腰部疾患保存療法における理学療法評価▶︎http://ptix.at/sy49X5
今回は腰痛の評価について解説します。整形外科に関わっているセラピストはもちろんの事、その他さまざまな環境でも「腰が痛い」という訴えは非常に多く耳にすると思います。腰痛の原因は、脊柱管狭窄症やヘルニアといった特異的腰痛よりも原因がはっきりしない非特異的腰痛が多いとも言われており、「この人はなんで腰が痛いんだろう・・・」と評価に困る事も多いと思います。
そこで今回は、腰痛の方を担当した際に「まずはこれをやるのがおススメ!」という評価方法を紹介します。この方法で評価すると、なぜ痛いのか、治療はどうすれば良いかが明白になりますので、是非最後まで読んでいただければと思います。特に腰痛の患者さんを担当する事に慣れていない新人セラピストさんや整形外科以外の分野でご活躍のセラピストの皆さんには非常に役に立つと思います。それでは参りましょう!
①屈曲で痛いか?伸展で痛いか?を見る
1つ目の評価は、屈曲で痛いか?伸展で痛いか?を見る事です。これを見る事で、ある程度病態を絞ることが出来ます。
屈曲で痛い場合
屈曲で痛がる病態としては
・腰椎椎間板性疼痛(ヘルニアを含む)
・筋コンパートメント性疼痛
・腰椎圧迫骨折
などが考えられます。何故屈曲で痛い場合、これらの病態が考えられるかというと椎間板や椎体は腰椎屈曲によって圧迫ストレスがかかるからです。こちらのグラフをご覧ください。
こちらは、静止立位時の椎間板の内圧を100%とした場合、各姿勢の椎間板内圧はどう変化するかを表してます。ご覧の通り静止立位と比べて、
・静止座位
・座位での体幹屈曲
・立位での体幹屈曲
・物を持った姿勢
で内圧が向上しているのが分かります。これらの姿勢に共通する特徴として、体幹の屈曲があります。では、なぜ体幹が屈曲すると椎間板の内圧が向上するのでしょうか?下の図を見てください。
体幹が屈曲位になると脊柱起立筋の緊張が増加します。それによって脊柱起立筋が収縮する力によって椎間板を圧迫する力が増加します。だから、体幹の屈曲によって椎間板の内圧が高まり椎間板性の疼痛が生じると考えられるのです。椎間板同様に腰椎の椎体も同様に体幹の屈曲により圧縮力が高まると考えられます。
腰椎のコンパートメント障害に関しては、体幹が屈曲位になると腰背筋膜の緊張が高まり、それによって脊柱起立筋を圧迫し症状が出現すると考えられます。以上の事から、体幹の屈曲で痛い場合は、腰椎椎間板性疼痛、腰椎圧迫骨折、腰椎コンパートメント障害が病態として考えることが出来ます。
伸展で痛い場合
伸展で痛い場合は、
・腰椎椎間関節性疼痛
・脊柱管狭窄症
・筋の収縮時痛
等が考えられます。何故これらの病態が考えられるかを説明します。下の図を見てください。
左の図は腰椎伸展位での椎間関節、右は腰椎屈曲位での椎間関節を表しています。ご覧の通り腰椎伸展位の方が椎間関節の間隔が狭くなり、負担が増加します。また、脊柱管や椎間孔も腰椎伸展位によって狭まるため脊柱管狭窄症の症状も腰椎伸展によって増悪すると言われています。
よって、腰椎伸展によって症状が出現する際は、腰椎椎間関節や脊柱管狭窄症などが考えられます。
実際の臨床での評価方法
このように、屈曲で痛いか?伸展で痛いか?がわかると数ある病態の中から絞ることが出来ます。つまり、「屈曲で痛いけど伸展では痛くない」という場合、伸展で疼痛が生じる椎間関節性疼痛や脊柱管狭窄症由来の疼痛は、原因から除外することが出来き、逆に「屈曲では痛くないけど伸展で痛い」という場合は、屈曲で疼痛が生じる腰椎椎間板障害や筋コンパートメント、腰椎圧迫骨折などは除外出来ます。
臨床場面では「屈曲でも伸展でも痛い」「どっちも痛くない」というケースも少なくありません。その際には改めて、筋肉のスパズムや仙腸関節障害、心理社会的腰痛など幅広い視点で評価していく必要がありますが、まず初めに評価するのがおススメですよ!
屈曲で痛いか?伸展で痛いか?を見る利点がもう一つあります。それは、「そのまま治療につなげやすい」という事です。例えば屈曲で痛いという場合、極端に言えば腰椎の屈曲を止めてしまえば痛みは出ません。その為、たとえ細かい病態が特定できなかったとしても「腰椎の屈曲を抑える」という治療方針を立てることが出来ます。よって治療としては、
・腰椎の伸展可動域を向上させる
・腰椎伸展筋である多裂筋を鍛える
・骨盤前傾を促すために股関節屈曲可動域を向上させる
・腰椎を屈曲しないように前屈する練習をする
などが考えられます。伸展で痛い場合は逆に、
・腰椎屈曲可動域を向上させる
・腰椎屈曲筋である腹横筋や腹斜筋を鍛える
・骨盤後傾を促すために股関節伸展可動域を向上させる
・腰椎が伸展しないように体幹伸展運動を練習する
などが考えられます。
②片側が痛いか?全体が痛いか?
もうひとつ確認していただきたいのが、「片側が痛いか?両側が痛いか?」です。これを確認することで、更に病態を絞ることが出来ます。具体的にいうと、
腰椎椎間板性や圧迫骨折の痛み=両側が痛い
椎間関節性の痛み=片側が痛い
と考えられるので、
両側が痛い⇒椎間関節性は考えにくい
片側が痛い⇒椎間板や圧迫骨折性は考えにくい
となります。
なぜこう考えることが出来るかというと支配神経に特徴があるからです。下の図を見てください。
図の左側にある椎間板や椎体は、脊髄洞神経によって支配されています。1つの椎間板を左右の神経が支配しているので、椎間板の痛みは左右の脊髄洞神経が感知します。よって、椎間板や椎体の痛みは「片方が痛い」とはならず、「真ん中」や「全体」となると考えられます。対して図の右側にある椎間関節は、脊髄神経後枝内側枝が左右別々に支配しています。よって、左椎間関節の痛みは左脊髄神経後枝内側枝が感知する為、「左側が痛い」という訴えになります。
ちなみに脊柱起立筋は、脊髄神経後枝外側枝が左右別々に支配しています。しかし臨床経験上、片方だけ痛いという場合と両方痛いという場合の2つのパターンがあるので、この方法では判別は難しいかなと思います。
こちらの片側が痛いか?両側が痛いか?の使い方としては、「屈曲で痛い」という症状があった場合に、
・椎間板や椎体の痛み
・筋肉の痛み
が原因として考えられますが、「右側だけ痛い」という症状であった場合、椎間板性の疼痛は可能性として低くなるといった具合で組み合わせて評価してもらえると効果的です。2つの評価を使用したアルゴリズムを下に示します。
これに加えて触診やストレステストなどを組み合わせていくとより効果的ですが、まずは上記の2つの評価をやってみてください!以上参考になれば嬉しいです!最後までご覧いただきありがとうございました!
宮嶋佑先生の腰部疾患セミナー
その腰痛はヘルニア?それとも狭窄症?
私はこれまで12年間、整形外科理学療法に従事してきました。その中で腰痛や下肢の痺れを訴える患者さんが多く、数多くの患者さんを診てきました。私が新人の頃、特に難しいと感じたのは下肢のしびれを伴う腰痛でした。
その際にたくさんの挫折を経験しました。
○椎間板ヘルニアの痛みが激しい患者さんに対して何も治療できなかったこと
○患者さんが何度来院しても、「何も変わらない」と言われてしまうこと
○痺れの原因が不明で、とりあえずコアトレーニングを指導するが何も変わらなかったこと
これらの悔しい経験を通じて、下肢のしびれと腰痛への対処法を勉強しました。
同様の悩みを抱える方も多いかと思います。そこで、今回は「腰部疾患保存療法における理学療法」と題して、腰部疾患の鑑別に焦点を当てたセミナーを開催いたします。このセミナーにご参加いただくことで、以下のようなスキルを習得できると考えています
①腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症の病態を深く理解することができる
②下肢の痺れを訴える患者さんの状態を適切に評価し、原因を特定できる能力を身につけることができる
③痛みや痺れの強い患者さんに対しても、冷静かつ効果的なアプローチができるようになる
皆様が分かりやすく学べるように心がけます。ぜひご参加いただき、一緒に成長していきましょう!
*1週間限定のアーカイブ配信あり。
プログラム
(1)神経症状と痛みの鑑別
・患者さんの訴える痺れは本当に神経症状なのか?
・神経症状の評価方法
・神経由来でない「痺れ」とは何なのか?
(2)腰椎椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄症の鑑別
・脊柱管内の圧迫と神経根症の違い
・腰椎椎間板ヘルニアの評価・治療法
・脊柱管狭窄症の評価・治療法
・知っていないとまずいレッドフラッグスについて
(3)臀部での坐骨神経絞扼について
・梨状筋症候群はもう古い!Deep gluteal syndromとは?
・坐骨神経絞扼の評価・治療
・腰椎由来と臀部由来を鑑別する方法
講師:
Confidence代表
宮嶋 佑(理学療法士)
概要
【日時】 9月24日(日) AM10:00~12:00
【参加費】3,300円
*POST有料会員(プレミアム会員登録時のメールアドレスでお申し込みください)は無料で受講可能です。
→有料会員への登録はこちらをご確認ください。
【定員】50名
【参加方法】ZOOM(オンライン会議室)にて行います。お申し込みの方へ、後日専用の視聴ページをご案内致します。
お申し込み▶︎http://ptix.at/sy49X5