビリテーション科学 入学(現在所属)

職歴

2003年 兵庫医科大学病院 リハビリテーション部 入職

2016年 兵庫医科大学病院 リハビリテーション部 退職
2016年 吉備国際大学 保健医療福祉学部 作業療法学科 准教授(現職)

書籍

  1. 齋藤祐樹,友利幸之助,上江洲聖,澤田達徳,編(竹林崇 [分担著者]):作業で語る事例報告:作業療法レジメの書き方・考え方.医学書院,東京,2014年
  2. 道免和久,編(竹林崇 [分担著者]):ニューロリハビリテーション.医学書院,東京,2015
  3. 斉藤秀之,加藤浩,金子文成,編(竹林崇 [分担著者]):感覚障害で挑む 感覚・運動機能回復のための理学療法アプローチ.文光堂,東京,2016

学術論文

  1. Kagawa S, Koyama T, Hosomi M, Takebayashi T, Hanada K, Hashimoto F, Domen K. Effects of constraint-induced movement therapy on spasticity in patients with hemiparesis after stroke. J Stroke Cerebrovasc Dis22: 364-370, 2013
  2. Takebayashi T, Koyama T, Amano S, Hanada K, Tabusadani M, Hosomi M, Marumoto K, Takahashi K, Domen K. A 6-month follow-up after constraint-induced movement therapy with and without transfer package for patients with hemiparesis after stroke: a pilot quasi-randomized controlled trial. Clin Rehabil 27: 418-426, 2013
  3. Marumoto K, Koyama T, Hosomi M, Takebayashi T, Hanada K, Ikeda S, Kodama N, Domen K. Diffusion tensor imaging predicts the outcome of constraint-induced movement therapy in chronic infarction patients with hemiplegia: A pilot study. Restor Neurol Neurosci 31: 387-396, 2013
  4. Takebayashi T, Amano S, Hanada K, Umeji A, Takahashi K, Koyama T, Domen K. Therapeutic synergism in the treatment of post-stroke arm paresis utilizing botulinum toxin, robotic therapy, and constraint-induced movement therapy. PM R6: 1054-1058, 2014
  5. Amano S, Takebayashi T, Hanada K, Umeji A, Marumoto K, Furukawa K, Domen K, et al. Constraint-induced movement theraoy after injection of botulinum toxin type A for a patient with chronic stroke: One-year follow-up case report. Phys Ther, eoub ahead of print, 2015
  6. Takebayashi T, Amano S, Hanada K, Umeji A, Takahashi K, Marumoto K, Kodama N, Koyama T, Domen K. A one-year follow-up after modified constraint-induced movement therapy for chronic stroke patients with paretic arm: a prospective case series study. Top Stroke Rehabil22: 18-25, 2015
  7. Tanaka H, Nagata Y, Uematsu M, Takebayashi T, Hanada K, Inokawa M, Fukuhara K, Ogawa Y, Haga D, Kakegawa Y, Nishikawa T. Development of the Cognitive test for severe dementia. Dement Geriatr Cong Disord 40: 94-106, 2015
  8. Takahashi K, Domen K, Sakamoto T, Toshima M, Otaka Y, Seto M, Irie K, Haga B, Takebayashi T, Hachisuka K. Efficacy of upper extremity robotic therapy in subacute post stroke hemiplegia: An exploratory randomized trial. Stroke 47: 1385-1388, 2016

海外活動

2012年 Alabama university, Birmingham Constraint-induced movement 

     therapy training course 修了

2012年 JAICA 専門家として現地に短期派遣

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