キャリアコンサルタントが徹底サポート

リハ職の「記録時間削減」が補助金の成果目標に──最大8,000万円、ただし返還リスクも

10829 posts

厚生労働省は令和8年2月13日、各都道府県知事に対し「医療分野における業務効率化・職場環境改善支援事業」の実施を通知しました。本事業は、病院が業務効率化のためにICT機器等を導入する際、費用の5分の4、最大8,000万円を補助する大型支援策です。特筆すべきは、リハビリテーション部門(その他コメディカル部門)が明確な対象となり、「記録作成時間の削減」や「早期リハ介入率の向上」が具体的な成果目標として設定された点です。

背景:医師の働き方改革、施行後も「現場は変わっていない」

本事業は令和7年度補正予算で措置された200億円規模の支援策です。2024年4月に医師の時間外労働上限規制が施行されましたが、民間調査では医師の約6割、看護師の約8割が「労働時間は短縮されていない」と回答。制度と現場の乖離が深刻化する中、ICT導入による業務効率化を財政面から本格的に後押しする狙いがあります。

「8,000万円」の要件は"賃上げ"と"地域貢献"

本事業の対象となるのは、令和8年4月1日時点で「ベースアップ評価料」を届け出ている病院に限定されます。診療所は対象外であり、職員の処遇改善に取り組む病院へ優先的に資源を投下する国の姿勢が鮮明です。

補助率は経費の5分の4(国が3分の2、都道府県が3分の1)で、1施設あたりの上限額は8,000万円です。

対象経費は、スマートフォンや業務用インカム、見守り機器に加え、生成AIを活用した文書自動作成支援サービスや、システム連携費用なども含まれます。

リハビリ部門のミッション:記録を減らし、介入を増やす

申請には、院長等をトップとする「業務効率化推進委員会」を設置し、最大3年間の「業務効率化計画」を作成する必要があります。

ここでリハビリテーション部門(その他コメディカル部門)に求められるのは、単なる「デジタル化」ではありません。実施要綱には、以下の「定量的かつ具体的」な目標例が示されています。

  • リハ職種の記録作成等の時間の減
  • その他医療関係職種の超過勤務時間の減
  • リハ職種による入院後早期リハ介入率の増

つまり、音声入力やAI要約ツールを導入することで、「記録時間を月●時間減らす」だけでなく、「その分で早期介入率を●%上げる」といった、臨床・経営への貢献数値が問われることになります。

現場への警鐘:「成果なし」なら返還のリスク

本事業で最も注意すべき点は、成果に対するシビアな評価制度です。

計画終了時などに国へ報告を行いますが、通知には「成果が認められなかった場合には補助金の返還を求める場合がある」と明記されています。災害等のやむを得ない事情を除き、「導入したが使いこなせず、残業も減らなかった」という結果は許されません。

また、機器の保守費用やサブスクリプション利用料などのランニングコストは原則として補助対象外です。厚労省は「ランニングコストは業務効率化によって賄われるべき」としており、導入効果でコストを回収できるだけの経営的な勝算が不可欠です。

まとめ・今後の展望

本事業は都道府県が実施主体となり、地域医療への貢献度(5疾病6事業や在宅医療の提供など)や、地域医療構想調整会議への参加状況も選定の要件となります。

2026年度診療報酬改定では、ICT活用を条件に看護職員の配置基準を1割以内で緩和する措置が初めて導入されました。補助金でICTを導入し、その効果で人員配置の柔軟化を受けるという「二段構え」のインセンティブが設計されており、病院経営におけるDX投資の意味合いは大きく変わっています。

リハビリ管理職にとっては、長年の課題である「記録業務の負担」を一気に解決する好機です。しかし、そのためには「医師・看護部門との予算枠争い」に勝ち抜き、かつ「導入後の確実な成果」を約束する必要があります。まずは自部署の業務時間を数値化し、どのICTツールがどれだけの時間を生み出せるのか、具体的なシミュレーションに着手すべきでしょう。

▶︎医療分野における業務効率化・職場環境改善支援事業について

リハ職の「記録時間削減」が補助金の成果目標に──最大8,000万円、ただし返還リスクも

最近読まれている記事

企業おすすめ特集

編集部オススメ記事