目次
- 術後1日目、ベッドサイドで思うこと
- 5つのメタ分析は何を示したか
- なぜ術前リハは効くのか
- 誰に優先すべきか
- 運動だけでは足りない
- 日本で普及しない理由
- 効果の持続性の問題
- それでも始める価値はある
- 参考文献
術後1日目、ベッドサイドで思うこと
術後リハの処方が出て、ベッドサイドに行く。患者さんは手術の傷が痛くて動けない。体力も落ちている。術前にもう少し動けていたら、と思ったことはないでしょうか。
私は何度もあります。
でも現実には、施設によっては手術が決まると安静を指示されることもあります。PTが術前に関わる機会は限られ、初対面は術後1日目というケースも少なくありません。
この常識は正しいのか。2025年前後、大規模レビューが複数出て、答えが見えてきました。
5つのメタ分析は何を示したか
2024〜2026年に出た5つの大規模メタ分析を並べます。
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BMJ 2025総論
合併症OR 0.50
186 RCT、15,684名を統合。成分ネットワークメタ分析で、運動成分を含む介入でOR 0.50、栄養成分を含む介入でOR 0.62(合併症)。運動+心理社会的介入の組み合わせで入院日数の平均差-2.44日。
私見: 効果量は大きい。ただしエビデンス確実性は低〜非常に低。
McIsaac et al. BMJ 2025;388:e081164
JAGS 2025大腸がん
入院日数・合併症減少
大腸がん手術を対象としたメタ分析。入院日数短縮、合併症減少の方向。
私見: 消化器外科との連携が鍵。術前外来でのPT介入を提案する価値あり。
Liao et al. J Am Geriatr Soc 2025
JOSPT 2025人工関節
機能・筋力・QOL改善
複数のSRとメタ分析を統合したオーバービュー。THA・TKAそれぞれについて多数のRCTを解析。
私見: 効果は短期(術後数ヶ月)に限定される傾向。術後リハとの連続性が勝負。
JOSPT 2025;55(5):344-365
JACC Advances 2026心臓
入院・ICU短縮、肺炎減少
多数のRCTを統合したメタ分析。入院日数短縮、ICU滞在短縮、術後肺炎減少の方向。
私見: 心リハチームとの協働が前提。単独では難しい。
JACC Adv 2026;5(3):102587
Cochrane 2024心臓・プロトコル
レビュー進行中
心臓手術のプレハビリに関するCochraneレビューのプロトコル。結果はまだ出ていない。
私見: 結果公表を待ちたい。心臓領域は他の研究も出ているので、そちらを参照。
Cochrane Database Syst Rev 2024 (Protocol)
5つのレビューを横断して見えてくるのは、運動介入が比較的一貫して効果を示していることです。BMJでは合併症オッズが半分になりました。大腸がん、人工関節、心臓手術でも、在院日数や合併症の改善が報告されています。
ただし、エビデンス確実性は低〜非常に低の推定が多い。効果量は大きいが、各試験のバイアスリスクや異質性が残っています。効きそうだが、確実とは言い切れない。そういう段階です。
なぜ術前リハは効くのか
術前リハの目的は、生理学的予備能を高めることです。手術というストレッサーに対して、身体がどれだけ耐えられるか。この余力を術前に引き上げておく。
フレイルとの関係がここで重要になります。フレイルは生理学的予備能の低下と、ストレスに対する脆弱性の増加を意味します。高齢の手術患者ではフレイルまたはプレフレイル状態の割合が高く、これが術後合併症のリスクを大きく高めることが報告されています。
フレイルは修正可能です。術前に介入すれば、生理学的予備能を改善し、術後12ヶ月時点でのケア依存度を下げられる可能性があります。ある後ろ向き研究では、多職種によるプレハビリテーションプログラムが患者の生理学的予備能と機能的能力を改善したと報告されています。
つまり、術前リハは単に筋力をつけるという話ではありません。手術というストレスに耐えるための身体の余力を、事前に積み増しておく。その余力が大きいほど、術後の回復が早くなる。これがメカニズムの本質です。
誰に優先すべきか
全員に術前リハを提供するのは現実的ではありません。リソースは限られています。では、誰に優先すべきか。






