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足の指に異常は要チェック!糖尿病性足病変とは?(概論①)

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糖尿病性足病変は血管や神経の障害で潰瘍や壊疽を生じやすいですが、適切な評価・ケア、リハビリ、患者教育を多職種連携で実施すれば、早期発見と重症化回避が期待できます。また学会参加も知見を深め、患者支援の向上に役立ちます!

はじめに

糖尿病は、血糖値が慢性的に高い状態が続くことで、多岐にわたる合併症を引き起こす疾患です。そのなかでも「糖尿病性足病変」は足の潰瘍や壊疽(えそ)を生じやすく、適切なケアが行われなければ最終的に足の切断に至る場合もあります。ところが、患者さんの多くは痛みやしびれといった感覚が低下しているために、足に傷ができていても気づかず放置してしまい、症状が進行しやすいのが現状です。

本コラムでは、糖尿病性足病変の基礎的な知識から具体的な評価方法、リハビリテーションや患者教育、予防・最新情報までを全5回にわたって解説していきます。第1回となる今回は、まず「糖尿病性足病変の概論」として、定義や起こりやすい原因、社会的背景などを総合的にご紹介します。

糖尿病性足病変とは

糖尿病性足病変とは、糖尿病による末梢神経障害や末梢動脈病変を背景として、易感染性であり、軽いもので爪白癬や蜂窩織炎、重症では壊死性軟部組織感染症や骨髄炎が生じる状態を指します。1)

例えば、糖尿病患者さんの血糖コントロールが不良な状態が続くと、全身の血管がダメージを受けて動脈硬化が進行し、足先まで十分な血液が届きづらくなります。また、高血糖状態は神経障害も引き起こすため、痛みや温度といった感覚が鈍くなり、足のトラブルに気づかないまま放置してしまうことが多いのです。2)その結果、小さな傷が大きな感染につながり、潰瘍形成や壊疽など深刻な合併症を引き起こします。

また、糖尿病性足潰瘍の分類として本邦では、神戸分類が用いられることが多く、神戸分類では、末梢神経障害主体の Type Ⅰ(末梢動脈疾患なし)、血行障害主体の Type Ⅱ 〔包括的高度慢性下肢虚血(chronic limb‒threatening ischemia:CLTI)〕、感染が主体 (骨髄炎を合併)の Type Ⅲ、末梢血行障害と感染症の混合型である Type Ⅳに分類されます。3)

糖尿病足病変が重症化する仕組み

糖尿病足病変に関するリスク因子は図のように多種多様ですが、主に糖尿病神経障害とPADの2つがあげられます。主な経路を例に説明すると下記のような形となります。

  1. 1.末梢神経障害(ニューロパチー)
    糖尿病患者さんでは、長期間にわたる高血糖の影響で末梢神経が損傷を受けやすくなります。主に足趾から進行し、足にできた傷が痛まなかったり、熱さや冷たさを感じにくくなったりするため、気づかないまま症状が進行するリスクが高まります。
  2. 2.血行障害(虚血)
    高血糖は動脈硬化を促進するため、血液が足先まで十分に行き渡らなくなります。結果として組織の修復力や免疫力が低下し、小さな傷でも治りにくい状態が続きます。
  3. 3.感染リスクの上昇(易感染性)
    感覚が低下していると傷の処置が遅れがちになり、さらに血行不良で体の防御力が弱まっているため、皮膚や軟部組織の感染が起こりやすくなります。感染が深部に及ぶと骨まで侵される恐れがあり、治療が難しくなるケースも少なくありません。

図:糖尿病足病変のリスク因子

社会的背景と課題

日本国内では糖尿病患者さんや予備群の数が増加しており、糖尿病足病変に悩む患者さんも増えています。足を切断するような重症化を防ぐためには、医療費の負担や患者さん・ご家族の生活の質(QOL)の低下を考慮しても、「早期発見・早期介入」が何よりも重要です。
しかし、実際当院でも「足のトラブルは皮膚科や整形外科、内科など、どこに相談すれば良いかわからない」「小さい傷だったから病院へ行く気にならなかった」といった理由で受診が遅れたり、検診の機会が不足していたりする現状があります。さらに、糖尿病足病変の診療には多職種の連携が必要ですが、専門知識や経験をもつ医療従事者が全国的に均等に配置されているわけではなく、地域や地方によっては適切なケアを受ける機会が限られている場合もあります。5)

チーム医療・多職種連携が鍵

糖尿病足病変を効果的に予防・治療するためには、糖尿病内科医・整形外科医・循環器内科医・形成外科医といった医師だけでなく、看護師や管理栄養士、理学療法士や作業療法士、義肢装具士など、多様な専門職の連携が不可欠です。たとえば、血糖管理を担当する医師が血糖管理を行いながら、足の傷の処置を形成外科医が行い、歩行や装具の調整をリハビリ専門職がサポートし、日常的なケアを看護師と患者さん自身が協力して行う、というように役割分担が明確になっているとリハビリテーションの効果や退院後の歩行再獲得の可能性は大きく向上します。

本コラム全体の概要

私が担当する糖尿病足病変に関する全5回のコラムでは、以下のような構成でより具体的なポイントを掘り下げていきます。

  1. 1.概論(今回)
    糖尿病足病変の定義、重症化のメカニズム、社会的背景などの基礎知識を解説。
  2. 2.評価
    フット検査や血流評価、神経障害の有無を確認する方法など、臨床現場で行われる評価・リハビリ職が行う評価手順を紹介。
  3. 3.リハビリテーション
    足病変の患者さんが生活機能を維持・向上させるための運動療法や装具、歩行訓練のポイントを解説。
  4. 4.患者教育
    日常生活でのフットケア方法、靴の選び方、自己管理意識を高めるための指導例。
  5. 5.予防・最新情報
    先進的な治療技術や予防策、学会等で取り上げられている最前線のトピックを紹介。

まとめと学会参加のすすめ

糖尿病足病変は、高血糖による「血行障害」や「末梢神経障害」が複雑に絡み合った結果生じる合併症です。しかし、適切な評価や日々のフットケアを徹底することで、予防や重症化の回避が期待できます。リハビリスタッフだけでなく、患者さん自身やご家族が正しい知識を身に付けて行動に移すことが、足病変予防の第一歩といえます。

また、糖尿病足病変の研究や臨床の最前線を知るうえで日本糖尿病理学療法学会や日本フットケア足病医学会は非常に有益な情報源です。最新の治療法、専門家との交流、他施設での取り組み事例など、学会に参加することでより深い知識を得ることができます!

糖尿病に関わる医療従事者の方はぜひ積極的に参加を検討してみてください!!
2025年の日本糖尿病理学療法学会は12月開催予定です。(下記のリンクをCHECK!)

・日本糖尿病理学療法学会
 開催日:2025年12月20日(土)、12月21日(日)
 URL :https://pub.confit.atlas.jp/ja/event/jsptdm11

・日本フットケア足病医学会
 開催日:2026年2月27日(金)、2月28日(土)
 URL :https://www.6thjfcpm.jp/index.html

会場で私もお待ちしています!!

参考文献

  1. 1.Higashi Y et al. Baseline Characterization of Japanese Peripheral Arterial Disease Patients - Analysis of Surveillance of Cardiovascular Events in Antiplatelet-Treated Arteriosclerosis Obliterans Patients in Japan (SEASON). Circ J. 2016;80(3):712-721. doi:10.1253/circj.CJ-15-1048
  2. 2.Galiero R, et al. Peripheral Neuropathy in Diabetes Mellitus: Pathogenetic Mechanisms and Diagnostic Options. Int J Mol Sci. 2023;24(4):3554. Published 2023 Feb 10. doi:10.3390/ijms24043554
  3. 3.Terashi H, Kitano I, Tsuji Y: Total management of diabetic foot ulcerations: Kobe classification as a new classification of diabetic foot wounds. Keio J Med 60: 17-21, 2011
  4. 4.McDermott K, et al. Etiology, Epidemiology, and Disparities in the Burden of Diabetic Foot Ulcers. Diabetes Care. 2023;46(1):209-221. doi:10.2337/dci22-0043
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