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復帰はした。でもパフォーマンスが戻らない。【東京医科歯科大学|大路駿介】

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第370回のインタビューは東京医科歯科大学病院 基盤診療部門スポーツ医学診療センターで勤務しながら前十字靭帯(ACL)損傷術前後リハの研究を行なう大路駿介先生にお話を伺いました。

ー 理学療法士を目指したきっかけを教えてください。

大路先生ベタかもしれませんが、野球をやっていて肘を怪我しました。「その肘をかばって肩を痛める」という典型的な状態を経験しています。投げられない状態が続いたことで、小学生から高校生まで非常に長くリハビリでお世話になりました。

 

私が学生の頃、根拠に基づいたリハビリが行われていたとは言えない状況だったと思います。筋力が弱ければトレーニング、硬ければほぐして云々。ある意味でシンプルですが、原因にフォーカスされていません。

 

野球を例に取るれば姿勢・柔軟性の低下によって肘に負担が掛かるという事実は周知の事実です。この問題に対しての治療方法は、当時ほとんど確立されていなかったように思います。実体験が伴って、この現状を変えたいという思いから理学療法士を目指しました。

 

ー 理学療法士になってからの大きな機転は何ですか?

大路先生やはり順天堂大学の相澤純也先生に出会えたことです。東京医科歯科大学医学部附属病院スポーツ医学診療センターアスレティックリハビリテーション前部門長(現順天堂大学 保健医療学部理学療法学科 先任准教授)です。相澤先生に出会う前の私は、スポーツリハに携わりたいと整形外科クリニックに勤めていましたが、対象となる方が少なくチャンスも限られていました。そんな時に、相澤先生に出会って現在の医科歯科の仕事を紹介してくださいました。

 

それから臨床プラス研究、そして教育活動という形で今につながっています。いわゆる根拠に基づいたリハビリの重要性というものを、相澤先生に一から教えていただきました。そこが大きな転機ですね。

 

ー 話が変わりまして、今回講義していただいた3つの講義について、それぞれのポイントを教えてください。

大路先生再腱術後から3ヶ月は日常生活に戻る、日常生活動作が自立する。これが一番のポイントになります。術前は普通に歩ける状態を想定しています。「今、膝問題ないんですけど」という程に膝の機能を元に戻す。これが術前のポイントです。

 

復帰時期のポイントは如何にして復帰の水準を満たすのか、という点です。実は、復帰時期の基準を設けている施設は少ないです。基準がない施設もありますが、基準を設けていても施設ごとにバラバラで、ベーシックな基準を設ける必要があります。海外であれば浸透していますが、国内ではまだ浸透していません。全体の共通認識をもって評価に当たる基準が必要です。

 

また日本の保険制度では、期限が設けられているために患者さんが復帰しているのか知らない(知れない)療法士も多くいます。制度の問題でリハの終了を余儀なくされているのが原因の一つです。その結果、「復帰している」という思い込みがあります。我々のデータでは、6・7割が復帰していて残りの2・3割で復帰しているものの、“パフォーマンスは元に戻っていない”という事がわかっています。

 

稀に「復帰できていない」あるいは「種目を変えないといけない」「負荷がない競技に変えました」という患者さんがいます。このような情報はきちんとした形でデータに残しておく事が必要です。

 

ー 今回の講義でもありましたが運動恐怖感と再発に脳は関係していますか?

大路先生そうですね。脳がどれぐらいリンクするかはわからないのですが、やはり恐怖感というのは脳が作り出しているもので、これは少し難しくて、どちらのパターンも臨床上いらっしゃいます。

 

膝が良くないのに、怖さがなくガンガン行っちゃって怪我をしてしまうという方もいれば、膝の機能は十分なのに、やはり再発のときのトラウマじゃないですけれども、そういった事がフラッシュバックに近い状態で、前だったら一歩踏み込めた動きが、瞬時にぐっと制御してしまうといったこともあります。

 

まだその関係性というのは、実は研究も一つしかないので。恐怖感が高いからイコール再発というのは、実はまだ少し解釈が難しいです。先ほどお話ししたように、おそらく運動恐怖が増大してしまうのではないかと思います。痛みが強かったり、筋力やホップなどが不十分だったりすると、恐怖感が増すのが普通です。

 

恐怖が再発というより、恐怖が出るぐらい膝のコンディションが悪く、膝のコンディションが悪い中で復帰していくので再発してしまうのではないかと。おそらく運動が間にあるというか、背後に潜んでいるというか。そのような関係性だと思います。

大路先生のACL講義を視聴しよう

◎ACL再建術前後に評価・改善すべき項目とは
◎実際の臨床データを豊富に提示
◎時期ごとに必要な知識がわかる

前十字靭帯の基礎(機能・解剖、損傷リスク、再建術など)について網羅的に理解することができます。また、再建術後のリハビリテーションについて、臨床で遭遇しやすい病態に対する治療やプログラムの流れについても学ぶことができます。実際の臨床データも含めて解説しているため、わかりやすく、明日からでも使える知識を得ることができます。

▶︎ACL再建術前後のリハビリテーション

復帰はした。でもパフォーマンスが戻らない。【東京医科歯科大学|大路駿介】

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