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地域在住高齢者においてフレイルとうつ症状の併存により死亡リスクが上昇 フレイルとうつ症状が併存した集団では、どちらもない集団に比べて、死亡リスクが約 4 倍

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医療経済研究機構(東京都港区、所長:遠藤久夫)は、当機構研究部副部長の浜田将太、政策推進部佐々木裕伊らが、東京大学高齢社会総合研究機構(東京都文京区、機構長:飯島勝矢)と共同で行った、フレイル注1とうつ症状の併存と死亡リスクとの関連に関する研究成果を「Archives ofGerontology and Geriatrics」にて発表しましたので、その概要をお知らせいたします。

65歳以上の地域在住高齢者を対象とした柏スタディ注2のデータを用いて、2012年のベースライン調査におけるフレイル状態とうつ症状の有無によって解析対象者1,920人を分類し、その後の死亡リスクを比較しました。その結果、フレイルとうつ症状のいずれもない集団に比べて、うつ症状の併存がないフレイルの集団で約2.5倍、うつ症状が併存したフレイルの集団で約4.3倍、死亡リスクが高いことがわかりました。一方で、フレイルなしおよびプレフレイルの集団では、うつ症状の有無にかかわらず、死亡リスクとの関連はみられませんでした。

本研究により、ハイリスク集団であるうつ症状を併存したフレイルの集団を特定することは重要であると考えられ、健康診断や日常診療にフレイルやうつ症状のスクリーニングを取り入れる必要性があることが示唆されました。

背景と目的

フレイルは公衆衛生上の重要課題のひとつであり、医療・介護費用の増大につながると予測されています。フレイルに関する研究の多くは、身体的な疾患や機能に焦点を当てたものが多く、フレイルとメンタルヘルスとの関係は十分には明らかになっていませんでした。本研究では、フレイルとうつ症状が併存することによって、死亡リスクにどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることを目的として検討を行いました。

主な成果

柏スタディのベースライン調査(2012 年)に参加した 65 歳以上の高齢者のうち、1,920 人を解析対象としました。フレイルの評価は Fried の表現型モデルに基づいて行い、該当なしをフレイルなし、1~2 つ該当をプレフレイル、3 つ以上該当をフレイルと判定しました。うつ症状の評価は GDS-15 を用いて、6 点以上でうつ症状ありと判定しました。フレイルの重症度が上昇するにつれ、うつ症状の併存割合は高い傾向がありました。

平均約 4.8 年間の追跡期間中に、91 人(4.7%)の死亡が確認されました。Cox 比例ハザードモデルを用いた生存時間解析の結果、フレイルとうつ症状のいずれもない集団に比べて、フレイルなしおよびプレフレイルの人では、うつ症状の有無にかかわらず、死亡リスクとの関連はみられませんでした。一方で、うつ症状の併存がないフレイルの集団では調整後ハザード比が 2.47(95%信頼区間:1.16~5.25)、うつ症状が併存したフレイルの集団では 4.34(95%信頼区間、1.95~9.65)と、フレイル高齢者では死亡リスクが高いことが示されました。

研究の意義と今後の展開

2020 年度から、全国の自治体で「後期高齢者の質問票」による高齢者の健康状態を把握・評価することが義務付けられ、高齢者に対するフレイルの早期発見・早期治療による予防・悪化防止が期待されています。本研究により、ハイリスク集団であるうつ症状を併存したフレイルの集団を特定することは重要であると考えられ、健康診断や日常診療にフレイルだけではなく、うつ症状のスクリーニングも取り入れる必要性があることが示唆されました。また、今後の課題として、本研究では、フレイルとうつ症状の併存による統計的に有意な交互作用はみられず、双方がどのように関係しているかは、より大規模で長期間の追跡を伴う研究等でさらに検証する必要があります。

用語解説

注 1:

高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し、生活機能障害、要介護状態、死亡等の転帰に陥りやすい状態で、身体的問題のみならず、精神・心理的問題、社会的問題を含む概念。

注 2:

東京大学高齢社会総合研究機構が、フレイル・サルコペニアに対する早期介入ポイントを多面的に探索し、簡易評価法を開発すること等を目的として、千葉県柏市の地域在住高齢者約 2,000 人を対象として 2012 年より実施している前向きコホート研究。

 

書誌情報

著者と所属

浜田将太 1,2,3*、佐々木裕伊 1,4、孫輔卿 5,6、田中友規 5、Weida Lyu5、土屋瑠見子 1、北村智美 1、Alex Dregan7、Matthew Hotopf7、岩上将夫 2、飯島勝矢 5,6(* 連絡責任著者)

1. 一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 研究部

2. 筑波大学医学医療系 ヘルスサービスリサーチ分野

3. 東京大学大学院医学系研究科 在宅医療学講座

4. 一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 政策推進部

5. 東京大学 高齢社会総合研究機構

6. 東京大学 未来ビジョン研究センター

7. Department of Psychological Medicine, Institute of Psychiatry, Psychological andNeurosciences, King's College London

タイトル:Association of coexistence of frailty and depressive symptoms with mortality incommunity-dwelling older adults: Kashiwa Cohort Study

雑誌名:Archives of Gerontology and Geriatrics

DOI 番号:10.1016/j.archger.2023.105322

掲載日:2023 年 12 月 21 日オンライン掲載(オープンアクセス)

詳細▶︎https://www.ihep.jp/

注)プレスリリースで紹介している論文の多くは、単純論文による最新の実験や分析等の成果報告に過ぎました。 さらに研究や実験を進める必要があります。十分に配慮するようにしてください。

地域在住高齢者においてフレイルとうつ症状の併存により死亡リスクが上昇 フレイルとうつ症状が併存した集団では、どちらもない集団に比べて、死亡リスクが約 4 倍

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