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膝関節前面痛の診かた、考えかた、治しかた ~スクワット動作と局所に着目して~

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はじめに

膝関節前面痛は、多くの臨床場面で頻繁に見られる症状の一つです。特にスクワット動作は、日常的に多くの患者が行うため、痛みの原因やメカニズムを探る上で重要な手段です。本記事では、膝関節前面痛の主な原因や関節モーメントの役割に焦点を当て、スクワット動作を用いた評価およびアプローチについて詳しく解説します。

膝関節前面痛の主な疾患とその背景

膝関節前面痛の主な疾患には、オスグッド病、ジャンパー膝、シンディング・ラーセン・ヨハンソン病、膝蓋大腿関節障害、膝蓋下脂肪体炎、腸脛靭帯炎、鵞足炎などがあります。これらの疾患は、主にオーバーユース症候群として発症し、関節モーメントやメカニカルストレスの増加が深く関与しています。これらのストレスが膝関節にどのように負担を与えるのかを理解することが、治療においても重要です。

関節モーメントと膝関節前面痛

スクワット動作中に発生する膝関節の前面痛は、関節モーメントが高まることで引き起こされることが多いです。関節モーメントとは、関節にかかる回転力のことで、内部モーメントと外部モーメントに分けられます。内部モーメントは筋肉の収縮によって生じ、外部モーメントは床反力など外部の力によって生じます。

スクワット動作では、外部モーメントが特に強く働きます。ここで重要となるのが、「床反力ベクトル」と「モーメントアーム」です。床反力ベクトルは、体重や重心に応じて変動し、モーメントアーム(関節中心から床反力ベクトルまでの距離)が長くなるほど、膝関節への負担が増加します。結果として、膝蓋大腿関節や膝周囲組織に過剰なストレスがかかり、膝前面の痛みを引き起こしやすくなります。

床反力ベクトルとモーメントアームの役割

床反力ベクトルは、支持基底面内の床反力作用点(COP)から発生し、重心(center of gravity, COG)に向かって伸びます。このベクトルと関節中心の距離、つまりモーメントアームが長くなると、関節にかかる力学的負担が増し、膝前面痛を誘発しやすくなります。

例えば、スクワット動作中にCOPが前方へ移動すると、膝関節にかかるモーメントが増大し、メカニカルストレスが膝蓋大腿関節や他の膝周囲組織に加わります。これが痛みの主要な原因となるため、臨床での評価が重要です。

膝関節前面痛における評価法:スクワット動作と関節モーメント

スクワット動作を用いた評価は、臨床現場で非常に有効です。患者にスクワットを行わせ、膝の動きや関節モーメントを観察することで、膝関節にかかる負担を評価できます。評価の一例として、膝が前方に出ないようにベッドの端に膝を合わせたスクワットを行い、膝関節伸展のモーメントが痛みに関連しているかを確認します。この動作で痛みが軽減する場合、膝関節伸展モーメントが痛みの主要な要因であることが考えられます。

また、スクワット中のモーメントアームの長さや重心(COP)の位置が、膝関節にどのように影響しているかも評価のポイントとなります。後方重心であればモーメントアームが短くなり、膝への負担が軽減されますが、前方重心ではモーメントアームが長くなり、膝関節への負担が増加します。

胸椎、股関節、膝の位置、重心(COP)の重要性

スクワット動作中の膝関節前面痛に影響を与える要因には、胸椎の伸展、股関節の屈曲、膝の位置、そして重心(COP)が含まれます。これらの要素が正しく機能しないと、膝関節に過剰な負担がかかり、痛みが引き起こされる可能性があります。

・胸椎の伸展不足

・股関節の屈曲制限

・膝の前方偏移

・重心(COP)の後方偏移

動作制限の要因別アプローチ

スクワット動作中に見られる動作制限に対して、以下のアプローチを行います。

胸椎の伸展制限
胸椎の可動性を改善するためには、ウォールスクワットや徒手療法を用いたモビライゼーションが有効です。軟部組織のリリースやモビライゼーションを通じて胸椎の可動性を高め、膝への負担を減少させます。

股関節屈曲制限
股関節の可動性を向上させるために、股関節屈曲のモビライゼーションやストレッチを行い、筋肉の緊張を緩和します。これにより、膝関節の前方偏移を抑制し、負担を軽減します。

重心と膝前方偏移の調整
重心の位置を後方にシフトさせるトレーニングを行い、膝の前方偏移を防ぎます。スクワット動作の姿勢を修正し、重心を正しい位置に保つことが、膝への負担を軽減する重要なポイントです。

まとめ

膝関節前面痛の原因として、関節モーメントとメカニカルストレスは非常に大きな役割を果たします。スクワット動作を通じて、膝関節への負担を評価し、胸椎、股関節、膝の位置、重心の調整を行うことで、膝前面痛の原因を特定し、効果的な治療アプローチを取ることができます。これらの要素を理解し、臨床での適切な評価と治療に役立てることで、患者の症状改善に繋げられるでしょう。

▶︎▷膝関節前面痛に対する具体的なアプローチ

膝関節前面痛の診かた、考えかた、治しかた ~スクワット動作と局所に着目して~

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