「移住したい国 8年連続No.1」のマレーシア
2006年〜2013年までの8年間、日本人が移住したい国No.1になっているマレーシアは、生活費が日本の物価の約1/3で、過ごしやすい気候で、治安も他の発展途上国よりも良いとされているため、移住を考えるにはおすすめの国!とされています。そのため、首都圏や近郊都市周辺では、高層マンション(コンドミニアム)が立ち並んでいます。しかし、現地の方にとっての住居は所得により様々です。マレーシアは多国籍国家であり、マレーシア系、中華系、インド系の割合が地域によって異なります。所得や収入の違いにより、コンドミニアムといわれる高級マンションから、一般的なアパート、一軒家、政府が低所得者に提供する保護世帯アパートまで、住環境も様々です。郊外には、高床式住居が残っている地域もあります。
外に出る機会が減ってしまう環境
マレーシアでは「歩いて移動する」よりも「車、バイク生活」が主流であるため、道路の舗装や歩道の整備が不十分であり、車いすや杖歩行の方にとっては移動しにくい環境となってしまっています。写真をみると、移動しやすそうにも思いますが、実際に街中で車いすの使用者を見かけたのは、数回程度。都市部で巡回しているバリアフリーバスは車いすスペースも設けているのに、バス停までの道路と段差が解消されておらず、市内のバスも、道路渋滞等での遅延が常にあるため、障がい者の方にとっては、まだまだ住みにくい環境であると思われます。福祉用具や住宅改修に対する助成はなく、障害を持った方が家庭復帰した際、エレベーターや階段の手すりがなく、外出機会が減り、無為自閉的な生活になってしまうケースも多くみられました。
日常生活動作と住環境
一般的なマレーシア家庭のトイレは和式であり、ショッピングモール等には洋式のトイレもありますが、トイレットペーパーがなく、排泄後の後処理は水です(貯め水を使う場合と、予めレバー付きの水道ホースが設置されています。)!そのため、使用後のトイレは床が水浸しになっており、非常に滑りやすい環境です。私の配属先の病院のトイレには手すりが設置されていましたが、手すり等の環境整備はまだまだ整っていません。室内での移動に介助の必要な方は家族の直接介助か、杖歩行が主であり、トイレからは壁等を伝い歩く、というご家庭が殆どでした。
住みやすい環境作りは周囲や住民の方の障害理解が必要
私が出会った脊髄損傷の方は、自分で仕事を見つけて社会生活を送れてはいるが、「まだまだ意見を率直に言える場が少ない。」「スポーツ等の活動の機会はあるけど、自分たちが本当に困っていることを国民の方にどう伝えていくのかが課題だ」と話されていました。私が配属先で関わっていた精神障害を持つ方には、さらに差別や偏見の目が根強く残っている現状でした。
最後に
車いすや福祉用具、住環境の事の情報を赴任中にもっと情報収集しておくべきだった、と反省しながらも、このような記事を書く機会を頂けて、活動していた環境をあらためて振り返ることも出来たことに感謝しています。このコラムを読んで頂いた皆様、そして、発達障害領域を中心に情報追加して下さった佛教大学の山田恭子先生。本当にありがとうございました。
原早恵子先生経歴
経歴
専門学校卒業後、精神科病院で6年,身障リハセンターで3年勤務した後、青年海外協力隊としてマレーシアの公立病院の精神科にて活動を行った。帰国後も、作業療法士として、高次脳機能障害を持つ方への社会参加に向けた支援を行っている。