第一回:自費リハビリ施設の立ち上げ【AViC THE PHYSIO STUDIOマネージャー | 藤本修平先生】

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ロスカットのマニュアル作成

―現在の働き方について教えて下さい。

 

藤本先生 大まかに言うと、週4日は株式会社豊通オールライフ(以下、豊通オールライフ)、週1日は契約している企業・病院などで新規事業や労務のコンサルティング、土日は講演や論文・書籍の執筆、といった形で働いています。豊通オールライフに転職してからは、AViC THE PHYSIO STUDIO(以下、AViC)の立ち上げを主に行なってきました。例えば、店舗の内装や導入機器の決定、集客戦略や料金体系の設定、運用マニュアルの作成、内覧対応、スタッフのタスク管理、営業・連携先への訪問などです。

 

集客戦略は、店舗のターゲット層を考えて戦術を考えます。マーケットを考えながら、プロブレム-ソリューションフィット、プロダクトマーケットフィットを詰めていくことになります。どんなにいいことをしていても、プロダクトとマーケットが合わなければ意味がありません。私自身、B2Cのビジネスは初めてですが、勉強しながら実践で考えていくという作業の繰り返しです。

 

営業では病院や施設にも行くことがあります。利用者さんにとって最大限にメリットが生まれるように、連携に向けて交渉します。ただ利用者さんを送っていただくというのは難しいため、先方にもメリットがあるように、どのような連携を結ぶかがポイントです。AViCがどのようなポリシーで行っているか理解してもらうために、積極的に内覧のお誘いもしました。もともと医療従事者の知人が多いため、その知人たちの認知度を高めて、外部で広めてもらうことも大事な営業活動になります。

 

また、店舗オペレーションに関しては、できるだけ均質なサービス提供を目的にマニュアル化することが必要になります。自動ドアが開き利用者さんが来たところから、自動ドアが閉まり利用者さんが帰られるまでのフローです。難しい点は、利用者さんの個別性が高いということもあって、プログラム内容をオペレーションまで落とし込むのが容易ではないことです。そこは、臨機応変に対応するスキルを身につけてもらうように考えています。いかに普段からバリエーションを考えておくか、提案の引き出しを多くするかがポイントです。私の場合は、暇を見つければ妄想して、イメージトレーニングばかりしていました。

 

自費リハビリと病院との違いは、サービス性です。自費リハビリはサービス性が高いので、それに合わせたオペレーションを設定していく必要があります。例えば、サービスの内容をどのような文言でプレゼンするのかまで考える必要があります。病院では比較的流動性が高いものも、全てマニュアル化することで、誰にでも同じようにサービス提供できるように心がけています。サービスの質の標準化が達成されれば、あとはスタッフの裁量で臨機応変な対応ができるよう進めていくことになります。

 

AViC THE PHYSIO STUDIOの役割

― AViCについてお聞かせください。

 

藤本先生 保険外の自費リハビリ施設です。重要視していることは3つあって、まずはエビデンスに基づいたヘルスサービスを提供するということ。エビデンスに基づいてと言っても、そもそもEvidence-based healthcareはエビデンス、資源、利用者の価値観、専門家の経験を元に意思決定を行うものですから、「エビデンスレベルの高いことだけを行う」というわけではありません。もう一つは、データの見える化です。評価項目は、脳卒中だけでも40項目以上あり、それぞれの方にあった評価を選択します。データを見える化することで、後遺症に悩まれている方の不安を取り除ける可能性があります。地域連携をしている医療機関・介護保険施設・ケアマネジャー、家族にも還元していくことになります。そのような形で、地域包括ケアの一端を担うことが当面の目標です。

 

三つ目が、適切な情報発信です。オウンドメディアも持っているので、正確な情報を適切に伝えたいと思っています。自費リハビリの分野では、規制がほとんどない分、顧客誘引性の高い、いい加減な情報を出している会社・個人事業者が存在するといわれることもあります。しかし、AViCでは、違法でないにしても、医療従事者としてそのようなことはしないというポリシーを持っています。

 

スタッフの質については、認定理学療法士・専門理学療法士・修士や博士(学位)の有無、臨床経験年数や学会・論文の有無など幾つかの基準を見ながらラダー制で担保していくことになります。臨床スキルというのは数値化しづらいですから、学習意欲があるかという部分でも、認定を持っているか、学位があるかといったことを参考に判断していく予定です。あくまで、最低限の判断軸になります。「それらの資格に意味があるの?必要ですか?」と言う人も中にはいますが、私自身は「そのような制度を有効活用できる人」と一緒に働きたいですね。意味があるものにできるかは、自分の能力次第ですので。

 

自費リハビリの主なターゲット層は、脳卒中の後遺症を持っている人たちの中でも、どちらかというと比較的若・中年者になると思います。復職を目的にリハビリをしたい、リハビリしたくてもするところが無い、という人は若年者や中年者に多い印象です。あとは家族から「運動してほしい」というような方ももちろん対象になります。ただ、レスパイトのように「(家族が)ちょっとお買い物に行くから預かってほしい」みたいな問い合わせは、サービス資源上お断りすることにしています。本当によくなりたい人にだけ来てもらわないと、受けたい人が受けられないという悪循環に陥る可能性があるためです。

 

大企業が運営する強み

藤本先生 あとは免荷式トレッドミルや軽度認知機能障害ケアバイク、レッドコードなど最先端のリハビリ機器・装置を揃えました。そういった自費リハビリは、今までほとんど見ませんし、デイサービスや病院でも全て揃えているところはあまり見ません。機械があればいいということを言っているのではなく、最低限の均質なサービス提供を行う上で必要と判断したものを導入しているということです。評価機器にもかなり力を入れていて、ARAT、Box & Block test、セメスワインスタインモノフィラメント、筋力計など、まずデータの見える化を行う上で妥当性の高い評価を導入しました。

 

 

妥協せずに適切なサービスを提供できるのは、豊田通商グループという大企業が運営する強みだと思います。また、マーケットをより広めることができ、社会課題全体の解決に繋がると思います。

 

大企業が参入すると、採算性があると考える企業が自費リハビリ業界に参入してきます。参入する企業が増えれば、価格競争で定価も下がり、そこで質を担保しながら提供できるところが生き残るでしょう。質というのは、プロセスのことだけを言っているのではなく、むしろアウトカムのことですね。

 

最近、リハビリ難民という言葉が流行していますが、自費リハビリの本質は社会保障費の削減にあると考えています。医療費が1年間で約42兆円と言われているなかで、脳血管リハビリテーション料では約4,000億円、疾患リハビリテーション料をすべて合わせると約8,000億円にものぼります。社会保障費対効果を考えたとき、自費で効果が出せればもっとも費用対効果が良いわけです。その可能性を持っているのは、自費リハビリという立て付けが第一の選択ではないでしょうか。

 

価格競争によって単価が下がれば、自費リハビリを多くの人が受けることができるようになり、結果として200万人以上と言われるリハビリ難民の問題は次第に解決できるかもしれません。そのような中間ゴールまで行き着くには、データの見える化、エビデンスベーストのサービスが欠かせないということになります。

 

また、AViCを起点にして、色々なヘルスケアサービスと連携できることも利点です。今まで私は、一つの事業が終わったら次の所に移ってまた新しいプロダクトを、と考えていました。ビジネスをしたくてビジネス現場にいるというよりも、大学教員をする上で面白い授業ができるようになるための一つの手段としてビジネスに携わっているという意識ですので、多くの場所を経験できる方が良いのです。しかし、豊通オールライフでは、AViCを起点に、複数のプロダクトを考えていくことも視野に入ると思います。そのためには、大企業ではありますが、ベンチャー企業のようなスピード感とタイミングの適切さを考えて動くことは必須でしょう。スピード感、タイミングが合わなければ、応援してくれる人も離れていきますし、展開性が乏しければ担当者もやりがいや楽しさを感じられなくなると思います。

 

*目次

第一回:自費リハビリ施設の立ち上げ

第二回:自費リハビリのデータの見える化

第三回:エビデンスの作り方

第四回:理学療法ガイドラインの作成

 

 

藤本修平先生プロフィール

理学療法士、認定理学療法士(脳卒中、ひとを対象とした基礎)

弘前大学医学部保健学科、弘前大学大学院修了(保健学修士)

京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 博士後期課程 研究指導認定退学

 

【職歴】

2009-2011年 津軽保健生活協同組合 健生病院 理学療法士

2011-2015年 東京湾岸リハビリテーション病院 理学療法士

2014-2017年 浜松医科大学医学部心理学講座 客員研究員

2015-2016年 株式会社メドレー 新規事業部

2016-2017年 株式会社リンクアンドコミュニケーション 事業開発部 マネージャー

2016-現在  東京都健康長寿医療センター研究所 福祉と生活ケア研究チーム 

2017-現在  株式会社豊通オールライフ 新規事業開発部(現・ヘルスケア事業部)

           AViC THE PHYSIO STUDIO チーフマネージャー

 

■研究テーマ/専門分野 ヘルスコミュニケーション、情報科学、診療ガイドライン、Shared decision making、臨床倫理 (代表論文などはコチラ) 

■著書

訪問リハビリテーション アドバイスブック
Posted with Amakuri at 2018.4.17
青山 朋樹, 高橋 紀代, 辰巳 昌嵩
メジカルビュー社
作業療法研究法
Posted with Amakuri at 2018.4.17
竹田 徳則, 大浦 智子
医歯薬出版
PT・OT・STのための診療ガイドライン活用法
Posted with Amakuri at 2018.4.17
中山 健夫, 日髙 正巳, 藤本 修平
医歯薬出版
予防理学療法学要論
Posted with Amakuri at 2018.4.17
大渕 修一, 浦辺 幸夫, 吉田 剛, 井上 和久
医歯薬出版
行動医学テキスト
Posted with Amakuri at 2018.4.17
日本行動医学会, 野村 忍, 堤 明純, 島津 明人, 中尾 睦浩, 吉内 一浩
中外医学社
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