「低い認知度」が引き起こす現場のジレンマ【京極真】

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”患者さんのニーズと作業療法の強みのズレ”問題

 

ー 京極先生の中で作業療法業界に対してどんな危機感を持っていますか?

 

京極:結論を言えば、認知度の低さです。 アメリカでは、将来なりたい職業ランキングで、たびたび上位にランクするほど、作業療法士は認知されている人気の高い職業です。

 

しかし、日本では作業療法が国民に知れ渡っているとは言えない状況です。

 

臨床現場で、クライエントを担当させていただいたとして「初めまして。担当作業療法士の〇〇です」と言っても、多くのクライエントは作業療法士に何を相談したらいいのか分からないでしょう。そうなると「クライエントにどんな悩みがありますか?」と聞いたら、例えば「手が動かせるようになりたい」などと心身機能の問題について相談してきますよね。

 

作業療法の本来の強みは作業機能の問題解決ですから、それを活かしがたい事態に直面するわけです。その割を食うのは、クライエントです。認知度の低さは臨床現場で実践するときに、クライエントのニーズと作業療法本来の強みのズレというかたちで顕在化してきます。

 

担い手不足の深刻化

京極: そして、認知度が低いことは、”なり手”不足にも繋がってきます。実際、多くの作業療法士養成校は、受験者を確保するのに苦労しています。 ”なり手”不足に陥るということは、人材供給網が細く痩せ細るわけですから、臨床現場のマンパワー不足につながります。

 

そうなると、現場は忙殺されるので疲弊しますから、勉強する余裕もなくなってきて…と、どんどん悪い循環にはまってしまいます。 もっと「作業療法士がどういう職業なのか」、クライエントや一般の国民にちゃんと理解してもらうことを、本腰を入れてやっていかなければいけません。

 

僕がYouTubeをやっているのは、そういう目的もあります。一般の会社で働いている方たちが、たまたま僕のYouTubeを見て、「自分は、もしかしたら作業機能障害じゃないかと思うんです」とか「作業療法はこれからの世界で重要になると思います」などと連絡が来たことがありました。

 

論文や本を書いているだけでは、情報が届かない方々にリーチできているわけです。 僕ら専門家は研究論文、著書で情報発信するのは当たり前ですが、それってやっぱ専門家向きです。OT以外の人にも作業療法について知ってもらうために、SNSでの発信は重要だと思っています。

 

将来に不安を抱える若手へのメッセージ

 

ー 今、けっこう学生や若手で将来に漠然とした不安を抱えている子も多いので、先生からそういう子に向けてメッセージをいただけますか?

 

京極:ひとつ言えるのは、専門職が将来の不安を払拭しようと思ったら、やらなくてはいけないことは研究です。 研究で成果を示せるから、社会に価値を認めてもらえます。遠回りに感じるかもしれませんが、研究活動に対するエネルギーは、今の10倍ぐらいかけた方がいいと思います。

 

ー 作業療法士よりも理学療法士の方が熱を入れている人の方が多い気がします。

 

京極:確かにその通りですね。実際、論文数に関していっても、作業療法は理学療法に比べると少ないです。作業療法士の絶対数が少ないというのもありますが、自戒を込めて研究はもっとやる必要があると考えています。

 

専門職教育がうまくいくと何が起こるかっていうと、その専門職領域を深めることと、広げられることの2点に尽力し始めます。臨床の疑問を見つけたら、その疑問を1つ1つ研究で解いていくしかないワケですから必然的に、論文数が多くなります。

 

そう考えると、理学療法の方が専門職教育はうまくいっていると言えるかもしれません。また、作業療法は理学療法と同時期にできた資格ですが、作業療法はパラダイムシフトの影響で何をすればいいのかイマイチよく分からない教育が続いていたため、迷ってしまってなかなか研究にとりくめなかったということもあるのかもしれません。

 

ー 確かに、「作業療法とは何か」をちゃんと説明できなければ、臨床の疑問も見つかるわけないですね。

 

京極:そうです。だから、生き残りたければ、専門性を深めて研究しましょう。

 

これに尽きます。一般の職業と違って、研究という強力なツールがあるわけですから、使わない理由はないと思います。

 

あと最後にもう一点。これからの療法士に必要なのは、「自由にチャレンジする」というマインドだと思っています。誰かのあとをついていくとか、誰かの許可を得るとかを気にせず、自由にチャレンジすることです。先陣切って音頭を取ることができる人っていうのは、基本は勝手に動けるワケのわからないようなタイプなんです。

 

確かに、将来が不安な気持ちは分かります。実際、僕も将来が不安ですから。

 

それはそうですよ、正直なところ、未来なんてどうなるか分からないですからね。だからこそ、自分がいけると思ったら、周りに批判されてもいいと思うので、若い人は挑戦していったらいいんじゃないかなと思います。

 

僕もこれからもチャレンジを続けていきたいと思いますし、一緒に既存の価値観を再構築していきましょう。

 

 京極真先生のYouTubeチャンネルはこちら

▶︎ https://www.youtube.com/channel/UCWpvAxIhiF9jFugw2zC_0ng/join

 

【目次】

第一回:教授ユーチューバーが語る作業療法教育のこれから

第二回:「同じ作業療法を語っているはずなのに」 信念対立はなぜ生まれるか

第三回:低い認知度が引き起こす作業療法現場のジレンマ

 

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「低い認知度」が引き起こす現場のジレンマ【京極真】
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