週の真ん中水曜日の江原です。リハビリには身体要因が大きく影響しますが、心理的な障壁もその進行に大きく関与します。中でも不平不満を表出する患者がいます。医療職は敬遠したくなりますが、その背景を理解し振舞えるとよいのではないでしょうか?
不平不満を口にしたくなる時
以前も感情についてお話しましたが、感情とは急速に起こり短い時間で終わるものと定義されていて、長期的に続くものは気分と呼ばれています。感情は思考や意思決定を行う機能を司っており、認知や行動についても影響を及ぼします。
不平不満を言う患者はもちろん医療者を困らせたいとか考えているわけではなく、その背景に真の意味があると考えます。人は何か困難に直面した時に自分を守ろうとする防衛システムが働きます。
これを防衛機制(※1)と言い、人間にある本能的欲動を起こさないよう、意識の上に感情が登ってこないように抵抗するために現れる手段のことであります。身体機能や動作能力を向上するためにリハビリを行いステップを踏む過程で、身体的・精神的苦痛が伴うことがあります。慢性疼痛の臨床においても、筋力や柔軟性の改善、持久力の改善において大変だと感じない人は少ないでしょう(むしろ抵抗だらけかもしれません)。
医療者が説明する必要性や進行中に求められる患者への要求が増してくると、患者は言動や行動において何らかの反応を示します。こういう時にはっきりと断る理由を言えたり、弱音を吐いたりすることができればよいのですが、『やりたくない』という正直な気持ちに反した発言に繋がります。
この時に対応する医療者へのリハビリをやりたくないという気持ちや、一種の甘えのような振る舞いがだんだん通用しなくなってくると、より精神的に未熟な方法に戻ってしまうと言われています。このようにリハビリテーションにおいて、未熟な方法=不平不満を言ってしまう行動は患者自身の問題や、患者を取り巻く環境によって徐々に増えてきます。
※1 S.フロイトやA.フロイトが提唱した概念で、以降の精神分析学派により発展した。抑圧、反動形成などがある。