PT・OT・STを配置するということも検討
ー 今回は作業療法士と馴染みの深い政策について伺っていこうと思います。まず、障害者の就労支援についてですが、昨年は中央省庁が雇用数を水増ししていたことが発覚し問題になりましたね。
堀越 障害者雇用と一括りに表現しても、先天性疾患、身体疾患、精神疾患と障害は多様ですし、その状況によって障害が変化することもあるわけです。企業側に何かしらの負担がかかることになりますし、安定雇用を目指すというのは並大抵のことではないと思います。制度設計の時点で、実効性があるのかと言われればまだまだ不備がある状況は否めません。
一つ言えるのは、やはり障害者雇用を進めていくために、もっと専門的な知識を持ったコーディネート役のポジションをもっと強化しなければいけない。ジョブコーチのシステムの中にもっと専門的なカリキュラムを盛り込んで行かなきゃいけないと思っています。PT・OT・STを配置するとか、人を強化しない限りは人的環境・物理的環境に配慮した安定雇用は僕はできないと思っています。
精神障害に関しては、生活管理や就労支援にもっと入院初期の段階から介入していく必要があると考えています。服薬管理、病状管理ができてから就労支援に取り組むのでは遅いです。社会復帰までの間がどうしても長くなってしまいます。
脳卒中でも、少し前まではまずは安静期間が必要と言われてきていましたが、今は早期から動いていくべきだと変わってきているわけですから。就労も僕は同じだと思っています。
「障害者の安定雇用・安心就労の促進をめざす議員連盟」では、既に制度設計や具体的な取り組みについてのたたき台ができてきていますが、私も上記の内容を提言していきたいと思っています。
ー 医療的ケアの必要な子どもやその家族への支援についてはどうお考えですか?
堀越 医療的ケア児は、まだまだ居場所や行き場所というのが少なく、制度上から抜け落ちてしまっている言わざるを得ません。さらに言えば、お子さんを安心して預けられる場所がないということで、お母さんの生活にも制限が出てきてしまうため、お子さんだけでなく、お母さんの”自分らしさ”の損失にも繋がります。
少数なのかもしれないけど、しっかりと手厚くしてあげるという必要があります。まずは、こういう状況があるということを増やすことで多くの人に関心をもってもらおうと活動しています。
資格をもっている人はいるが、働いている人は少ない
ー 今は認知症基本法の成立に向けて国が動いていますが、作業療法士議員として認知症についてどのような制度が必要だとお考えでしょうか?
堀越 まずはもっとICTやAI活用していくべきだと思っています。これだけwebカメラが発達し、GPSも安価で設置できる世の中ですから、徘徊や身体抑制の問題も解決できるケースがもっとあっていい。
あとは、医療専門職だけが認知症について考えているだけではなく、もっとご家族の方や、介護士さんや地域の方々など認知症の方に関わる方たちの理解も深めていかなければいけません。オレンジサポーターのような方々を増やしていくために、もっと予算を当てていくべきだと思います。
結局、認知症の方が問題者扱いされてしまうのは、介護体制が常にギリギリの状況だからじゃないですか。では、なぜ人員が増えないのかというと、賃金や処遇の問題が一つ大きいと思います。
有資格就業率でいうと、介護士さんは約60%と資格を持っていても仕事についていない状況です。特別養護老人ホームではベットに空きがあっても、介護士さんが足りていないがために、入居者制限をして利用者側は待機させられているところが多いと聞きます。
まずは処遇改善をはかり、現場を手厚くしていく。1人が1人にしっかり向き合うことで、ちゃんとしたケアが初めて提供できるのではないでしょうか。
ー もっと入院中から理学療法士・作業療法士もご家族さんに対しても働きかけしていく必要があると思いました。
堀越 そうですね。でも、家族が認知症を理解しても、やっぱり家族となるとちょっと違う部分がある。家族だからこそ、きつく当たってしまうというところもあると思うんですよね。「いつも笑顔で」っていうのは無理ですよ。だから、第三者がしっかり介入してあげて、患者さんのケアに当たるというのも必要なことだと思いますね。
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