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「診療所・薬局は黒字、病院へ再配分を」支払側が主張──2026年度改定へ議論開始、補正予算では賃上げ支援金を支給

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中央社会保険医療協議会(中医協)総会が2025年12月10日(水)に開催され、政府が決定した「令和7年度(2025年度)補正予算案」における医療分野の支援策の詳細報告と、令和8年度(2026年度)診療報酬改定に向けた支払側・診療側双方の意見陳述が行われました。

今回示された補正予算案では、病院や訪問看護ステーション等に対する具体的な支援金額が明らかになったほか、次期改定に向けた議論では、早くも「財源の配分」を巡って支払側と診療側の意見が真っ向から対立する展開となりました。当日の議論の模様をレポートします。

病院1床あたり約20万円、訪看は1施設約23万円の支援へ

厚生労働省事務局は、閣議決定された令和7年度補正予算案のうち、厚生労働省関係の「医療・介護等支援パッケージ」として総額1兆3,649億円(うち医療分1兆368億円)を計上したことを報告しました。

特に注目されるのは、物価高騰と賃上げに対応するための「医療分野における賃上げ・物価上昇に対する支援(5,341億円)」です。事務局より、各医療機関への具体的な交付額(目安)が以下の通り示されました。

【主な交付額の目安】

病院:1床あたり 計19.5万円(賃金分8.4万円+物価分11.1万円)
※救急車の受入件数や手術件数等に応じた加算(500万円〜2億円)あり

有床診療所:1床あたり 計8.5万円(賃金分7.2万円+物価分1.3万円)

無床診療所・歯科診療所:1施設あたり 計32.0万円(賃金分15.0万円+物価分17.0万円)

訪問看護ステーション:1施設あたり 計22.8万円(賃金分22.8万円)
※物価高騰分は介護報酬側の予算で措置されるため、医療分は賃上げのみの計上

保険薬局:店舗数等に応じて傾斜配分(1施設あたり12.0万円〜23.0万円)

この支援金の使途について、支払側(1号)委員の飯塚敏晃委員は「この賃上げ分の支援額は医療機関に全てお任せする形なのか、あるいは(職種間で)重点的に配分される計画になっているのか」と質問を投げかけました。

これに対し、医政局総務課長は、「医療機関が従事者の賃金を3%分、半年間引き上げられる規模で積算している」とした上で、「実際にどの従事者にどれくらい充てるかについては、各医療機関にお任せすることを基本的な制度設計として考えている」と回答しました。

また、診療側(2号)委員の長瀬清委員からは、「病院は1床あたりだが、診療所などは1施設あたりとなっており、規模の評価は考えずに支援するのか」との質問が出されました。医政局総務課長は「緊急的な支援を現場に早くお届けする観点から、ある程度丸めた形(施設単位)でやることも必要」と述べ、スピード感を重視した対応であることを説明しました。

2026年度改定へ「火花」散る──診療所・薬局の黒字を巡り攻防

続いて、2026年度(令和8年度)診療報酬改定に向けた議論のキックオフとして、支払側・診療側双方が基本的な見解を表明しました。

支払側:「診療所・薬局は黒字。病院へ財源を回すべき」

支払側(1号)委員の松本真人委員は、直近の第25回医療経済実態調査の結果を引き合いに出し、「一般病院は赤字だが、一般診療所や歯科診療所、法人の薬局はいずれも5%程度の黒字であり、経営状況に格差がある」と指摘しました。その上で、基本診療料の一律引き上げは「患者負担と保険料負担の上昇に直結し、非効率的な医療を温存することになるため妥当ではない」と断じ、「診療所・薬局から病院へ財源を再配分するなど、硬直化している財源配分を柔軟に見直すこと」を強く要望しました。

診療側:「倒産が過去最多。財源の付け替えではなく『真水』が必要」

一方、診療側(2号)委員の座間常利委員は、「医科・歯科医療機関および薬局等は経営状況が著しく逼迫しており、閉院や倒産が過去最多のペースとなっている」と現状の厳しさを訴えました。

座間委員は、他産業の賃上げ率(5%超)に対して医療界が追いついておらず、人材流出が止まらない現状を懸念。「これまで『適正化』という名の下で社会保障費は削られ続けてきた」と述べ、財源の枠内でのやりくりではなく、「財源を純粋に上乗せするいわゆる『真水』による思い切った対応が必要であり、大幅なプラス改定が求められる」と主張しました。

今後の展開

今回の中医協総会では、補正予算による一時金的な支援の枠組みが固まりましたが、その後の質疑応答でも支払側(1号)委員の小坂真二委員が「賃上げすれば翌年度以降も給料を下げるわけにはいかない。その部分は次の診療報酬改定で確保されるのか」と懸念を示す場面がありました。これに対し厚労省事務局は「改定率は今後内閣において決めること」と述べるにとどまりました。

リハビリテーション専門職を含む医療従事者の処遇改善が、一時的な補正予算にとどまるのか、それとも2026年度改定で恒久的な財源として確保されるのか。支払側が主張する「診療所から病院への財源移行」と、診療側が主張する「全体の大幅底上げ」のどちらに議論が傾くのか、次期改定に向けた攻防がいよいよ始まります。

▶︎中央社会保険医療協議会 総会(第634回) 

「診療所・薬局は黒字、病院へ再配分を」支払側が主張──2026年度改定へ議論開始、補正予算では賃上げ支援金を支給

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