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訪問リハ・通所リハの提供実態を「回数」で把握へ──令和8年度介護事業経営実態調査が了承

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令和8年度介護事業経営実態調査の実施案が、1月29日の社会保障審議会・介護事業経営調査委員会で了承されました。今回の調査では、訪問リハビリテーション・通所リハビリテーションを含む全サービスについて、サービス提供実態を「延べ回数」で把握する設計へと見直されます。サービス付き高齢者向け住宅等への提供状況、移動負担、介護テクノロジーの維持費用など、リハ職の働き方に直結するデータが、次期介護報酬改定の基礎資料として収集されます。

訪問リハは「抽出率2分の1」、リハ系サービスを重点把握

調査は令和8年5月に実施され、令和7年度の決算額を対象とします。結果は同年10月頃に公表予定で、令和9年度介護報酬改定の議論に活用されます。

注目すべきは抽出率の設定です。訪問リハビリテーションは2分の1。訪問介護(8分の1)や訪問看護(10分の1)と比較しても高い水準であり、訪問リハの経営・提供実態を重点的に把握する意図がうかがえます。通所リハビリテーションも5分の1と、リハ系サービスには比較的厚くサンプルが確保される設計です。

なお、訪問介護については有効回答率が全体平均を下回る状況を踏まえ、抽出率を従来の10分の1から8分の1へ引き上げます。事務局は「予算との兼ね合いも踏まえ、サンプル数の確保を図りたい」と説明しました。

サ高住・有料老人ホームへの提供を「実数」で可視化

今回の調査で最も大きな変更点が、訪問・通所系サービスの提供実態の把握方法です。

訪問リハを含む訪問系サービスでは、以下の項目を実数で記載する設計に見直されます。

  • 延べ訪問回数
  • そのうちサービス付き高齢者向け住宅・有料老人ホーム等に居住する利用者への訪問回数

従来の調査では「割合」での把握にとどまっていましたが、今回からは提供構造をより精緻に分析できる形となります。

通所リハについても同様の変更があります。従来の「延べ利用者数」から「延べ利用回数」を用いた調査に切り替わり、サ高住等の利用者への提供回数も把握対象に加わります。通所系サービスは車による送迎が基本のため、訪問系のような移動手段の選択肢は設けず、送迎にかかった時間を把握する設計です。

移動時間・移動手段の把握も継続

訪問系サービスでは、令和7年度概況調査で導入された移動に関する調査項目が引き継がれます。

  • 訪問先の状況
  • 移動手段
  • 移動時間

訪問リハにおける移動負担とサービス提供量の関係を検証するための基礎データとして位置づけられています。

介護テクノロジー、「機器別」にランニングコストを把握

リハ現場にも関わる論点として、介護テクノロジーの費用把握があります。

令和7年度概況調査では、介護ロボットやICT等の導入状況と保守・点検費用を調査する項目が新設されました。今回の実態調査ではこれを発展させ、機器別にランニングコストを記載する方式へと見直します。

複数機器を一括契約している場合など、機器別の金額記載が困難なケースでは合計欄への記入も可能とし、漏れのない把握を目指す設計です。

福祉医療機構の緒方武虎氏は「導入後のランニングコストを詳細に把握することで、導入を検討している事業者の判断材料になる。負担が大きいのであれば、導入時の支援だけでなく、運用段階での支援策検討にもつながる」と期待を示しました。緒方氏は月額利用料やリース料の記入方法についても確認し、事務局は「年額換算で記入いただく。記入要領で補足する」と説明しています。

補助金効果の検証へ、収入内訳も新設

調査票には、令和6年度・7年度の補正予算で措置された補助金収入を個別に記載する欄が追加されます。対象は「介護従事者の賃金引き上げに係る補助金」と「介護サービスの継続支援に係る補助金」。これらの補助金効果を踏まえた分析を可能にする狙いがあります。

施設系サービスでは、物価高騰を踏まえ、食費に計上される食事提供回数を把握する項目も新設。中心静脈栄養など薬品扱いとなるものは除き、食費をより精緻に把握できるよう設計されています。

委員「現場が答えられる設計か」――データ収集の難易度を確認

調査項目追加に伴う現場負担についても議論がありました。

EY新日本有限責任監査法人の泉千夏氏は「こうした質問項目を追加する際、回答データを現場でどのように収集するのか。手作業での把握なのか、システム上で出力されるサマリーなのか、担当者の主観での回答なのか。データ収集の難易度について、事前に現場へ確認しているのか」と質問。事務局は「訪問回数などの項目については事業所にヒアリングし、回答可能との確認を得ている。負担感は増えるが、回答不能な内容ではない」と説明しました。

新たに委員に着任した東京大学名誉教授の岩村正彦氏は、職員給与の調査項目について「基準内・基準外を分けられれば、残業代など職員の労働条件・処遇の一端が見える」と指摘。事務局は「現行は基準内外を問わず支払われた給与総額で把握している。事業所によっては分けていないケースもあり得る」との認識を示しました。

回収率向上へ、複数の対策を継続

直近の有効回答率は5割弱にとどまっています。事務局は以下の対策を継続する方針です。

  • 介護保険総合データベースの活用による休廃止事業所への送付削減
  • 建物情報のプレプリント対応(記入者負担の軽減)
  • オンライン調査の推奨(直近では回収の8割強が電子提出)
  • 法人本部への一括送付(希望法人向け、回収率は約8割)
  • 調査票発送時のアンケート同封による改善点把握

過去のアンケートでは「職種別の職員数・給与」「収支項目」の記入負担が大きいとの声があり、記載職種の簡素化や勘定科目の整理に反映してきたとのことです。電子調査票に経営分析の参考指標が得られる計算式を組み込むなど、回答意欲を喚起する取り組みも継続します。

まとめ・今後の展望

本調査案は委員会で了承され、同日開催の介護給付費分科会に報告されました。調査票は2026年5月に発送され、結果は同年10月頃に公表予定です。

訪問リハ・通所リハの提供実態が「回数」ベースで可視化されるのは、従来の割合把握から一歩踏み込んだ設計といえます。サ高住等への提供状況、移動負担、介護テクノロジーの維持費用など、リハ専門職の働き方に直結する論点が、令和9年度介護報酬改定にどう反映されるか。今後の議論が注目されます。

なお、本調査は政府統計のため、総務大臣の承認審査の過程で抽出率等の変更があり得ることも付言されました。

▶︎第43回社会保障審議会介護給付費分科会介護事業経営調査委員会

訪問リハ・通所リハの提供実態を「回数」で把握へ──令和8年度介護事業経営実態調査が了承

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