週の真ん中水曜日の江原です。疼痛評価の質問紙シリーズ、本日はMPQ (McGill Pain Questionnaire) を取りげます。
MPQ の概要
MPQは、カナダのマギル大学(McGill University)の心理学者である、Ronald Melzackによって1975年に開発されました1)。
Melzack博士といえば痛みを勉強しているセラピストであれば一度は聞いたことがあるでしょう、Wal博士と1965年に提唱したゲート・コントロールセオリーがとても有名です8)。
現在では慢性的な痛みは、多面的な性質を伴う複雑なものと分かっていますが(図1)、痛みの評価はそれまで主に強度の測定に限定されていて、十分に痛みを捉える評価はありませんでした。
図1 MPQで使われる3つの痛みの側面でみた疼痛メカニズム
感覚-識別的側面、認知-評価的側面、意欲-情動的側面がある
痛みの評価において最大の課題は主観的であることです。様々な方法で数値化し客観的にとらえようとしています。疼痛評価研究の1つの重要なテーマであります。
英語圏を中心に疼痛評価尺度は数多く検討されており、MPQは尺度としての精神測定学的な検討が繰り返され、世界でも最も広く用いられている疼痛評価尺度の1つであります。
しかし日本においてMPQは、痛みの表現に関する言語上のニュアンスや文化の違いが障壁となり、一部の施設でしか用いられていませんでした。
MPQの日本語版の原著は1988年に報告されて、痛みの質の表現の日本語訳が定められており現在も使われています。しかし原著とは異なる形式の評価であり。、信頼性と妥当性の検討は頚肩腕症候群を限られた対象で行われたものでした2)。
身体各部位の慢性疼痛患者で信頼性・妥当性が検討された日本語版は1996年に報告されています。