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田中まさし(PT)議員が事業再生法案について質疑|経済産業委員会

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2025年6月5日 参議院経済産業委員会

6月5日の参議院経済産業委員会で、自由民主党の田中昌史議員(理学療法士)が質問に立ちました。企業債務増加と倒産件数の現状を問題視し、事業再生法案の意義や地方創生、経済成長戦略について政府の見解を求めました。

企業債務急増と倒産件数増加を問題視

田中議員は、コロナ禍以降の企業債務残高がコロナ前比で120兆円以上増加し、ゼロゼロ融資の返済負担が重くのしかかっている現状を指摘しました。帝国データバンクのデータによると、利払いをカバーする十分な利益を出していない企業の割合は2023年度で15.5%に上り、昨年の企業倒産件数は11年ぶりに1万件を超えたことを問題視しました。

事業再生法案は「第三の手続き」

藤木局長は、現行の法的整理と私的整理の課題を説明し、新制度について「経産大臣が指定する公正中立な第三者機関が関与して、債権額の4分の3以上の同意、そして裁判所認可により債務の権利関係の調整を行うことができる、いわば第三の手続き」と答弁しました。事業価値の毀損を抑えながら、全債権者の同意が不要になることで、迅速な事業再生を可能にするとしています。

地方の温泉宿の役割を評価

田中議員は自身の温泉宿泊体験を交えながら、地方の宿泊施設の重要性について言及しました。北海道中標津町の養老牛温泉の事例を挙げ、「日本語学校も経営して外国人留学生を従業員として雇用し、地域の労働力として配置・供給するなど、地域の雇用活性化に貢献している」として、DMOだけでなく地域経営の担い手となっている宿泊施設への支援拡充を求めました。

2040年GDP1000兆円目標への道筋

武藤経済産業大臣は、2040年度の民間設備投資200兆円目標について「名目GDP約1000兆円という形で定量的に示し、政府も前面に出て予算・税制・規制・標準化等のあらゆる政策を総動員して国内投資を引き出す」と意気込みを語りました。

井上審議官は具体的な数値として、「労働生産性が2040年にかけて年率で3.7%上昇し、賃金は年率で3.3%上昇、実質GDPは年率で1.7%上昇する」との推計を示しました。

実質賃金向上が最重要課題

田中議員は質疑の最後に、「国民の皆さんが豊かさを実感できる社会を実現するためには、実質賃金をいかにプラスに転換させるかが極めて大事」と述べ、交易条件の悪化への対応を求めました。井上審議官は「成長投資による高付加価値化」を通じた輸出物価上昇の必要性を強調しました。

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【質疑全文】

以下、田中昌史議員と政府側答弁者との質疑応答の全文です。

事業再生法案について

田中昌史議員: おはようございます。自由民主党の田中昌史です。今日も質問の機会をいただきまして、ありがとうございました。

現下、日本企業の取り巻く経営環境は大変厳しいものがあります。コロナ禍以降の日本企業の債務残高は、コロナ前に比べても120兆円以上増加している状況にあり、ゼロゼロ融資の返済も始まって、この返済の負担も非常に重くのしかかっています。昨日も実は事業者の皆さん方とお話ししている中で、同じようなご意見が寄せられました。

帝国データバンクのデータによりますと、事業経営に懸念があって利払いをカバーするのに十分な利益を出していない企業の割合は、コロナの時に急増しまして、2023年度は15.5%と非常に高くなっています。昨年の企業倒産件数も11年ぶりに1万件を超えたということで、リーマンショック以降の非常に高い水準になったことが判明されています。

東京商工リサーチによる本年1月から4月も、全国企業倒産件数は3,285件、前年比プラス5.8%、負債額4,940億円、これも前年比41.5%と厳しさが増している状況ではないかと思います。

この背景には、原材料の価格高騰と人手不足と人件費の増加、円安や金利上昇、社会保険料負担、こういったものが複合的に絡んでいるわけでありますが、今後トランプ関税の影響もどのようになるかというのは非常に注視しなければいけないところであります。

こうした厳しい経営環境にありまして、過剰な債務が企業の収益性向上の足枷になったり、事業再生を妨げ、倒産に至る企業がさらに増える恐れが指摘されているところであります。倒産となれば、企業価値や技術や人材など、こういった貴重な経営資源が失われていくということになりますし、何よりも日本国内における供給力が低下していくということは、これが物価上昇にも大きく影響してくる懸念があるのではないかと思っております。

企業が迅速に再建に向けた対策を行えるよう制度と基盤を整備して、倒産に至る前の段階で事業再生を可能にすること、これは地域の雇用と暮らしを守り、そして地域経済の好循環を促進することにもつながると思います。事業再生法案、この度の法案は事業・雇用・暮らし・経済を守る法案だと私も承知をしているところであります。

そこで質問に入りますが、現行制度では企業が過剰債務や経済的に困窮した状況に陥る場合に、法的整理(いわゆる倒産処理)または私的整理によって対応されていますが、事業再生法では、この法的・私的整理の双方の欠点を補うものということであると思います。現行の法的・私的整理では対応困難な事例があったことも踏まえて、本法案によってどのような問題点を解決し、早期の事業再生を必要とする企業や債権者にとっていかなる利点を生じさせることになるのかについて伺いたいと思います。

藤木局長: お答え申し上げます。ご指摘のとおり、事業者の債務整理に係る現行制度を大きく分けますと、裁判所が手続きを進める法的整理手続きと、債務者と債権者の間の合意による私的整理手続きに大別されるところでございます。

このうち法的整理手続きにつきましては、原則として全債権が対象となって、債権者の多数決及び裁判所の認可により債務の減免等が認められるという制度でございますが、手続き開始時に広告が行われますので、事業価値が毀損しやすいという特徴があると承知してございます。

一方で、私的整理手続きにつきましては、今申し上げた手続きの利用が広告されず、また対象債権は主として金融債権等に限定されるということでございまして、事業価値の毀損が抑えられるという特徴がございます。一方で、対象債権者全員の同意が必要となるということが手続き上の課題として指摘されてきているところでございます。

そういう中で、今回のこの制度につきましては、法的整理と異なりまして手続きに関する広告はなく、金融債権に限定される一方で、私的整理手続きとも異なっておりまして、経産大臣が指定します公正中立な第三者機関が関与して、債権額の4分の3以上の同意、そして裁判所認可ということで、債務の権利関係の調整を行うことができる、いわば第三の手続きということでございまして、事業者の事業再生に向けた新たな選択肢を与えるものであると考えているところでございます。

田中昌史議員: ありがとうございます。事業の再生をより可能にしやすくするということで、それぞれの欠点を補うところだというお話であったと思います。この4分の3以上ということで、全債権者の同意がなければいけないというところから4分の3の同意を得るということに変更されたということによって、スムーズに円滑に再生が進んでいくということも大いに期待したいと思いますし、事業の価値を毀損しないということは非常に大事だと思います。これは事業者のみならず、債権者にとっても非常に大きな影響を与えるものだと思いますので、ぜひしっかりと円滑に運用されていくことを期待したいなと思っております。

続きまして、この本法律案の対象となる事業者について伺います。経済産業省の産業構造審議会経済産業政策新機軸部会の事業再構築小委員会の報告書におきまして、経済的に窮境に陥る恐れがある事業者が早期に債務整理に取り組めるよう、業種や事業規模による制限や事業再構築を要件として設けないことが適切である、としている一方で、本制度で求められる手続きが実務的に中小企業にそぐわない場合もある、とされています。本制度の利用が想定される企業の事業規模の目安はどういったものなのか、すでに利用されている中小企業活性化協議会や中小企業の事業再生等に関するガイドラインの活用も踏まえて、教えていただきたいと思います。

藤木局長: お答え申し上げます。まず、本制度を活用する事業者の規模につきまして、制度上特段の規定は設けてございません。ただ一方で、先ほど申し上げましたように、債権者の多数決を必要とするということでございますので、金融債権者の数が相対的に多い企業の活用ということでございまして、一般的に申し上げれば、大企業だったり中堅企業だったりということが主たる利用者として想定されるところではございます。

一方で、今ご指摘ございましたけれども、中小企業活性化協議会あるいは中小企業の事業再生等に関するガイドラインというのが別途ございまして、これは大変有効に活用されているところでございまして、むしろ規模の小さな中小・小規模事業者の方は、こちらを使って事業再生に取り組まれるということが中心になってくるのではないかと思ってございます。

田中昌史議員: ありがとうございます。ガイドライン等が有効に活用されているということは、私も事業者の皆さん方から聞いているところでありまして、ぜひこういう部分もしっかり周知広報していただいて、なかなかよくご存じない事業者の方もいるんだという話は現場では聞くところでありますので、ぜひ周知広報はしっかりしていただきたいなと思います。

続きまして、この手続に関する第三者機関としての指定確認調査機関について伺いたいと思います。早期の事業再生を図るためには、その事業再生計画が実効的であるかを適切に判断することはもちろん重要なことであります。本制度を利用するにあたっては、この事業者の行う手続き申請が受理された後に、指定確認調査機関が事業再生に向けた必要事項について確認することとなっております。この指定確認調査機関の役割が今後本当に大事になってくると思いますが、この調査機関とはどのような機関を想定されているのか、特に事業再生を的確に判断できる人材がこの機関の中にしっかりと配置されるのかどうか、この点について伺いたいと思います。

河野審議官: お答え申し上げます。まず、第三者機関の指定でございますけれども、法令上、手続きの監督等に関する業務を的確に実施するに足りる経理的及び技術的基礎を有すること、それから手続きの当事者と利害関係のある者が関与しない体制を整備していることなどを要件としているところでございます。具体的な指定につきましては今後ということになりますけれども、このような力を持った組織をしっかり指定していくということになります。

それから、ご指摘の事業再生計画を的確に判断できる人材でございますけれども、事業再生に関する専門的知識及び実務経験を有するなど、一定の要件を満たす者を確認調査員ということで、個別な案件ごとに選任するということを、この第三者機関に求めているといったたてつけになってございます。

また、確認調査員の選任にあたりましては、公平中立性を担保する観点から、その確認調査員の候補者が事業者・債権者と利害関係を有している場合などには、その確認調査員としては選任されないようにするといった、業務の公正な実施を妨げる恐れがある場合の取扱いを定めること、これも求めているところでございます。

いずれにいたしましても、この確認調査員の選任に関する詳細につきましては、今後検討していきたいと考えてございます。

田中昌史議員: ありがとうございます。具体的な選任についてはまた今後、実際に運用された時に実例を見ながら、またよく判断をしていかなきゃいけないんだろうなと思いますが、利害関係がないというのは、これはもう信頼を担保する上では非常に重要な要素でありますので、この辺りの選任のあり方については的確に今後ともお願いをしたいなと思っております。

それから、この指定確認調査機関の確認事項として、権利変更概要書において記載された当該権利の変更に関する方針が、権利変更議決の可決の見込みがないことが明らかでないものとして経済産業省令で定める基準に適合するものである、ということになっています。この省令で基準を作るということでありますが、この経済産業省令で定める基準とはどのような事項を想定しているのか。

また、令和4年10月22日に、新しい資本主義実現会議の新たな事業再構築のための私的整理検討分科会で「新たな事業再構築のための法制度の方向性(案)」、この中で、この事業再構築は「新分野の開拓、業態の転換、事業構造の変更その他収益性の向上のための事業活動及びこれに必要な債務整理を行うこと」、事業の転換とか新しい分野の転換を考えているということでありまして、このような具体的な内容として新製品や業態の転換、こういった部分の変更を、この省令で定める基準の中に盛り込んでいかれるのかどうかについて伺いたいと思います。

河野審議官: お答え申し上げます。ご指摘のとおり、この本制度では手続きの申請時点で第三者機関が、対象債権者集会の決議が成立する見込み等を確認するということになってございます。そして、可決の見込みがないことが明らかな場合ということでございますけれども、例えばでございますが、債権額の一定割合以上を占める債権者が本制度の利用に異議を示している場合などが想定されるということになりますが、様々なケースが事案ごとにあると思いますので、その詳細につきましては今後検討を深めていきたいと考えてございます。

それから、2つ目のご指摘の内閣官房における分科会でのご議論ということでございますけれども、そこでご指摘いただきました事業再構築という概念でございますが、ここでは新分野展開や業態転換、それから事業構造の変更その他の収益性の向上のための事業活動及びこれに必要な債務整理を行うことと定義をされまして、事業者は手続きの開始を申請する際には、この事業再構築の定義への該当性を確認するということとされていたところでございます。

他方で、この本制度を検討する際に開催した経済産業省の審議会におきましては、経済的窮境に陥る恐れのある事業者が早期に過剰な金融債務の整理に着手して事業再生に取り組むために、本制度の利用を躊躇しないよう、この事業再構築を要件として設けない方が適切ではないかというご議論を頂戴しまして、結果として、この本制度では、このような事業再構築といった要件を不要としているところでございます。

田中昌史議員: 採用しないということで、ちょっと安堵いたしました。こういうことを展開できる事業者は、そもそもそういう状況にならない可能性も高いのではないかなと思っていますし、そういう状況に至れないからこそ、やっぱりこの事業再生が必要になる事業者になる可能性が高くなっているのではないかなと思いますので、こういった部分は、この事業再生法というよりは、その前の段階の事業者の意識をしっかり向上していくことも含めて、こういったことを事業者の方にもご理解いただくような広報周知が必要かなと思うところであります。

続きまして、この指定確認調査機関の確認要件のもう一つである「事業の継続に支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することが困難となる恐れ」とは、具体的にどういう状況なのか、その要件を伺いたいなと思います。また、この民事再生法の要件との比較で「著しく」という文言が削除されました。これによって利用できる事業者が不当に広がるのではないかという懸念も示されていますが、この辺りについて伺いたいと思います。

河野審議官: お答え申し上げます。この本制度は、早期での事業再生に向けて倒産前の手続きとして、倒産状態の前段階の事業者を対象とするものでございます。このため、対象となる事業者は、ご指摘もございましたが、民事再生法の対象である「経済的に窮境にある状態」よりは手前ということで、「経済的に窮境に陥る恐れ」のある状態としてございます。

具体的に申し上げますと、この本制度による権利変更が行われなければ、将来の一定時期までにキャッシュフローの悪化が進み、事業継続が困難となる状態などを想定をしているところでございます。

その上で、ご指摘でございますけれども、制度を利用する事業者が実際に経済的に窮境に陥る恐れのある状態かどうかというところにつきましては、先ほどもございましたが、第三者機関においてしっかり確認をするというたてつけとなってございます。

さらに、その後も対象債権者集会において、その債権額の4分の3以上の同意ということが必要になることや、この決議をした後も裁判所が手続きの公正性や法令違反がないかといったことを審査をするといった、いわゆる複層的な多数決の乱用防止措置というのを設けてございますので、この制度を利用できる事業者がある種不当に拡大するということは、制度的に避けることができる仕組みとなっていると考えてございます。

田中昌史議員: 承知しました。今ちょっと法令違反がないかどうかというのもチェックされるという話がありましたが、この事業再生法を利用するにあたって、やっぱりモラルハザードがしっかり抑止されているというのは非常に大事なことだと思います。粉飾決算ですとか、その事業再生にあたって債権者に対して誠意がないとか、手続き上に本当に熱心じゃないとか、こういう事業者についてはしっかりと排除される仕組みというのが必要なんだろうと思いますが、このあたりはどのような手続きでされるんでしょうか。

河野審議官: お答え申し上げます。本制度におきましては、例えばその確認事業者が偽りその他不正の手段によって手続き開始時点の確認や、その早期事業再生計画などの調査を受けたことが判明した時には、その確認の取り消し事由に該当するということや、それから先ほども少し言及しましたが、裁判所が不正の方法による決議の成立などをしっかり審査をするといった措置を設けているところでございます。

従いまして、ご指摘ございました悪質な粉飾等を行った事業者につきましては、その利用の継続は排除され得る制度の立てつけになっていると考えてございますけれども、いずれにしましても、個々の事案に応じて、個別にこの第三者機関なり裁判所によって、そういった事業者の利用の継続の可否をしっかり判断していくということになると考えてございます。

田中昌史議員: いろいろな事業者の中身があるんだと思いますから、適切でしっかりとした判断をしていただいて、一生懸命頑張って努力されている事業者が意気消沈することがないよう、ぜひそこはお願いをしたいなというところであります。

事業再生法に関しての最後の質問になりますが、経営環境が大変厳しい状況にある中で、この窮境に陥った事業者の方を放置することなく、再チャレンジの観点から早め早めの対応を促していく、寄り添った対応を行う上で今後は非常に大事だと思っております。課題を認識していない事業者に対しても、経営改善の必要性を認識していただいて、事業者の意識をしっかり変えていくこと、経営のヘルスチェック対策を推進していくこと、大いに期待しているところであります。

先日長崎に伺った際にも、佐世保の事業者の皆さん方から非常に厳しい状況になって、事業再生についてのお話もいくつかございました。この法律によって、事業者の皆さん方がしっかりと再建していただけることを私は期待するところでありますが、この法案の成立後、事業者に対してどのように周知広報を図って、しっかり活用を進めていかれるのか、企業の経営状況の改善に向けた意気込みを、小川副大臣に伺いたいと思います。

小川経済産業副大臣: 田中委員におかれましては、早速現地にお越しいただいて現場のお声を聞いていただいて、大変ありがとうございます。大変この周知広報重要なご指摘だと、こういうふうに認識しております。

この法案は、経済的窮境に陥る恐れという倒産前の段階で、事業者が早期に事業再生を図ることができるようにするものでありまして、まさに倒産リスクのある事業者の再挑戦を後押しするものでございます。

先ほど藤木局長からも言及がありましたけれども、本制度以外にも、この中小企業活性化協議会において再生支援のみならず、円滑な廃業や経営者等の再スタートのための支援も実施しているところでございますけれども、いずれにいたしましても、委員ご指摘のとおり、この本法案を含め、事業者の方々がこれらの制度を活用できるように情報発信をしていくことが大変重要だと、このように認識しておりますので、この法案をお認めいただければ、今後金融庁等の関係省庁と協議をしながら、日本商工会議所をはじめ経済団体、それから金融業界団体等を通じて丁寧に広報を行っていくことで、事業者の再生や再挑戦をしっかりと支えてまいりたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

田中昌史議員: ありがとうございました。本当に地域の事業者の皆様方が再チャレンジして、また力強い地域経済が復活していくことを大いに期待させていただいているところでございます。

地方創生と観光政策について

事業再生法からはちょっと離れまして、違う質問になりますが、まず、この地方創生2.0、これは石破政権の大事な政策の柱として位置づけられておりますし、経産省としても様々な政策に取り組まれていらっしゃると思います。

その中で、これはインバウンド、これ先般もニュースで出ましたけども、過去最高の観光客が日本に入った、インバウンドが拡大しているということでありますが、このインバウンドを地方創生にしっかりと結びつけていくということは非常に大事だと思っております。

その上で、最近の政府の様々な会議で「地域経営」という言葉が非常にキーワードとして出てきます。その担い手として、DMO(観光地域づくり法人)、これが期待を寄せられて、かなり多くの団体が登録されているというところでありますが、私はこの観光地域づくり法人に加えて、地方の宿にも期待しているところです。

私は小さい時から祖母によく温泉に連れて行っていただいて、今全国比例区なもんですから、47都道府県もあるときは必ず温泉の宿に泊まらせていただいているんですけども、夜遅く帰ってきて朝早く出てくるので本当に一瞬だけ楽しませていただくというような状況でありますが、本当に温泉地というのは歴史・文化・伝統、それから地域の魅力、そういったものを大きく発信できるところだと私は思っています。

私の北海道の地元の中標津町から空港・都市街地から30分ほど行ったところに養老牛温泉というのが、素晴らしい景色のところがあるんです。そこに「湯宿だいいち」という一軒だけ、昔は5軒ぐらいあったんですけど、今は一軒、経済不況で次々と減っていって廃業して、今は一軒だけ。その一軒も、廃業したところを買い取って再建したということの宿であります。

当然、北海道ですから地元の食材非常に豊富でございまして、地域の食材を使ったり、あるいは地域の名産品、こういったものを展示したりしながら経営されてらっしゃるというところなんです。

ここの事業者はちょっと違うのは、当然地域の方々を雇用してるわけですけども、それだけではまかないきれないので、日本語学校も経営して外国人留学生を入れて従業員として雇ったり、そこで学んだ方々を地域の労働力として配置して供給したり、こういった形でやるだけじゃなくて、地域の雇用をしっかりと活性化するような形のこともされている事業者があると。

そういう意味では、地域づくりというものに、こういった宿は貢献されているんじゃないかなと私は思っているところであります。いろんなところに行きますけども、本当に地域の食材とか文化を発信するという部分では、私は地域のショーケースのような存在だと私は思います。

この先ほどの観光地域づくり法人も頑張っていただきたいと思いますが、この地域でこういった取り組みをちゃんとやっている宿についても、やっぱり私はきちんと評価をしていくべきなんではないのかなと思っております。

観光庁をはじめとする関係省庁の地域づくりに関する補助事業等についても、申請主体は地方公共団体とこのDMO観光地域づくり法人が指定されるケースが多いように見受けられますが、この地域経営の担い手になっている宿についても、ぜひこの補助事業の中に組み込んでいくべきではないのかなと思いますが、ご見解を伺いたいと思います。

観光庁鈴木審議官: お答え申し上げます。DMOは観光地域づくりの牽引役として、宿泊事業者のご参画もいただきながら、地方自治体と連携しながら地域の稼ぐ力を高めるために観光地経営を進めているところでございます。

観光庁といたしましては、宿泊施設が観光地域づくりに積極的に参画いただくことも重要であると考えてございまして、このため宿泊事業者が合意形成の仕組みの中に参画することを、そのDMOの登録要件・設立の要件とさせていただいているところでございます。

また、ご指摘のとおり、DMOの体制強化に関する補助事業などのように、その申請主体をDMOに限定しているものもございますが、一方で宿泊施設の改修のための支援などのように、宿泊施設を申請の対象としている補助事業や、地域の観光資源の磨き上げを支援する地域観光魅力向上事業など、宿泊事業者も申請可能な補助事業もございます。

いずれにいたしましても、宿泊施設が主体的にDMOにご参画をいただいて、観光地域づくりに活躍されておられる、そういった地域も実際にございますことも承知しているところでございまして、観光庁に対しましては、宿泊施設がDMOに積極的に参画していただくことに加え、個別の活動についても合わせて両方支援を行っていくことで、地方創生をしっかり進めてまいりたいと考えてございます。

田中昌史議員: ありがとうございます。ぜひこういった地域の発展活性化に向けて取り組んでいる地域の宿泊施設については、広くしっかりとそこを推進をしていただきたいなと思います。

昨年1月に出た観光地域づくり法人の現状課題の観光庁の調査を拝見しましたけど、なかなかステークホルダーの皆さん方の意見を集約してまとめるのは、かなりご苦労されていらっしゃると、これにも出ております。そういう部分では、一つ一つの事業者の総和をどういい方向に持っていくのかということを、無理やり全員を一つの方向に向かせるっていうことも一つの方法だと思いますけど、全体の総和を一つの方向にどうやって向かせていくのかっていう形になれば、若干ちょっとハードルが下がるんじゃないかなっていう期待をしないでもないわけなので、ぜひそのあたりの取り組みは、観光庁としても先導的にお願いしたいなと思っております。

経済成長と国内投資拡大への取り組み

それでは経済のお話にさせていただきたいと思いますが、先ほどからずっと申し上げた、デフレ経済が長きにわたって続いてまいりました。1985年のプラザ合意以降、日本の名目GDPは約30年にわたって平均525兆円ぐらいをずっと推移してきましたが、ここに至って609兆円にぐっと回復をしてきている状況でありますが、この内需が増えないことによって、当然日本の経済成長を図るためには外需に依存していかなきゃいけないということになりますが、ここに来てトランプ関税でどうなるか分からないということの中で、この内需をしっかり強化していくということは、これから日本の大きな方向性だと考えております。

今年の1月に国内投資拡大のための官民連携フォーラムで、経団連が国内向けの民間設備投資について、2030年度に135兆円、2040年度に200兆円を目指す新たな目標を示されたところであります。目標実現に向けては、官民一体となった取り組みが重要であると考えます。

政府としても、企業の成長投資を後押しする規制・制度改革、成長分野における設備投資や研究開発・人的投資の後押し、そして産業用地を含む様々なインフラ整備の支援、各業種の実態に即した省力化投資を進めるための環境整備など、積極的に取り組むことが重要ではないかと考えております。こうした政策を具体化していくにあたって、武藤経産大臣の意気込みを伺いたいと思います。

武藤経済産業大臣: ありがとうございます。田中委員、ぜひ全国温泉周りベストランキング小冊子でも出していただけると買います。

今委員がお指摘の官民連携フォーラムで、賃上げと投資が牽引する成長型経済の実現に向けて、2030年度135兆円、そして2040年度200兆円という国内投資目標の実現に官民連携で取り組んでいくことを表明され、これが誠に重要なご指摘をいただいたと思います。

経産省としては、経済産業政策の新基軸として、この人口減少下でも一人一人が豊かになれる日本を目指して、積極的な産業政策の展開により、十分に実現可能な2040年のマクロ経済・産業構造の将来見通しを名目GDP約1000兆円という形で定量的に示すとともに、その実現に必要な高付加価値化に向けた成長投資を促す政策の方向性を示しているところであります。

こうした将来見通しを共有することで企業の予見性というものを高めつつ、ご指摘の取り組みを含めながら、政府も前面に出て予算・税制・規制・標準化等のあらゆる政策を総動員して、積極的な産業政策を継続することで国内投資を引き出してまいりたいと考えているところです。温泉周りよろしくお願いします。

田中昌史議員: 温泉ランキング作りたいと思います。ありがとうございました。

それで、具体的に先ほど1000兆円というお話がございました。非常に大きく期待するところでありますが、この産業政策の強化策の中で、この3つ、国内投資の拡大・イノベーション加速・国民の所得向上、私は国民の所得向上っていう言葉に非常に興味がありますが、また国民の皆さん方もここが一番関心じゃないかなと思います。

GDP1000兆になっても私たちの生活どうなるの、というところは国民の大きな関心事だろうと思います。この3つの好循環の実現を上げていらっしゃいますが、この2040年に向けた民間投資200兆円と連動して、経済産業政策の新基軸、今大臣おっしゃいましたが、国内投資の拡大と産業構造の転換、これを推進していくと伺っておりますが、国内投資・産業転換をどのように図ろうとしているのか伺いたいと思います。

井上審議官: お答え申し上げます。委員ご指摘の経済産業政策の新基軸、この第4次中間整理におきまして、経済産業研究所(RIETI)との共同で、官民目標である2040年国内投資200兆円、これが達成された場合、どのようなマクロ経済・産業構造の見通しになるかと、こういうことの変化を推計させていただいたところでございます。

この結果、ここ数年と同水準の賃上げが続いていくと、2040年に名目GDP約1000兆円を達成するという推計結果が得られたところでございます。

こうした変化を実現するために、3つの産業構造転換が鍵となると、こういうふうにしておりまして、まず第一に、製造業につきましては、GX等による差別化やデジタルを活用したサービス化等による高付加価値化により、「製造業X」と承知しておりますけれども、そういった形に変化していくこと。

そして第二に、情報通信・専門サービス業が需要を開拓し、成長産業になっていくこと。

第3に、エッセンシャルサービス業でございますけれども、省力化投資を使いこなし、賃上げを実現できる産業となっていくということでございまして、その上で、こうした産業構造転換を実現するためには、各産業において研究開発やソフトウェア・ロボットなど次世代型の成長投資が必要となってまいります。

政府としては、政策を総動員して、この高付加価値型の産業構造への転換を実現する成長投資を後押ししていく必要があると考えております。

田中昌史議員: ありがとうございました。私はエッセンシャルサービス出身なものですから、先ほど省力化から賃上げというお話がございました。実際にどういうふうになっていくのかなというのが非常に気になるところであります。

今お話があったとおり、この成長で具体的にGDP1000兆円っていうのはわかるんですが、この成長率あるいは賃上げ率と、ニュースでもよく出てきます、このGDPあるいは労働生産性・賃金、ここはニュースとかでも国民の皆さんがよく知るところだと思います。

今日の読売新聞のオンラインで、4月の勤労統計で前年比またマイナス、4ヶ月連続マイナスだというニュースが出ておりましたけど、そういう部分では、このGDPの成長あるいは労働生産性・賃金成長、こういった部分を含めて、内需に及ぼす具体的な効果について教えていただきたいと思います。

井上審議官: お答え申し上げます。今回の試算の結果の詳細でございますけれども、人口減少下におきまして、官民目標の国内投資2040年に200兆円と、こういうことが実現すると、こういうことを前提に計算をいたしますと、資本装備率が上昇することで、労働生産性が2040年にかけて年率で3.7%上昇していく、それに見合う形で賃金は年率で3.3%上昇していくと、こういう見通しを示しているところでございます。

企業による国内投資と賃金上昇に裏付けられた家計消費も増大してまいりますので、それが牽引する形で実質GDPでいきますと、2040年にかけて年率で1.7%上昇していくということでございまして、この1.7%を内需と外需にその寄与度を分解をいたしますと、内需の寄与度が1.3%、外需が0.4%という形で分解できますので、内需の貢献が成長の大部分という推計結果となってございます。

田中昌史議員: ありがとうございます。現状が、現状の内需が0.33で、今お話しした1.3%という内需が非常に伸びていくと、おそらく外需を内需がしっかり上回っていく経済がその先にあるというお話だったと思います。内需の中で、日本の企業・事業者がしっかりと収益をしっかり上げられて上がっていくっていう未来を、ぜひ作っていただきたいなと思っております。

実質賃金向上への課題

最後一問飛ばしまして、一番最後の質問であります。国民の皆さん方が豊かさを実感できる社会を実現するためには、私はあちこちで言ってますが、とにかく実質賃金をいかにプラスに転換させるのかということは極めて大事であります。

この実質賃金の上昇率の要因分解を見ますと、労働生産性の上昇については、別に決して他国に劣位を取っているわけではないということでありますが、この交易条件の悪化が大きくマイナスに寄与しているものと思います。この交易条件の悪化について、今後経産省としてどういうふうに取り組まれていくのか伺いたいと思います。

井上審議官: お答え申し上げます。ご指摘の交易条件でございますけれども、過去30年間、交易条件は輸出物価を輸入物価で割ったものでございますので、まず輸入物価の方ですけれども、資源等の価格が上昇する中で、それを日本としては輸入せざるを得ないという状況。一方、輸出価格でございますけれども、製品・サービスの輸出価格は十分上げられなかったということで、日本は交易条件が悪化してきたという状況にございます。

交易条件の改善のためには、輸出物価の上昇を通じた日本全体の価格転嫁ができるよう、成長投資による高付加価値化等が必要となると考えております。

具体的には、企業による成長投資・事業ポートフォリオの組み替えやデジタル化を支える基盤インフラの確保、AIデータを活用した新産業の創出、戦略的に重要な技術領域の特定と事業化までの一気通貫支援等による持続的なイノベーション創出に向けたエコシステムの形成等に取り組んでいく必要があると考えてございます。

田中昌史議員: ありがとうございました。しっかりとした高品質な製品を適正な高価格でしっかりと販売、売っていける、外国にも輸出していけるということは非常に大事だと思います。デフレからの完全にマインド脱却をしっかりしていかなきゃいけないと考えているところでありまして、ただ、これは事業者の皆さん方、価格転嫁が今進んでいますけども、先ほどデータをお示ししたとおり、実質賃金が下がっているってことは、使えるお金がないという、国民の懐が消費に回して付加価値にしっかりとお金を払える余裕が国民の手元にないっていうことは、これも現実・事実なんだと思います。

そういった観点で考えると、先ほどの官民投資200兆円、これもできるだけ早く進めていただいて、経済をしっかりと成長しながら、国民の所得をしっかりと引き上げて、実質賃金をプラスに持っていかれるよう、経済産業省としても頑張っていただければと思います。

以上で質問を終わります。ありがとうございました。

田中まさし(PT)議員が事業再生法案について質疑|経済産業委員会

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