様々な人を巻き込み、物議を醸した「東京五輪選手村 理学療法士スタッフ募集」この話題。「もういいだろう」という声も聞こえてきますが、そんな声には耳を貸さず、2020年の開催までこの話題の取材を続けてやろうかと密かに闘志を“燃”やしている、備長炭こと編集長のイマイ(@shunta0701)でございます。
そもそも、こんなにも拡散し、ダークな話題となったこの問題、実は一人のリツイートが発端だと、POST編集部は突き止めました。そのツイートがこちら↓
なんとこのツイートですが、1万人以上にまで拡散しています(POSTとしてはありがたい)。それでも、こんなに好き勝手言わせておくわけにはいきません。
POSTの編集長として、先輩理学療法士として、西川先生にガツンッと言って聞かせたいと思います。それでは、ガツンッの一部始終をどうぞ。
夜分遅くにすいません(日本15:00/カナダ0:00)。本日は、西川先生が燃やしてくださった話題の「東京五輪 理学療法士ボランティア」についてお話を伺えればと思います。(注意:最初は下手に出ながら徐々にガツンッを企てています)
はじめまして。ずっとPOST見ていたので、いつかは自分もと思っていたんですけど、まさかこんな形でとは。笑 この件に関しましては、色々ご迷惑をおかけしました。燃えましたね。笑
(…あれ、めちゃくちゃいいやつじゃないか。作戦変更)よく燃えました。今回は、もっと燃やして欲しいと思いまして、理学療法士業界の着火剤こと西川先生にお話を伺いたいのですが、先生のこれまでの経歴をざっくり教えてもらえますか?
笑。そうですね。理学療法士の養成校の時代から、スポーツ現場で経験を積んでいまして、臨床1年目から、お金をいただいて、トレーナー活動をしていました。2年目の頃からテニスの仕事が増えはじめたという感じです。本格的に独立したのは、3年目の終わった頃です。
西川匠先生(@physio_tennis):理学療法士免許取得後、病院勤務の傍らトレーナー活動を行う。 現在は独立しフリーランスとして、プロからジュニア選手まで、テニスプレイヤーのサポートを行なっている。
(…タレント事務所の宣材写真かと思いました。喋り方も丁寧でいい人だ)今海外の舞台で活躍されていますが、それは独立されてから海外が多くなったのですか?
そうですね。独立してすぐは、大阪市内の仕事が多く、選手をじっくりみるために、スタジオも作りました。独立してから2年くらいたって、海外の仕事が増えてきた感じですね。
なんて素敵なスタジオなんだろう。
1年目からお金をもらって、トレーナーとして働かれているようですが、それはご自身で契約交渉されたんですか?
最初の交渉は今でも覚えていて、週に4回行って、月に1万円でした。その当時はまだ自信もないということもあったんですが、自分の後に続くトレーナーがボランティアになる流れを作りたくないので、「交通費」という形で請求しました。
ある意味、理学療法士が部活のトレーナーで帯同するのはボランティアが当たり前、みたいな流れはもうありましたからね。
プロの選手が、プロのトレーナーを雇う時、お金が発生しますが、部活になるとそうじゃないですよね。なので、1〜2年は苦労しました。選手から親御さんを紹介してもらって、トレーナーの重要性を説明したり、監督コーチとのパイプ役になったり、そんなことをしながら交渉していました。
なるほど。そういう苦労もあって、あの一件はよく燃えたのですかね。
いや、そういうわけではないんですけど。苦笑 別にボランティアを否定しているわけではないんです。Twitterだと文字制限があって、全ては伝えられないので仕方ないですが。
そうですよね。真っ向からボランティアを否定する人だったらどうしようかと思いました。ちなみに、先生が海外遠征に帯同されるときは、いくらもらっているんですか?包み隠さず教えてください。
笑。いや、全然言っても大丈夫な部分ですが、だいたいの相場は、日給2万円です。理学療法士というよりも、トレーナー全般ですね。このくらいの金額をもらえれば、普通に働いているのと遜色ない金額です。
確かにそうですね。訪問リハの1件あたりに支給されるお金から、日給を計算しても同じくらいですね。
なるほど。そうなんですね。契約するときは大体1週間単位の契約になるんですけど、休日問題があります。つまり、1週間海外遠征しても、1日は休日を必ず挟みます。この休日に日給を出すのか、というのは重要だったりします。
実稼働時間なのか、拘束期間なのか、というところですね。休日でも、選手のコンディショニングとかありそうですけどね。
というよりも、海外に来て休日と言われてもやることないんですよ。笑 ジュニアの子達ときていると、「どっか行きたい」と言われれば、その子達だけで行かせるわけにいきませんからね。トレーナー側からすると、休日ではないという考えではいます。
それ保護者ですね。でも、そういう頭を悩ませるような、交渉現場にいる人からすると、やはり“あの”募集要項は腹がたったのですか?開口一番「ふざけんな」ですもんね。
苦笑。どうなんですかね。自分としては、どう読者に伝わっているのか、わかっていないんですよね。あの後に取材されていた、木内さん眞田さんの記事をみても、すごくよくわかるんです。それに対して、自分が放った意見は、どうみられているんだろうと。
完全にアンチです。木内さん&眞田さんVS西川さん、みたいな。それは冗談ですが、対比で見られているかもしれませんね。肯定派VS否定派みたいな。
やっぱりそうなんですね。でも、若干狙った部分はあります。どちらの意見も正しいというのは、全体的に見ればわかるじゃないですか。でも、個人の意見として、インパクトがないんです。なので、僕の立ち位置としては、委員会や協会のスタンスを、一般の人に問いたかったというのが、あのツイートには込められています。
でも、あの開口一番「ふざけんな」ツイートのおかげで、POSTのこれまでの1日観覧数記録を軽く超えていきました。3日連続世界新記録を出した選手の気持ちです。その節はありがとうございました。
えーーー!僕のブログには9000人くらいだったのに。じゃー観覧数でかなり儲かったんじゃないですか?
いや、POSTは読者の読みやすさを第一に考えているので、PPC入れてないんです。読者を第一に考えているので。読者を第一に。
でも、あれで議論が巻き起こったことはいいことでしたよね。業界内のことが業界外の人に伝わって、議論になったのは良かったですね。
そう!それが重要なんですよね。答えは個人が持っていればよくて、重要なのは議論すること。でも実名でね。
ホントそこです。あの時、すごく議論と関係のない誹謗中傷が増えて、そのほとんどが匿名なんですよ。
でも、開口一番「ふざけんな」ツイートでは、結局募集要項のどこに怒ったのですか?
そうですね。要項で出されていたボランティアのスタンスに疑問を感じたんです。 明らかに「即戦力になり得る理学療法士だけ参加して、それもプロとして仕事してください」と言うメッセージに見えたので。
なるほど。そういうことですか。ボランティアであれば、ある程度経験がなくてもチャレンジしたい理学療法士にチャンスをあげればいいのに、募集要項はめちゃくちゃ高度な理学療法士を募集しちゃっていると。ボランティア精神は無視かと。
そうですね。木内さんの記事見たときに自分もまさにそうだな、と思ったのが「やりたい人がやればいい」ということです。ボランティアってそもそも、そういう“心”からするものですよね。あの要項を見てしまうと、条件が厳しすぎて、やりたい人がやれるような要項ではないと感じました。これでは、本当に有志で参加したいと願っている理学療法士が参加できない、と。
トータルですね。経験年数5年というのも、それだけで判断するのは難しいですし、その中で3年のスポーツ現場経験、あと最大の問題は“英語”ですよ。僕が怒りを覚えたポイントが2つあって、一つ目がそこなんです。
木内さんもおっしゃられていた、リスク管理の部分ですか?
そうなんです。少なくても、我々医療職は、選手に関わることで、選手生命に関わるわけです。ですから、安全が第一優先です。そういう責任のあるポジションにいる上で、無償というのはどうなのかなということですね。
あともう一つは、今回の要件を満たすような、現場経験が豊富で国際大会などでも実績がある理学療法士の中には、普段スポーツの現場で常に報酬をいただいて活動している方もおられるでしょう。彼らの中には、今回のような要項では応募したくないという人も(少なからず僕の周りには)居てて、ただでさえ貴重な人材が集まらなくていいの?ということを投げかけたかったんですよ。
色のついたテープを巻くの憧れます。
なるほど。ある程度、めちゃくちゃ専門的なスキルを持っている人を有償で雇って、各会場に配置して、あとは無償でも憧れのオリパラに関わりたいと思っている有志のボランティア理学療法士を集めればいいじゃないかと。
そうですね。有志を募るボランティアに関しては、もう少し基準を緩めてあげるとか。その辺りの、スタンスにものすごい矛盾を感じたんです。
もしかしたら、そのあたりの細かいスタンスというのは、まだ吟味されていないのかもしれません。もしくはこれから、情報が出てくるのかもしれませんね。
あーそうなんですね。そうかもしれないですね。確かに、委員会、協会、各担当者が交わると情報伝達大変ですもんね。
みんな混乱中なのかなという感じもしますね。それであれば、スタンスが読み取れない理由もわかりますね。
確かにそうですね。でも、選手の意見というのも聞いてみたいですよね。
眞田先生に聞きましたけど、帯同している理学療法士がいる国でも、選手が自由にリラクゼーション目的でポリクリニックを利用することもあったようです。もちろん、トレーナーがいない国の選手は、ボランティアスタッフがいてくれないと困ると思いますが。
そうですね。選手の境遇によって違いますね。でも、僕が一番心を痛めたのが、やる気と希望があるのに経験年数だけで、応募すら出来ない若い理学療法士のツイートを見たときですね。ベターな策としては、先ほど言いましたように、2つに分けて、ボランティアでやる気のある若い理学療法士向けの要項があるといいなと思います。
そこですよね。せっかく志ある若い芽が経験年数だけで切られてしまうのは、なんとかして欲しいですね。これからも取材続けます!ありがとうございました!西川先生が怖い先生じゃなくて安心しました。ちなみに、西川先生は理学療法士協会の会員なんですか?
会員でした、が更新しなかったので今年6月に失効しました(^_^;)今は非会員です。
いかがでしたでしょうか?炎上の火元、西川先生にお話を伺いました。読んでいただくとわかると思いますが、ボランティア全体の批判ではなかったようです。それよりも、ボランティアのスタンスが不明確によっておこった、今回のボヤ騒ぎ。
業界外にまで、その火種は飛び散りあわや山火事か⁉︎というところまで行きました。ようやく、業界内の話題が業界外の人たちとつなぐ議論ができたいいきっかけなのではないかと思っています。
最後に、これだけは言わしてください。
ふざけんな!協会に入れ!
ようやくガツンと言えました。こちらからは以上です。
西川匠先生はブログはこちら
http://takuminishikawa.com/