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肥満者に対するウェブベースの生活習慣改善指導による減量効果を分析

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肥満は、2 型糖尿病や⼼⾎管疾患など、⾮感染性疾患の主要なリスク要因であり、世界的な公衆衛⽣課題の⼀つです。肥満を解消するためのさまざまな対策が検討される中、近年、ウェブベースで提供される⽣活習慣改善指導による減量介⼊に注⽬が集まっています。本研究では、このようなウェブベース介⼊に関するこれまでの研究論⽂を、システマティックレビューとメタ解析という⼿法を⽤いて分析し、肥満者の体重変化に対するウェブベース介⼊の有効性を検証するとともに、介⼊の効果的な構成要素について検討しました。

⼆つの論⽂データベースを検索し、最終的に採⽤された 97 件を質的に分析した結果、ソーシャルサポート、⾏動変容に対するセルフモニタリング、アウトカム(体重)に対するセルフモニタリング、⾏動⽬標設定、情報提供、アウトカムの⽬標設定が、ウェブベース介⼊の有効な構成要素として抽出されました。また、そのうち 51 件の論⽂について量的に分析したところ、対照群と⽐較して、ウェブベース介⼊の有効性が認められました。介⼊の構成要素別の効果については、個別化された情報提供と専⾨家の助⾔に効果がある⼀⽅で、オンラインチャットには効果が⾒られませんでした。

本研究により、ウェブベース介⼊に減量効果があることが分かり、⾮対⾯で利⽤可能な、費⽤対効果の⾼い減量介⼊⼿法としてのエビデンスが得られました。今後、有効な構成要素を組み合わせることで、より効果の⾼い減量プログラムの開発につながると期待されます。

研究代表者

筑波⼤学体育系

中⽥ 由夫 准教授

⼥⼦栄養⼤学栄養学部

津下 ⼀代 特任教授

⼗⽂字学園⼥⼦⼤学⼈間⽣活学部

若葉 京良 講師

研究の背景

肥満は、2 型糖尿病、⼼⾎管疾患など、⾮感染性疾患の主要なリスク要因であり、世界的な公衆衛⽣課題の⼀つです。肥満を解消するためのさまざまな対策が検討される中、近年、ウェブベースで提供される⽣活習慣改善指導による減量介⼊(ウェブベース介⼊)に注⽬が集まっています。ウェブベース介⼊の減量効果についての論⽂報告数は増加していますが、介⼊の構成要素は多岐にわたっており、どれが効果的なのかは明らかになっていません。そこで本研究では、これまでに報告された論⽂を、システマティックレビュー注 1)とメタ解析注 2)という⼿法を⽤いて分析し、最新の研究知⾒をまとめるとともに、肥満者の体重変化に対するウェブベース介⼊の有効性を検証するとともに、効果的な構成要素について検討しました。

研究内容と成果

本研究における論⽂の選択プロセスのフローチャートを図1に⽰しました。最終の論⽂検索⽇は 2020年 9 ⽉ 30 ⽇で、所定の検索⽤語を使⽤して、⼆つの論⽂検索データベース(PubMed・医中誌)から 1465件の論⽂を抽出しました。⼿作業により検索した 1 件を加えた合計 1466 件の論⽂を、⼀次スクリーニングの対象としました。タイトルと抄録を参照する⼀次スクリーニングの結果、「ランダム化⽐較試験ではない」などの除外条件に該当した 1315 件を除外し、151 件の論⽂を⼆次スクリーニングの対象としました。⼆次スクリーニングでは、151 件の論⽂を全⽂⼊⼿し、精読した結果、「体重変化が報告されていない」、「ウェブベース介⼊ではない」などの除外条件に、54 件の論⽂が該当しました。最終的に 97 件の論⽂が採⽤され、それぞれの介⼊で採⽤されている⾏動変容技法を把握するために質的分析を実施しました。また、そのうち、定量的なデータが抽出できた 51 件を量的分析の対象とし、ウェブベース介⼊の有効性を検証するとともに、効果的な構成要素について検討しました。

質的分析の結果、ウェブベース介⼊で最も頻繁に使⽤された構成要素は、⾏動変容のセルフモニタリングの 76 件、次いでソーシャルサポートの 63 件でした。また、それぞれの構成要素のうち、有意な減量効果を⽰した論⽂数が多かったのは、ソーシャルサポート(24 件)、⾏動変容のセルフモニタリング(24件)、アウトカム(体重)に対するセルフモニタリング(21 件)、⾏動⽬標設定(17 件)、情報提供(16件)、アウトカムの⽬標設定(13 件)などでした(図 2)。

量的分析では、対象となる 51 件の論⽂のうち、ウェブベース介⼊の効果をオフラインの対照群と⽐較した 44 件について分析した結果(図 3)、ウェブベース介⼊がオフライン介⼊よりも体重減少に効果的であることが⽰されました(SMD 注 3) -0.57 [-0.75, -0.40])。また、ウェブベース介⼊の構成要素別の効果を検討した結果、対象者の基本情報や⽬標達成状況に基づく個別化された情報提供(SMD -0.39 [-0.73, -0.05])と専⾨家の助⾔(SMD -0.42 [-0.75, -0.08])の有効性が認められました。⼀⽅で、オンラインチャットには有効性は⾒られませんでした(SMD 0.18 [-0.09, 0.45])。

今後の展開

本研究により、ウェブベース介⼊の減量効果が認められ、⾮対⾯で利⽤可能な、費⽤対効果の⾼い減量介⼊⼿法としてのエビデンスが提供されました。今後、有効な構成要素を組み合わせることで、より効果の⾼い減量プログラムの開発につながると期待されます。

参考図

 

図 1 本研究に⽤いた論⽂選択のフローチャート

 

図 2 各介⼊要素を含む論⽂の数(質的分析)

図 3 ウェブベース介⼊の減量効果(量的分析)

⽤語解説

注1) システマティックレビュー

過去に独⽴して⾏われた複数の研究のデータを収集・選択・評価・統合する研究⼿法。

注2) メタ解析

システマティックレビューによって得られた複数の研究のデータを、統計学的⽅法を⽤いて量的に統合する解析⼿法。

注3) SMD

Standardized mean difference(標準化平均差)。平均差(ベースラインから介⼊終了までの変化量または介⼊終了時の値の差)を当該研究における対照群の標準偏差で割ることによって、平均差を標準化した値。

研究資⾦

本研究は、⽇本医療研究開発機構(AMED)循環器疾患・糖尿病等⽣活習慣病対策実⽤化研究事業「壮年期就労者を対象とした⽣活習慣病予防のための動機付け⽀援の技術開発に関する研究」の⽀援を受けて実施されました。

(参考:AMED2021 年度 4 事業合同成果報告 https://www.amed.go.jp/content/000099402.pdf

掲載論⽂

【題 名】 Effectiveness and Components of Web-Based Interventions on Weight Changes in Adults Who Were Overweight and Obese: A Systematic Review with Meta-Analyses

(過体重および肥満成⼈を対象としたウェブベース介⼊の体重変化に対する有効性および有効な構成要素:システマティックレビューとメタ解析)

【著者名】 Yutong Shi, Kyohsuke Wakaba, Kosuke Kiyohara, Fumi Hayashi, Kazuyo Tsushita,Yoshio Nakata

【掲載誌】 Nutrients

【掲載⽇】 2022 年 12 ⽉ 30 ⽇

【DOI】 10.3390/nu15010179

詳細▶︎https://www.tsukuba.ac.jp/journal/medicine-health/20230118140000.html

注)プレスリリースで紹介している論文の多くは、単純論文による最新の実験や分析等の成果報告に過ぎました。 、さらに研究や実験を進める必要があります。 、専門家の指導を受けるなど十分に配慮するようにしてください。

肥満者に対するウェブベースの生活習慣改善指導による減量効果を分析

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