【研究者】
医学部生体構造機能学講座 解剖学・人類学分野
客員研究員 吉塚久記 / 教授 倉岡晃夫
【研究成果の概要】
足関節外側靭帯群の一つである踵腓靭帯(CFL)と足部の偶発的な反転を抑制する長・短腓骨筋の腱は位置的に極めて近接しており、相互作用の可能性を示唆するCFL表面の微細な変化も報告されています。今回、我々は解剖体18肢の足部標本を治具に固定した状態で座標系を定義し、CFLの緊張に伴って生じる長・短腓骨筋腱の位置座標の変化について、非接触型3次元デジタイザを用いた精密計測を実施しました。その結果、緊張したCFLによって長・短腓骨筋腱が外側方向へ有意にリフトアップされることが明らかとなり(下図参照)、CFLが長・短腓骨筋の効率的な収縮を補助する“テンショナー”として機能することが強く示唆されました。
不整地歩行時に生じる腓骨筋および腱(桃色)と踵腓靱帯(水色)の挙動変化
【研究成果の公表媒体】
Scientific Reports(available online 05 October 2022)
DOI: https://doi.org/10.1038/s41598-022-21115-5
【今後の展開】
関節の安定化や関節運動の制御を担う靱帯と、筋肉に発生した張力を骨に伝えることで関節運動を担う腱は機能的に独立したものと考えられてきました。本研究はその常識を覆す成果であり、捻挫の後遺症として問題となっている慢性足関節不安定症の病態理解や新規治療法の開発、リハビリテーション医療における腓骨筋トレーニングの最適化、あるいはスポーツ分野のエクササイズ理論の発展といった幅広い領域に貢献することが期待されます。
詳細▶︎https://www.saga-u.ac.jp/koho/press/2022100727789
注)プレスリリースで紹介している論文の多くは、単純論文による最新の実験や分析等の成果報告に過ぎました。 、さらに研究や実験を進める必要があります。最新の研究成果の利用に際しては、専門家の指導を受けるなど十分配慮するようにしてください。