江原です。本日も痛みの認知情動面のひとつ、破局的思考について書きます。痛みの勉強をし始めた15年前くらいに、学会の講演でこんなことを聞いたのを覚えています。
『大学生の歯の痛みが、PCSの平均で18なので18を基準に考えています』
これは破局的思考の質問紙であるPCSにはまだカットオフが定まってないため、有識者の先生が過去の研究の成果を比較し検討するとよいのではないかというアドバイスでした。(当時本当にカットオフがなかったかどうかは不明です)
破局的思考の学び直しの過程で、久しぶりに思い出したこの視点から破局的思考を紐解いていきたいと思います。
歯科治療と恐怖感
破局的思考研究の初期には、歯科治療を受ける患者を対象として認知情動面の研究が行われていたようです。歯医者さんに対してどのようなイメージを持つでしょうか?歯の健康は重要だと知っていても、好きというよりは嫌いという方は何となく多そうだなと思います。虫歯は痛いし治療にも痛みを伴いますし、待合室で待っている時に聞こえる治療器具の音を聞いていても嫌だという方もいると思います。痛みに関わる恐怖に近いですね。
慢性疼痛に関連する恐怖といえば、運動療法やADLに支障が生じて痛みの維持増強にも関連してしまう「運動恐怖」があります。調べてみると、どうやら現在では「歯科恐怖症」という概念があるようです。先ほど挙げた歯科に対するネガティヴなイメージから、歯が痛くても歯科に通院することができない歯科恐怖症患者がいます。
歯科治療恐怖症
歯科治療に対する恐怖感が非常に強く、タービン音で体が硬直する、歯科用ユニットに座ることができない、強度の場合は歯科医院に足を踏み入れることができないなど異常な行動を示す状態を指し、歯科心身症の範疇に入る病態である。また、恐怖が昂じて歯科器具が口腔内に触れたり、入れようとしたとたんに嘔気や嘔吐のような動作を示し、異常絞扼反射と診断される症例もある。従って、歯科疾患があっても十分な治療を受けることができず、応急処置しか受けられず症状が悪化してから来院するケースが多くなるため対応に難渋する1)。
歯科治療恐怖症の原因としては、