川崎市長が副大臣に地域医療の維持へ緊急対応求める
令和7年7月10日、全国20の政令指定都市で構成される指定都市市長会を代表して福田紀彦川崎市長が厚生労働省を訪れ、仁木博文厚生労働副大臣に対して「物価高騰等を踏まえた適切な診療報酬改定等に関する指定都市市長会要請」を行いました。面談は同日午前10時40分から10時55分まで、中央合同庁舎第5号館の副大臣室で実施されました。
医療機関の経営状況が深刻化
要請文によると、少子高齢化が進展する中で持続可能な地域医療提供体制の確保が重要な課題となっている一方、医療機関は国が定める全国一律の公定価格である診療報酬を基本として経営を行っているため、長期化する物価高騰や人件費上昇による経費増の影響を独自に収入に転嫁することができず、経営基盤の安定化が非常に困難な状況に追い込まれています。
特に入院医療機関である病院は、提供している医療の内容や施設規模の大きさから、医薬品費・診療材料費・光熱費の高騰や人件費上昇の影響を受けやすく、大きな負担を強いられています。人口が集中している大都市が含まれる医療圏域においては、それらの負担がより増大し、病院の経営を圧迫している状況です。
現行制度では対応不十分
直近の令和6年度診療報酬改定では、改定率が+0.88%にとどまり、ここ数年の大幅な物価高騰や人件費上昇に見合ったものになっていません。
国の令和6年度補正予算で創設された重点支援地方交付金や、令和7年度の入院時の食費基準額の引上げなどの措置が講じられても、依然として厳しい病院経営が続いていることに変わりがない状況です。
地域医療体制の維持に危機感
要請文では、こうした経営状況が続くことで、救急・小児・周産期・災害・精神などの地域に必要な医療を提供できる病院が少なくなっていくことへの危惧も示されています。
適切な診療報酬改定が行われなければ、医療従事者の確保、情報セキュリティの確保など、課題が多い病院の経営が立ち行かなくなることはもとより、住民が求める地域医療の提供体制を維持することができなくなるとしています。
具体的な要請内容
指定都市市長会は以下の2点について、その実現を強く求めています。
1. 柔軟かつ速やかな対応 物価高騰等の現下の社会経済情勢が、地域における社会保障サービスの中核となる医療機関の経営に甚大な影響を及ぼしていることから、地域医療を守るため、入院基本料をはじめ、診療報酬改定の早期実施や臨時的な診療報酬加算の創設など、物価高騰や人件費上昇に柔軟かつ速やかに対応すること。
2. 直接的な支援措置 上述の適切な制度改正が実施されるまでの間は、国から直接の補助や新たな交付金の創設などにより、地域に必要な医療を安定的かつ継続的に提供していくための支援を行うこと。
指定都市市長会による今回の要請は、全国の大都市圏における医療提供体制の維持に向けた切実な訴えとして注目されます。
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