第一回:理学療法教育の転換期【首都大学東京 教授|網本 和先生】

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“セブンイレブン”な働き方

ー 理学療法士になったきっかけを教えていただけますか?

 

網本先生 信州大学の文学部に通っていた頃、臨床検査技師をしていた叔母に新しくできた学校があるよと勧められました。その後、大学を中退し、東京にある清瀬リハビリテーション学院を受験しました。

 

当時は、まだ全国で養成校が6つか7つしかなかった頃で、PTやOTがどんなものか、その違いすらもよく知らないで、なんだか面白そうだと思い受験しました。倍率は20倍くらいでしたね。清瀬の学院から帰ってきては、友人たちと徹夜で麻雀する。そんな学生生活を送っていました。

 

私が理学療法士協会の番号は1219番。日本で1219番目に理学療法士になった人間です。今は毎年1万4千人くらい理学療法士の合格者がいますが、当時は年間100~150人くらいの時代ですので、今から考えればかなり希少でした。

 

長野県の鹿教湯病院に最初2年間勤め、そのあと東京に戻ってきて、恩師の紹介で聖マリアンナ医大に転職し、19年間お世話になりました。単位数制限もなかった頃なので、午前中だけで20人以上。お昼ご飯を食べる間もなくそのまま午後に突入して、本当にものすごい数の患者さんを診ていました。青天井というか、やればやるだけ診療報酬を稼げるわけです。

 

朝7時くらいに病院について、カルテを診て、怒涛のような臨床をし、勤務後は研究で家に帰るのは23時過ぎ。ちょうど当時のセブンイレブンみたいですね(笑)

 

ーもともと研究がしたかったんですか?

 

網本先生 そうですね。鹿教湯病院には研究所もあって、動作分析機器や床反力計なども揃っていました。

 

学会発表をするのであれば、出張扱いで旅費も学会参加費も出してもらえるので、私だけでなくみんな盛んに研究をやっていましたね。恵まれた環境だったように思います。

 

長年、脳損傷例の高次脳機能障害やバランス障害についての研究に携わってきましたが、一年目の頃に臨床で悪戦苦闘してきた患者さんからこのテーマできています。当時は、理学療法自体の本もほとんどなかったし、論文を見てもよく分かりませんでしたので、自分で調べるしかありませんでした。

 

養成校が淘汰される時代

 

ー 理学療法士教育の養成カリキュラムも更新されました。先生のお考えをお聞かせください。

 

網本先生 大きい一歩だと思います。総単位数が、現行の93単位以上から101単位以上に引き上げられ、3年制で取得するのは難しい単位数になりました。

 

となると、専門学校は必然的に四年制にせざるを得ませんが、四年制の専門学校か大学かだと、自然と四年制大学を選択するようになると思います。そうなると専門学校は淘汰されていくと思います。

 

歴史を辿ると、1990年代の規制緩和を受けて、理学療法士養成校が急増しました。今や250校以上、大学だけでも100校以上あるわけですから、世界でも類を見ない状況です。

 

ー 世界の標準と合わせていくために、いずれはDPTにしていくべきだとお考えですか?

 

網本先生 例えばアメリカやヨーロッパの理学療法士の多くはPhD(大学院博士課程)を取得しています。絶対に必要だとは言えませんが、あった方がいいとは思います。


 

ー 実習に関する内容は大きく変更されており、業界に対するインパクトは大きいと思われます。

 

網本先生 現在は、学生にレポートなどの課題が大量に出されたり、負担が非常に大きいことが問題視されています。「とにかく頑張らせる」という方法ではなく、診療参加型で実習時間内に、より実践的に集中して学ぶプログラムに変更されました。

 

診療参加型は、評価や介入の方法を学生ではなく指導者が考えることが特徴です。学生は、指導者が考えたプログラムを実践するため、患者さんの安全性を担保できるメリットがあります。

 

ー 指導者側が「診療参加型」の実習を体験していないため、浸透していくには時間がかかりそうです。

 

網本先生 確かに、従来の指導方法を変えたくないという声も耳にします。しかし、それはおそらく認識の違いからくるものだと思います。

 

診療参加型の主旨は学生が診療チームに参加し、その一員として診療業務を分担しながら職業的な知識や思考法、技能、態度の基本的な部分を学ぶことにあります。一人の患者さんの診療に最初から最後までかかわることも可能です。

 

ただ、指導者の横で眺めているだけのものではありません。

ー続く

 

【目次】

第一回:理学療法教育の転換期

第二回:なぜ卒後の自己研鑽が必要なのか

最終回:協会と学会と県士会。「三位一体運営」最強論

 

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網本 和先生プロフィール

日本理学療法士協会常務理事

首都大学東京 健康福祉学部 理学療法学科

1980年東京病院附属リハビリテーション学院卒。

1993年筑波大大学院教育研究科修士課程

2002年昭和大大学院医学研究科博士課程修了

聖マリアンナ医大病院などを経て2006年より現職。

 

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