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障害者施設の地域移行促進議論|障害者支援施設在り方検討会

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厚生労働省は8月20日、第3回「障害者の地域生活支援も踏まえた障害者支援施設の在り方に係る検討会」を開催し、障害者支援施設の今後の方向性について議論しました。検討会では、前回までの議論を踏まえた修正案が示され、委員からは意思決定支援の充実や待機者実態把握の必要性について活発な議論が交わされました。

脱施設化ガイドライン踏まえた基本方針

検討会では、国連障害者権利委員会が示した脱施設化ガイドラインの「施設の典型的要素」を減らしていく取り組みが重要議題となりました。資料では、「介助者を他人と共有することが義務付けられている」「日々の決定をコントロールできない」「個人の意思や希望に関係なく日常生活が厳格である」などの要素が明記されました。

特定非営利活動法人全国地域生活支援ネットワークの岡部浩之副理事長は「障害者施設は地域生活への移行を支える通過型・循環型の拠点であるべき」と強調し、基本的考え方への明記を求めました。

意思決定支援をめぐる議論

利用者の意思・希望の尊重について、複数の委員が制度改善を求めました。一般社団法人全国地域で暮らそうネットワークの岩上洋一代表理事は「施設は社会資源として必要だが、そこで働く人たちの意識改革が求められる」と指摘し、法人及び職員の価値変容の必要性を訴えました。

当事者構成員の横川豊隆氏は自身の体験を踏まえ、「グループホームで7年暮らした後、一人暮らしを希望するようになった。同じ障害のある人同士のサークル活動を通じて、憧れの気持ちから一人暮らしの意思が形成された」と報告しました。ピアサポートによる意思形成支援の重要性を強調しました。

「可能な限り」表現の削除求める声

資料2(障害者支援施設の在り方に関するこれまでの議論のまとめ案)では利用者の意思・希望の尊重について「支援においては利用者の人格を尊重し、可能な限りパターナリズムが排除されなければならない」と記載されていますが、複数の委員が「可能な限り」の削除を求めました。

社会福祉法人全国社会福祉協議会全国社会就労センター協議会の中尾富嗣常任協議員は「一部のパターナリズムを認めるような表現になってしまう。推定判断した意思決定がパターナリズムとは思わないので、『可能な限り』はなくしてもいい」と主張しました。

事務局は「他の利用者との関係や公共の利益に反する場合に、支援者が手助けする必要が出てくる可能性があるため表現を入れた」と説明しましたが、「そういう場面は障害のあるなし関係ない話であれば削除することもあり得る」との見解も示しました。

待機者調査の課題と自治体格差

施設待機者の実態把握について、自治体間の取り組み格差が明らかになりました。資料2によると、約半数の自治体が調査自体を実施していない現状にあります(資料2 p.12)。

品川区福祉部障害者支援課の松山香里課長は「品川区では相談支援専門員を通じて実態量と質ともに把握した数字を計画に反映している」と報告する一方、「調査を実施していない自治体があることに驚いた。各自治体が待機者数の量と質について実態に合わせて把握できるよう検討を深める必要がある」と指摘しました。

特定非営利活動法人DPI日本会議の今村登事務局次長は「待機者が分からないのに計画は立てられない。相談支援専門員が将来の暮らしについて考えないで利用計画を立てることはないので把握できる」と主張しました。

療養介護の特別な課題

公益社団法人日本重症心身障害福祉協会の児玉和夫理事長は、療養介護利用者の地域移行について独自の課題を提起しました。「療養介護での入所が必要な場合は、地域生活が限界に至った段階の入所であり、それはその地域の限界でもある。その方々を再び地域にというときには、背景となっている限界を解決するための条件を地域が備えていく必要がある」と述べ、地域の医療・看護体制整備の重要性を強調しました。

報酬制度改善への要望

神奈川県福祉子どもみらい局福祉部障害サービス課の髙橋朋生課長は、昼夜分離推進について「外部の通所先に利用者が通うと経営の観点では減収となり、囲い込みのような状態に陥ってしまう懸念がある」と指摘しました。地域移行を促進するための報酬見直しの必要性を訴えました。

聴覚障害者への配慮求める意見

一般財団法人全日本ろうあ連盟からは書面意見が提出され、「きこえない・きこえにくい者や知的障害を併せ持つ重度聴覚障害者に対する手話言語で対応に特化した施設や専門性の高い施設、人材育成・確保が不可欠」との意見が示されました(資料3 p.3)。

今後の検討方向

検討会では、本日の議論を踏まえた最終報告書案の作成に向けて、次回会議での取りまとめを予定しています。小澤温座長(長野大学社会福祉学部教授)は「どこまで反映できるか、場合によってはこの報告書よりもっと広い視野でやらなきゃいけないのではないかということもある」と述べ、継続的な検討の必要性を示唆しました。

検討会では、障害の程度や年齢に関わらず本人の意思を尊重した地域移行の実現に向け、制度面・実践面の両面からの改革議論が今後も継続される見通しです。

▶︎https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_61807.html

障害者施設の地域移行促進議論|障害者支援施設在り方検討会

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