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装具外来・装具カンファレンス・装具開発。桜十字福岡病院での取り組み【遠藤正英】

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第369回のインタビューは、日本支援工学理学療法学会理事 遠藤正英先生。装具に関する現状の課題とそれに対する取り組み、また桜十字グループの教育プログラムについて伺いました。

装具は必要か?

 遠藤先生が装具に興味を持ったキッカケについて教えてください。

遠藤 養成校を卒業して、一番最初に勤めた病院が長尾病院というところで、そこには浅山滉先生といって装具で有名なリハ専門医がいらっしゃいました。

 

私自身は、装具をやりたくて長尾病院に就職したわけではなかったのですが、「この先生についていけばなんとかなる」と思って、しがみついて色々教えてもらったというのがキッカケになります。まぁ、でも浅山先生は、5年間ずっと私のことを「近藤くん」と勘違いして呼び続けていましたけどね。

 

当時は、装具に興味を持っている人の方が、頭がおかしい人だと思われていた時代ですよ(笑)

 

装具をセラピストが使うことに抵抗感がある人って今でもまだいるように思います。

遠藤 私は、装具は結果的に必要なものだけであって、別になくてもいいものだと思っています。セラピストが脳卒中の方と対峙したときに、まずどんな方でもできれば歩けるようになって帰ってほしいって思いますよね。

 

そうなると、まずやらないといけないことは起こすことになります。でも、そうなると私らには腕が2本しかないから、介助量の多い人を起こすにはなかなか大変だし、起こせたとしても運動量も確保するとなると自然とものに頼らざるを得ないと思うんです。

 

いまだに覚えているのが、今の病院に転職してきた当時、3人がかりで長下肢装具つけずに、5mくらい患者さんを歩かせて、「今日頑張りましたね!」って声かけていて。

 

頑張っていたのはリハビリスタッフ側の話で、運動量のことを考えると患者さんはもっと頑張らないといけないですよね。「装具が必要か?」と考えてしまうと、“いる、いらない論争”が出てきてしまうけれども、セラピストが運動メニューを考えた結果的に、装具が必要になるだと私は捉えています。

 

 義肢装具士ではなくセラピストが関わる意義はどういったところにあると思いますか?

遠藤 ものを設計してくれるのは義肢装具士さん、ものを使うのは患者さん。では、どういうものを作ればいいのかを考えたときには、訓練内容を考えて「こういうものを作ってほしい」とオーダーするのはセラピストですよね。

 

野球選手もこういうバッティングをするからこういうバットが欲しいとか、こだわりがあるわけじゃないですか?セラピストもそこにこだわりを持って綿密に打ち合わせしないといいものは作れないと思っています。

 

 具体的にはどういったオーダーになるのでしょうか?

遠藤 例えば、シューホーンブレースを履いて歩行練習をするにしても、イニシャルコンタクトの跳ね返りが得られるようにある程度の柔らかさがほしいという場面があったとします。

 

その時に義肢装具士と一緒にカンファレンスで、どの素材がベストなのか、それとも素材を変えずに厚さを薄くした方がいいのか話し合って決定します。

 

装具難民を救え

 「装具外来」というのも、桜十字福岡病院では実施していると伺いましたが、これはどういう目的で行っているのでしょうか?

遠藤 まず、「装具難民」というのが今すごく問題になっています。

 

入院中に装具を処方してもらっても、十分な説明や教育を受けないまま退院してしまって適切な使用がされていない方や身体機能や生活スタイルに変化があったとしても、調整せずに装具を使っている方、合わないからと装具を付けるのを辞めてしまった方など、生活期における装具の課題は山積みです。

 

そういった課題に対して、桜十字福岡病院では退院後1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月、それから半年ごとに装具外来というかたちでフォローアップするようにしています。在宅に帰られた患者さん本人も、歩きにくくなったなということは感じていて、必要に応じて再作成も提案したりしています。

 

 桜十字福岡病院では、装具の開発にも携わっているそうですね。

遠藤 はい。装具の開発は長尾病院にいたときから携わっていて、基本的に臨床にいる我々から発信してプロジェクトが動き出すことが多いです。

 

今は、電極が埋め込まれていて、ボタンを押すと電気が流れて関節が動くような装具を開発中です。それができるとセラピストの意図したタイミングで運動が誘発できるようになります。筋電センサーも設置して、フィードバックが得られることで、評価も同時にできるようなものを構想しています。

 

 そういったアイデアって、そう簡単に思いつくものでしょうか。

遠藤 私の場合は、長尾病院にいた頃、臨床しながらSEの仕事をしていました。その時に気づいたのが、意外と「こういう装具がほしい」という要望さえあれば作れないものはないんだなということです。

 

ただ、導入口であるセラピストやユーザー側が勝手に「こんなことはできないだろう」と思って諦めてしまうことが多い。私は、「なんでもできないことはない、できるかできないかはこっちが決めることじゃないからとりあえずなんでも言ってみよう。」と、常に考えています。

 

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遠藤正英先生プロフィール

医療法人福岡桜十字 桜十字福岡病院 桜十字グループ 福岡事業本部 リハビリテーション統括

福岡県理学療法士会 理事

福岡県理学療法士連盟 事務局長

日本支援工学理学療法学会 理事

日本義肢装具学会 広報委員長

装具外来・装具カンファレンス・装具開発。桜十字福岡病院での取り組み【遠藤正英】

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