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福祉部会で身寄りのない高齢者支援を議論|新事業創設案を提示

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厚生労働省は9月8日、第29回社会保障審議会福祉部会(部会長:菊池馨実・早稲田大学理事/法学学術院教授)を開催しました。今回の部会では、「地域共生社会のさらなる展開」と「身寄りのない高齢者等への対応および成年後見制度の見直し」の2点が中心議題として取り上げられました。

地域共生社会の展開と包括的支援体制

事務局からは、地域共生社会の中間取りまとめを踏まえた今後の検討課題が示されました。現状として、市町村における包括的支援体制の整備には地域間で差があること、また重層的支援体制整備事業については評価や検討の在り方を見直す必要があること、さらに生活困窮者自立支援制度と若者支援の連携が十分に進んでいない状況などが論点として提示されました。

過疎地域等での新たな仕組み

議論では、人口減少や担い手不足が深刻な過疎地域における支援体制についても取り上げられました。高齢、子ども、障害、生活困窮分野の相談支援・地域づくり事業を一本化し、機能強化を図る「機能集約アプローチ」が提案されました。

高橋淳・群馬県健康福祉部福祉局長(全国知事会・山本一太群馬県知事代理)は「この仕組みはコーディネーター役にかなり左右される部分が大きく、俗人性の高い仕組みになってしまう懸念がある。全国レベルでの人材育成プログラムの構築を国に要望したい」と指摘しました。

宮本委員からのAI活用への言及

宮本太郎・中央大学法学部教授は「今多くの人がまず相談するのはChatGPTです。このAIを包括的支援体制の事業が仲間にするのかライバルにしてしまうのか、今まさにその岐路だ」と述べ、AI活用の重要性を指摘しました。また「重層事業を作ることが目的化すると失敗する。包括的な支援体制をどう作るかをまず考える必要がある」と強調しました。

財政支援への懸念

杉浦隆・刈谷市福祉健康部政策官(全国市長会・稲垣武刈谷市長代理)は「重層的支援体制整備事業について、国は今年度多機関協働事業等における交付基準額の減額を行うなど補助の見直しが行われている。こうした補助の減少により、すでに事業を開始している市町村において持続的な事業運営に影響が生じることが懸念される」と述べ、財政支援の充実強化を求めました。

身寄りのない高齢者等への対応と新たな事業の検討

続いて、単身高齢者世帯の増加を背景とした支援策が議題となりました。事務局からは、既存の「日常生活自立支援事業」に加え、入院・入所手続き支援と死後事務支援を行う新たな「第二種社会福祉事業」の創設案が示されました。

対象者については「頼れる身寄りがいない高齢者等」を基本としつつ、家族の有無だけで一律に線引きしない方針が示されました。また、一定割合以上を無料または定額で利用できる仕組みの導入も論点とされました。

社協からの懸念表明

鳥田浩平・東京都社会福祉協議会副会長/常務理事は、関東ブロック19都道府県社協での議論を踏まえ、5つの懸念を表明しました。「身寄りのない高齢者等への対応は福祉の領域を超えた多様な主体によって取り組むべき課題であり、市町村を主体としながら都道府県及び市区町村の実情に応じた支援体制を構築する必要がある」と述べました。

また「この対応は現行の日常生活自立支援事業の支援の対象と支援内容が異なり、事業の実施に民事法等の高度な知識・専門性が求められることから、日常生活自立支援事業とは別の新たな枠組みの実施も含めて検討する必要がある」と指摘しました。

専門職の位置づけに関する要望

中村和彦・日本ソーシャルワーク教育学校連盟会長は「地域共生社会施策においては社会福祉士や精神保健福祉士という固有名称はほとんど登場せず、相談支援人材といった抽象的な表現にとどまっている。地域共生社会を担う中核人材として社会福祉士を政策文書に明確に位置づけていただきたい」と要望しました。

名称への懸念

山下康・日本社会福祉士会会長は「身寄りがあるないということではなく、身寄りがないということが問題になるのは社会構造上の問題である。社会的に孤立している高齢者への支援ではないかと思っている」と述べ、支援対象の名称について検討を求めました。

成年後見制度の見直し

成年後見制度については、現在法的根拠のない「中核機関」を「権利擁護支援推進センター」として制度上明確化する案が示されました。職員の守秘義務の明確化や、個別事案に係る会議体の設置についても制度上位置づける方針が示されました。

今後の展望

今回の福祉部会では、地域全体で支える包括的体制の強化とともに、身寄りのない高齢者への具体的支援制度の検討が大きな焦点となりました。委員からは制度の実効性や財政的持続可能性、専門職の役割明確化など、多岐にわたる課題が指摘され、今後の制度設計に向けた活発な議論が展開されました。

▶︎第29回社会保障審議会福祉部会

福祉部会で身寄りのない高齢者支援を議論|新事業創設案を提示

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