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人工膝関節全置換術(TKA)後の不定愁訴に対する評価と実践的アプローチ

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「TKAをしたのに、なんかスッキリしない…」

そんな声を臨床で聞いたことはありませんか?

TKA後の回復は順調でも、“違和感”や“思うように動かせない感覚”が残る方は少なくありません。

今回は、その“原因がはっきりしない違和感=不定愁訴”に対して、構造・機能・心理など多角的に読み解き、現場で明日から使える視点とアプローチをご紹介します。

① TKA後の満足度と不定愁訴の実態

人工膝関節全置換術(TKA)は、変形性膝関節症や関節リウマチなどの末期膝疾患に対し、高い疼痛軽減効果と機能改善をもたらす術式として広く普及しています。その一方で、術後の患者満足度は80〜85%とされ、残る15〜20%が「想像より良くならなかった」と感じているのも事実です(Baker et al., 2007)。

特に以下のような明確な構造障害が見られないにもかかわらず、機能的違和感や運動への不安を訴えるケースは臨床で多く、「不定愁訴」として扱われがちです。

  • 階段昇降の不安感
  • 深屈曲時の詰まり感
  • 立ち上がり動作における引っかかり感
  • 可動域制限や筋力低下がないのに動作がしっくりこない

これらは活動量や社会参加への心理的バリアとなり、長期的にはQOL(生活の質)の低下を招くため、早期発見と適切な介入が重要となります。

② 滑走不全と脂肪体・滑液環境の影響

TKA後の「詰まり感」「引っかかり感」などの違和感は、滑走不全および関節潤滑の低下に起因していることが多く、見逃されやすい要素です。

脂肪体(膝蓋下)はTKAにおいて部分または全切除されることが多く(Meneghini et al., 2017)、術後にはその周囲組織が瘢痕化しやすくなります。

さらに、人工関節は本来の滑膜組織を持たないため滑液の分泌が低下し、関節内潤滑は生体関節よりも劣るとされています(Nakamura et al., 2014;Saikko et al., 2001)。

このような滑走・潤滑の問題は、以下のような自覚症状として現れやすくなります

  • 深屈曲時の「詰まり感」
  • 屈伸中の「引っかかり」や「異物感」
  • 膝蓋下の「張り」や「こわばり」

これらは可動域・筋力・X線像といった通常の評価項目では捉えにくい要素であり、 理学療法士による触診・誘導を通じた動的評価が重要です。

③ ボディイメージの再構築と運動制御の再学習

TKA後の回避行動や不安感は、術前の痛み記憶や運動習慣の崩れから生じ、以下のような運動パターンの乱れを招きやすくなります。

  • 大腿四頭筋の活動遅延と股関節主導性の喪失
  • 健側優位の歩行パターン固定
  • 重心バランス・荷重感覚の左右不均衡

これらは、身体の一部としての“膝の認知”が再構築されていないことに起因しており、機能回復だけでなく、身体感覚の再学習(ボディイメージの再構築)が重要です。

④ 実践的アプローチと理学療法戦略

理学療法士が現場で即座に取り入れられるアプローチとして、以下の運動を推奨します 

  • 片脚立ち(壁際で):体幹と中殿筋の再教育
  • 椅子からの立ち座り運動:股関節主導の運動誘導
  • ヒップリフト:大殿筋・ハムストリングス強化
  • 横向き脚上げ運動:中殿筋再教育(バンド使用可)
  • 段差昇降:荷重応答と膝タイミングの再構築

さらに滑走不全には、以下のような介入が有効です

  • 膝蓋骨周囲(膝蓋下脂肪体など)への徒手的モビライゼーション
  • 屈伸反復運動(非荷重・荷重下)
  • 荷重下での小可動域運動

これらにより関節の潤滑環境を最適化し、感覚的な違和感の軽減が期待されます。

⑤ 正座や深屈曲への現実的対応

人工膝関節は構造上130度前後までの屈曲を想定しているものの、正座やあぐらといった深屈曲動作はインプラントに過度なストレスを与える可能性があります(Bellemans et al., 2002)。

以下のような現実的な指導が重要です

  • 和式生活の見直し
  • 立ち座り時の膝負担軽減
  • 正座に代わる座位姿勢の提案

文化的背景に配慮しつつ、インプラント保護を前提とした生活指導が求められます。

⑥ 統合的視点が満足度を左右する

TKA後の不定愁訴は、以下のような多層的因子が複雑に絡み合って生じています。

  • 解剖学的変化(脂肪体切除・潤滑環境)
  • 機能的障害(筋力・協調性・可動域)
  • 認知的問題(痛み記憶・運動不安)
  • 感覚的違和感(滑走性・固有受容)
  • 生活動作の再適応困難(正座・階段昇降)

これらを「ひとつの評価軸」で捉えることは難しく、構造・機能・心理・感覚・生活環境を統合的に見立てる視点が求められます。そのうえで「再び自分の膝を信じて使えるようになる」過程を支えることが、我々セラピストの最終的な役割ではないかと考えています。

参考文献

  1. 1. Baker PN, et al. (2007). The role of pain and function in determining patient satisfaction after total knee replacement. JBJS Br, 89(7), 893-900.
  2. 2. Meneghini RM, et al. (2017). The effect of patellar and fat pad resection on outcomes in TKA. J Arthroplasty.
  3. 3. Swanson C, et al. (2009). Factors influencing the long-term satisfaction in total knee arthroplasty. Clinical Orthopaedics.
  4. 4. Bellemans J, et al. (2002). Patellofemoral kinematics in TKA: influence of the posterior cruciate ligament. Clinical Orthopaedics.
  5. 5. Nakamura S, et al. (2014). Synovial fluid changes after total knee arthroplasty. The Knee.
  6. 6. Saikko V, et al. (2001). Lubrication of artificial joints: Tribological aspects. Acta Orthop Scand.

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