介護報酬改定で襟を正す
2021年の4月に介護報酬の改定が行われます。今回の改定では、全体で0.7%のプラスの改定となります。しかしながら、リハビリテーション分野では、訪問看護ステーションからの理学療法士等の訪問看護は減算でありマイナス改定となる見込みです。
主な改定内容は以下になります。
・1日2回(40分)を超える理学療法士等の訪問は単位数の90%であったのに対し、改定案では単位数の50%となる
・利用開始月から12か月超の利用者に介護予防訪問看護を行った場合は、1回につき5単位の減算となる
要するに、要支援者に対し長時間、長期間の「理学療法士等による訪問看護」を是正するということになります。
要支援切りとも取れそうな改定内容ですが、別の捉え方をすれば要支援に対して長期間の訪問を行うだけの効果を示せなかった、本来訪問看護に求められている医療処置や重症度の高い在宅要介護者への訪問の役割が担えていなかった結果とも言えます。
しかしながら、自分たちが結果を残せなかったことを省みず、政治力が足りないから、看護協会や医師会の圧力が働いたと嘆き、他者を批判している状況は成長の機会を失います。
このような流れが来ることは、以前から予想されていたことでもあり、回復期リハビリテーション病棟での診療報酬などで前例があったことだと思います。
過去の例でいえば、回復期リハビリテーション病棟での療法士介入は出来高での報酬であるため、必要性の低い患者に対しても、マッサージや散歩をして上限回数まで単位を取得するようにしていた結果、FIM利得の基準が設けられました。
その後も、入院時のFIMを実際よりも低く記載するなど病院が現れるなど指摘され、診療報酬改定のたびにリハビリテーションの包括支払の話しが噂される状況となっています。
すなわち、適切な量を提供し、求められている結果を示さなければ是正されることであり、今回の介護報酬改定の流れは当然であると思います。回復期でFIM利得の話題が挙がっている状況で、何も指標を取らずに訪問リハビリの効果を示してこなかったことが要因のひとつと捉えています。
社会保障料や国の財政を嘆くだけではなく、自分たちの襟を正す必要がありそうです。
訪問リハをはじめとする介護分野で結果を示さなかった背景として、筆者が耳にしてきた発言は、「訪問は個別性が強いから、データは意味がない」、「生活期は身体機能やADLが下がる前提だから定期評価すると本人のモチベーションさがるのでやらない方が良い」といったものでした。
このようなことを根拠なしに決めつけてしまうのではなく、自分たちが行う訪問は患者にとって意味があるのか、地域や国に対してどれだけ有益なのかを少しずつ蓄積する必要があります。
弊社では、数年前からドナベディアンモデルを参考に事業所運営に導入しています。
ドナペディアンとは?
ドナベディアンは医療の質を評価するモデルであり、「構造(structure)」→「過程(process)」→「結果(outcome)」という3つの視点でとらえることを提唱しています。
・構造:職員の数、専門性、機器
・プロセス:看護内容、リハビリ内容、職員の行動
・アウトカム:入院割合、転倒回数、QOL、ADL
弊社での取り組み
構造に関しては、認定理学療法士や認定訪問療法士などの職員の専門性や多様性を向上されるべく、資格手当や研修に対する休暇や補助金の制度を導入し、スキルアップを支援しています。
過程に関しては、ラダーシステムや複数担当制を取り入れ、介入内容の適切性の担保を図っています。現在は、経験の浅い職員に対し、認定資格を要する職員が同行訪問を行うことや、目標設定に関する事例検討を行いさらなる質の向上を目指しています。
アウトカムに関しては、転倒による骨折や誤嚥性肺炎により入院した利用者やADL能力の低下により在宅生活が困難となった利用者の数と要因をリスト化し視覚化できるようにしています。
今後は利用者の目標達成率やQOLなどの評価の導入を検討しています。
20年後の若手療法士に、「国の施策で療法士増やしたけど、マッサージとか散歩ばっかりして効果示せなかったから、他の国と比べて療法士の地位低いらしいよ」と言われないよう、今できることからはじめましょう。
微力でありますが、「昔の療法士が在宅で結果を残してきたから、今の訪問リハがある」と将来思ってもらえるように、将来の要介護者・要支援者・療法士から「ありがとう」をいただけるように、日々の業務にあたっていきたいと思います。
Luxem訪問看護リハビリステーションでは、Ns/PT/OT/STを募集しています
川崎市多摩区/麻生区で2か所の訪問看護ステーションを運営しており、法人ではデイサービスを3店舗、居宅支援事業所も運営しています。
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