2026年度(令和8年度)診療報酬改定の本体部分を+3.09%とする方針を固め、24日の予算大臣折衝を経て正式に確定した。3%超えは1996年度以来30年ぶり。リハ専門職を含む医療関係職種に対し、令和8・9年度それぞれで3.2%のベースアップを実現する方針が盛り込まれた。物価対応では病院+0.49%に対し医科診療所+0.10%と、施設類型間で明確な差がつけられている。

改定率+3.09%の内訳——賃上げ・物価対応が柱に
今回の改定は、令和8年度と令和9年度の2年度平均で+3.09%。単年度でみると、令和8年度は+2.41%、令和9年度は+3.77%となる。
内訳は以下の通り。
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改定率の内訳
賃上げ分
+1.70%
医療従事者の賃金引上げに対応した改定
物価対応分
+0.76%
医療材料等の物価高騰への対応
食費・光熱水費分
+0.09%
入院時の食費・光熱水費の上昇に対応
経営環境悪化への緊急対応分
+0.44%
医療機関の経営環境悪化への緊急対応
適正化効率化
▲0.15%
後発医薬品の使用推進等による適正化
その他改定分
+0.25%
上記以外の改定項目
薬価は▲0.86%、材料価格は▲0.01%で、薬価等全体では▲0.87%の引き下げとなった。
リハ職含む医療関係職種、ベースアップ3.2%を支援
賃上げ分+1.70%について、政府資料では「令和8年度及び令和9年度において、それぞれ+3.2%分のベースアップ実現を支援する」と明記された。
対象となる職種は、令和6年度改定でベースアップ評価料の対象とされた「看護職員、リハビリテーションを担う職員、病院薬剤師その他の医療関係職種」。PT・OT・STは引き続きベースアップ評価料の対象として位置づけられている。
看護補助者と事務職員については、他産業との人材獲得競争を踏まえ、5.7%の上乗せ措置が講じられる。
病院に手厚く、診療所は抑制——物価対応の配分構造
物価対応分+0.76%のうち、令和8年度以降の物価上昇への対応として+0.62%が充てられる。施設類型ごとの配分は次の通り。
施設類型別の配分
病院最大
+0.49%
入院医療を提供する病院への重点配分
医科診療所
+0.10%
外来診療を中心とする診療所への配分
歯科診療所
+0.02%
歯科医療機関への配分
保険薬局
+0.01%
調剤を行う薬局への配分
経営環境悪化への緊急対応分+0.44%についても、病院+0.40%に対し医科診療所+0.02%と、病院への配分が20倍の差となっている。
資料では「高度機能医療を担う病院(大学病院を含む。)」について、医療技術の高度化や価格競争原理の働きにくい医療機器調達の観点から、特例的に+0.14%を上乗せする方針も示された。
賃上げの「実効性確保」へ——報告義務化を検討
今回の改定では、賃上げが確実に現場に届く仕組みづくりが強調された。
令和6年度改定で入院基本料や初・再診料により賃上げ原資が配分された職種(40歳未満の勤務医師、事務職員等)についても、ベースアップ評価料対象職種と同様に「実際に支給される給与(賞与を含む。)に係る賃上げ措置の実効性が確保される仕組みを構築する」と記載。
MCDB(医療法人の経営情報データベース)における職種別給与・人数の報告義務化を含め、令和8年中に必要な見直しについて結論を得るとしている。リハ職の処遇改善が「見える化」される可能性がある。
医師偏在対策——外来医師過多区域で診療報酬減算へ
改正医療法に基づき、外来医師過多区域において無床診療所の新規開業者が都道府県知事からの要請に従わない場合、診療報酬上の減算措置を講じることが盛り込まれた。
医師多数区域での更なるディスインセンティブ措置や、重点医師偏在対策支援区域における医師手当事業に関する診療報酬での財源確保については、令和10年度改定で結論を得る方針。
適正化項目——在宅医療・訪問看護も対象に
適正化・効率化による▲0.15%の内訳として、以下が挙げられた。
- 後発医薬品への置換え進展を踏まえた処方・調剤に係る評価の適正化
- 実態を踏まえた在宅医療・訪問看護関係の評価の適正化
- 長期処方・リフィル処方の取組強化等による効率化
訪問リハビリテーションへの影響については、今後の中医協での議論を注視する必要がある。
令和9年度に「更なる調整」の余地——物価動向次第で加減算も
今回の改定には、令和9年度予算編成での調整余地が残された。
「実際の経済・物価の動向が令和8年度診療報酬改定時の見通しから大きく変動し、医療機関等の経営状況に支障が生じた場合」には、賃上げ分・物価対応分について「加減算を含め更なる必要な調整を行う」としている。
令和8年度中に医療機関の経営状況等について調査を実施し、その結果を踏まえて判断する。
まとめ・今後の展望
令和8年度診療報酬改定は、本体+3.09%という30年ぶりの大幅プラス改定で決着した。リハビリテーション専門職は引き続きベースアップ評価料の対象職種として位置づけられ、令和8・9年度それぞれで3.2%のベースアップ実現が目標とされる。
改定施行は令和8年6月(薬価は同年4月)。今後、中央社会保険医療協議会(中医協)での具体的な点数設定の議論に移る。在宅医療・訪問看護関係の適正化や、賃上げの実効性確保に向けた報告制度の詳細など、リハ職に直結する論点については引き続き注視が必要だ。






