地域保健・健康増進事業において理学療法士の配置が減少傾向にあることが、厚生労働省の最新報告で明らかになりました。特に市区町村レベルでの減少が顕著ですが、この減少が地域住民の健康支援体制にどのような影響を及ぼしているかについては、資料からは明らかではありません。
理学療法士の配置数推移(2021-2023年)
年度 | 総数 | 都道府県保健所 | 政令市・特別区 | 市町村 |
---|---|---|---|---|
2021年度(令和3年度) | 134人 | 42人 | 66人 | 26人 |
2022年度(令和4年度) | 134人 | 42人 | 66人 | 26人 |
2023年度(令和5年度) | 124人 | 66人 | 42人 | 16人 |
増減(2021→2023) | -10人 | +24人 | -24人 | -10人 |
特筆すべきは、都道府県保健所では増加している一方で、政令市・特別区と市町村では大幅に減少している点です。市町村では3年間で約40%もの減少率となっています。
作業療法士の配置数推移(2021-2023年)
年度 | 総数 | 都道府県保健所 | 政令市・特別区 | 市町村 |
---|---|---|---|---|
2021年度(令和3年度) | 93人 | 25人 | 42人 | 26人 |
2022年度(令和4年度) | 100人 | 35人 | 41人 | 24人 |
2023年度(令和5年度) | 102人 | 25人 | 35人 | 42人 |
増減(2021→2023) | +9人 | ±0人 | -7人 | +16人 |
作業療法士については、市町村での配置が増加しており、全体でも微増の傾向にあります。
地域保健事業における職種別の配置状況(2023年度)
職種 | 人数 | 理学療法士との比率 |
---|---|---|
保健師 | 29,005人 | 約234倍 |
管理栄養士 | 3,929人 | 約32倍 |
薬剤師 | 3,259人 | 約26倍 |
獣医師 | 2,373人 | 約19倍 |
医師 | 847人 | 約7倍 |
看護師 | 751人 | 約6倍 |
歯科衛生士 | 736人 | 約6倍 |
理学療法士 | 124人 | 1 |
作業療法士 | 102人 | 約0.8倍 |
保健師が圧倒的多数を占める中、リハビリテーション専門職の配置数は相対的に非常に少ない状況です。
地域保健における理学療法士の位置づけ
添付資料では理学療法士の具体的な業務内容は明記されていませんが、地域保健・健康増進事業報告の構成から、以下の領域に関わっている可能性があります。
・健康増進事業:資料によれば、栄養指導(3,221,917人)、運動指導(1,120,032人)などの健康増進関係事業が実施されており、特に運動指導においては理学療法士の専門性が活かされる場面があると考えられます。
・母子保健事業:資料に示される乳幼児健康診査や表6の訪問指導において、発達支援の専門職として関与している可能性があります。特に乳幼児健診での運動発達評価や発達支援教室の運営など、早期発見・早期支援において専門的役割を担っていることが報告されています[1]。」
[1] 「理学療法士が産後ケア事業の実施担当者として明記」
ただし、資料からは理学療法士がこれらの事業にどの程度関与しているかは明らかではありません。
地域保健事業における配置に関する考察
添付資料の内容を踏まえると、以下の点が考察できます。
1.地域による配置の偏り
理学療法士は都道府県保健所(66人)、政令市・特別区(42人)、市町村(16人)と配置に偏りがあります。これは地域の特性やニーズ、あるいは行政体の規模や財政状況を反映している可能性があります。
2.職種間の配置バランス
保健師(29,005人)を中心とした人員配置の中で、理学療法士(124人)や作業療法士(102人)は少数派であることがわかります。このバランスは地域保健事業の優先順位や専門職の役割分担を反映している可能性があります。
3.経年変化の傾向
理学療法士の配置数が令和3年度から令和5年度にかけて減少(134人→124人)していることから、職種配置の見直しや予算配分の変更があった可能性が考えられます。
今後の検討課題についての示唆
資料そのものからは具体的な検討課題は示されていませんが、職員配置の現状を踏まえると、以下のような点が示唆されます。
1.地域保健における理学療法士の役割の明確化
現状の少数配置を踏まえ、限られた人員でより効果的なサービス提供を検討する必要があります。
2.保健師等の他職種との連携方法の構築
表14に示される職種構成から、保健師等の多数派職種と少数派の理学療法士・作業療法士との効果的な連携が重要と考えられます。
3.人口動態や疾病構造の変化に対応した配置の検討
資料のに示される人口10万人あたりの保健師数に地域差があるように、地域特性に応じた専門職配置の検討が必要と考えられます。これらの考察は添付資料の数値データから推測されるものであり、具体的な業務内容や効果については資料からは明らかではない点に留意が必要です。
▶︎https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/c-hoken/23/index.html