作業療法ってすごい
POSTインタビュアー:国際平和村はどのようなところなのでしょうか?
勝田先生:自国で医療を受けられない子どもへの医療支援活動をしています。主には3つの活動があります。
1つは子どもたちへの治療援助です。医療が受けられない子どもたちをドイツへ連れてきて、医療を経て自国へ返します。2つ目は現地の医療の底上げ活動です。自国でより良い医療を受けられるように、その国で指導や物資支援をしています。3つ目は平和へのキャンペーンです。「平和とは」を考える機会もってもらえるようにしています。
POSTインタビュアー:日本人のボランティアも多いのでしょうか?
勝田先生:時期によって人数は異なりますが、常時6~10数名いると思います。この間も作業療法士さんが1年間のボランティアで来てくれていました。
POSTインタビュアー:ボランティアはどのようにしてきているのですか?
勝田先生:日本人だと住み込みの場合、「研修生」と呼ばれるのですが、6か月~1年間の期間で受け入れています。
ドイツ在住の日本人であれば通いでのボランティアも可能です。この場合、期間や頻度はその方の都合で決定できます。
でもドイツ語が話せることが必要なのと、費用は自己負担です。特別な技術技能は必要ではありませんが、身体が資本になるので、健康な方がお勧めですね。笑
住み込みでのボランティアでは共同生活になるので、それも大丈夫な人が良いかと思います。
POSTインタビュアー:勝田さんは実際にボランティアに参加されてどうでしたか?
勝田先生:私の場合、ワーホリの時に通いでのボランティアだったんですが、すごく良かったですよ。作業療法がすごく好きになりました。平和村で子ども達と関わってみて、「作業療法ってすごい」と思ったんです。
平和村でのボランティアはボランティア活動としてはすごく特殊な利点があると思うんです。先進国で生活しながら、途上国の子たちへの国際支援をできるんです。発展途上国へ実際に行って、国際支援をするよりは、普段の生活を大きく変える必要はとても少ないと思います。
葛藤の中で得られる「気づき」
インタビュアー:実際に作業療法士としてはどのような活動をされるのですか?
勝田先生:受け入れている子どもはドイツ国内に350人ほどいます。私が作業療法を行っている子ども達はそのうち120人ほどになります。リハハビリの職員は私一人なので、マンパワーは圧倒的に足りてないです。だから葛藤もたくさんあります。
一人の子どもに十分な時間を費やすべきなのか、短い時間でも多くの子どもたちを関わるべきなのか…など。平和村における作業療法の在り方に対しても葛藤があります。加えて、その他の業務とのかかわりにおいても葛藤があります。
リハビリテーション部には看護師2名、教員1名、作業療法士1名で構成しています。そんな状況だから、他職種からもリハビリ以外の仕事をお願いされることも多いです。
例えば、包帯交換であったり、車椅子の修理であったり、その他もろもろです。それはそれでとても勉強になることが多く、よい機会だと思うのですが、それらのことを私が行っている間、子どものリハビリは行われないわけです。
ただでさえ、十分なリハビリの機会が提供できているわけではないので、「リハビリをする時間を削られている」と感じることがわたしにとってはストレスですね。
だから他職種に作業療法の重要性(子供たちには傷の治療と同じくらいリハビリの時間が必要であるということ)を知ってほしくて、啓蒙活動もしています。
インタビュアー:なるほど。職種の垣根を越えた役割も必要になるのですね。どのような障害を抱える子供が多いのでしょうか?
勝田先生:子どもの疾患はいろいろあり、本当に様々です。国によっても特色があるように思います。
アフリカ地方アンゴラでは骨髄炎や先天性内反尖足が多く、パレスチナでは爆弾による被害後障害、アフガニスタンでは地雷ややけどなど…です。現在は9か国へ支援をしていて、特にOP後に関わることが多いですね。
内容としては、歩行訓練や可動域訓練、義足や義肢の練習。やけどの皮膚移植後のリハビリテーションなどが対象になります。
親が子ども達の側にいない状況なので、帰ってからのリハビリテーションの重要性を本人に伝える必要性が強くあります。子どもがリハビリテーションの重要性を理解し、実際に行うように指導していくことが大切だと思っています。
インタビュアー:それはすごく難しそうですね。そんな中での子どもたちとの関わりで何か思い出に残るエピソードはありますか?
勝田先生:あるとき、杖を使っている子どもから、『帰る前に杖先のゴムを余分にください』と言ってきたことがありました。10歳くらいの子どもだったはずですが、帰国後ことをしっかりと考えた子で、私も気付かされました。
途上国では物はすぐに手にはいりません。それにもしそれらが壊れたときにどうしたらよいのかとか、またそれらがない状態でどうにか生活をできるか方法も伝えないといけないし、その方法を練習しておく必要もあります。
しばしば、子どもたちは、「帰ってからの生活のことを考えてるんだなぁ」と思わせられますね。