訪問看護ステーションspito-スピット-は熊本県熊本市北区に拠点を構え、Spin tommorrow「明日につむぐ」という名前の由来を持つ地域に根差した訪問看護ステーションです。従来の看護ケアに加え、PT /OT/STとの連携やアロマケアなどの特色のあるサービス提供を行なっている事業所です。今回はspitoに勤めている看護師の伊藤さんにお話を伺いました。
本日はインタビューの機会をいただき、ありがとうございます。まず、伊藤さんのこれまでのキャリアについてお伺いしたいのですが、看護師としてどのようにキャリアを積んでこられたのでしょうか?
はい。私は専門学校で看護師の資格を取りました。出身は天草なんですが、高校から熊本市内に出てきて、それ以来熊本で過ごしています。
新卒では熊本の病院に就職し、回復期リハビリ病棟で5年間、その後一般病棟で1年間働きました。
6年間の病院勤務の後に転職をされたということですが、その際はどのような理由で?
病院を退職したのは、出産がきっかけでした。しばらく専業主婦をしていたのですが、子どもが少し成長してからは、小児科のクリニックで働き始めました。
自分の子どもが病気になることも多く、親として病気に対応するためにも小児科での経験は非常に役立ちました。
4年ほどクリニックで働いた後、主人の転勤で静岡県に移り、そこでデイサービスの看護師として5年半勤務しました。
多様な分野で経験を積まれてきたのですね。訪問看護を選ばれたきっかけは何だったのでしょうか?
実は、訪問看護は全く考えていませんでした(笑)。しかし、田上さん(=スピットマネージャー)との出会いが大きなきっかけとなりました。
田上さんとは以前、小児科で一緒に働いていたんです。彼女から「EMIASに来ない?」と声をかけてもらったのですが、最初は少し抵抗がありました。
なぜなら、訪問看護は、1人で判断しなければならないというイメージが強く、自分にはまだその経験が足りないのではないかと感じていたんです。でも、当時は明確にやりたいことがあったわけでもなかったので、「挑戦してみよう」と思い、訪問看護の世界に飛び込みました。
訪問看護に対して不安を感じていた中で、どのようにしてその不安を乗り越えたのでしょうか?
最初の頃はやはり怖かったですね。特に、限られた時間の中で利用者さんの状態を見極めなければならないという責任が重く感じられました。
病院ではチームで対応できることが多かったですが、訪問では1対1です。自分が判断を誤ると、その後のケアに大きな影響が出る可能性があるというプレッシャーが常にありました。
しかし、回を重ねるうちに経験が積み重なり、だんだんと自信を持って対応できるようになってきました。経験が怖さを和らげてくれた感じですね。
経験を通じて、訪問看護の楽しさややりがいも感じるようになったのではないでしょうか?
そうですね。訪問看護の一番の魅力は、利用者さんとじっくり向き合えることです。
病棟勤務では多くの患者さんを同時に見る必要があり、1人にかけられる時間が限られていました。しかし、訪問看護では、その時間は利用者さんだけのものです。
彼らの生活背景や家族との関係も含めて、深く関わることができるのが訪問看護の大きな魅力だと思います。
利用者さんとの信頼関係を築くことができる場面も多いのでしょうね。訪問看護で特に印象に残っているエピソードがあれば教えてください。
以前、ターミナルケアの利用者さんがいて、その方は余命が短くなっていたのですが、最後の願いとして「ロアッソ熊本のサッカーの試合を見に行きたい」とおっしゃっていました。
もちろん、外出することで体に負担がかかり、寿命が縮まる可能性もありました。しかし、その方にとってはサッカーが人生の大きな楽しみだったので、ご家族と相談し、できる限り支援しました。
最終的に試合に行けたことで、その方もご家族も満足されていた様子を見て、「その人らしさを尊重する」というEMIASの理念が体現できた瞬間だと感じました。
そのエピソードはまさに「その人らしさ」を尊重したケアの象徴ですね。伊藤さん自身、迷いはなかったのですか?
全く迷いはありませんでした。ご家族の協力もありましたし、私は利用者さんが最後に後悔しないように、自分の望みを叶えることが最も大切だと思っていました。
もちろん、体に負担がかかることはわかっていましたが、最後の瞬間までその方が笑顔でいられることが何より重要だと考えていたので、迷いはなかったですね。
そのように迷いなく判断できるのは、伊藤さんが「その人らしさ」を深く理解し、尊重しているからこそですね。訪問看護では、利用者さんとの関係性が特に重要だと思いますが、どのように信頼関係を築いていくのでしょうか?
信頼関係を築くためには、まず「話を聞く」ことが大切です。私は病棟時代から、患者さんの気持ちや想いをしっかりと聞くことを心がけてきました。訪問看護でも同じです。
利用者さんが何を望んでいるのか、どう感じているのかを丁寧に聞くことで、信頼関係が自然と築かれていきます。また、訪問看護では、利用者さんの家族との関わりも重要です。家族も巻き込みながら、一緒にケアを進めることで、より深い信頼関係が生まれると感じています。
訪問看護ならではの家族との関わりも、大きな役割を果たしているのですね。では、EMIASでの働き方や環境についてはいかがでしょうか?
EMIASの環境はとても挑戦的で、自分自身も成長できる場所だと感じています。
例えば、ターミナルケアの利用者さんに対しても「無理しない範囲で挑戦してみよう」という姿勢があり、私たち看護師もそれをサポートしています。
EMIASでは、職員が自主的に新しいことに挑戦できる風土があり、それが私自身の成長にも繋がっています。
挑戦を支援する文化があるのですね。EMIASで働く中で、特に大切にしていることはありますか?
スタッフ同士のコミュニケーションやチームワークを大切にしています。
訪問看護は一人で現場に出ることが多いですが、チーム全体でサポートし合うことで、安心して仕事ができる環境が整っています。また、私は後輩や新しいスタッフが安心して働けるように、できるだけ声をかけるように心がけています。
訪問看護は孤立しがちですが、チームとしての繋がりを強化することで、全体の雰囲気が良くなり、利用者さんへのケアの質も向上すると思います。
伊藤さんが後輩やチーム全体の雰囲気を大切にしていることがよくわかります。最後に、今後の目標やEMIASで実現したいことがあれば教えてください。
私が目指しているのは、利用者さんやその家族が「この人に任せて良かった」と思ってもらえるような看護師になることです。
また、EMIASのチームとして、全員が自分の意見を出しやすい環境を作りたいと思っています。
まだまだ言いたいことを言えないスタッフもいるかもしれませんが、全員が自分の意見を持ち、チームで一緒に作り上げていける環境を目指したいです。
今回は、EMIASグループの訪問看護ステーションspito-スピット-で活躍している伊藤さんの日頃考えている「ありたい姿」や大切にしているチームワークについてのインタビューをお届けしました。「地域の明日を笑みに変える」をテーマに地域に根付いた活動をしているEMIASグループ。今後もEMIASで活躍するスタッフに聞いてみた「ありたい姿」についての内容を発信していきます。