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PT・OTの給与データ、なぜ2種類ある?──「賃金構造基本統計調査」と「職種別民間給与実態調査」の違いを整理する

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理学療法士・作業療法士の給与に関する公的データには、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」と人事院の「職種別民間給与実態調査」の2つがあります。どちらも民間企業の給与を調べた統計ですが、対象企業の規模も、調査の時期も、職種の分け方もまったく異なります。「同じ年のデータなのに数字が違う」のはこのためです。

そもそも何のための調査か

2つの調査は、存在する目的が根本的に違います。

◯ 賃金構造基本統計調査(厚生労働省)

日本全体の賃金構造を明らかにするための統計です。最低賃金の決定、労災保険の給付額算定、春闘の参考資料、男女間賃金格差の分析など、幅広い政策・場面で使われます。昭和23年(1948年)に始まった、日本の賃金データの基盤ともいえる調査です。

◯ 職種別民間給与実態調査(人事院)

公務員の給与を民間水準に合わせるための調査です。国家公務員は争議権や団体協約締結権が制約されており、その代償措置として人事院勧告制度が設けられています。この調査は、人事院が毎年8月に出す勧告の根拠データを得るために実施されます。


7つの違い──早見カード

⇆ 横にスワイプして比較できます

賃金構造基本統計調査

厚生労働省


目的
日本の賃金構造全体を把握する汎用統計

統計法
基幹統計(報告義務・罰則あり)

対象企業
5人以上

調査手法
郵送・オンライン(自計)
対象:約78,700事業所

調査時点
6月分

結果公表
翌年1月〜(速報)

PT/OT/STの扱い
4職種合算
(PT・OT・ST・視能訓練士)

職種別民間給与実態調査

人事院+69人事委員会


目的
公務員給与を民間に合わせる官民比較

統計法
一般統計調査

対象企業
50人以上
※R7勧告から官民比較は100人以上

調査手法
調査員が直接訪問(他計)
対象:約11,700事業所

調査時点
4月分

結果公表
同年8月(人事院勧告時)

PT/OT/STの扱い
PT・OT個別に集計
(STは対象外)


対象企業規模の違いが数字の差を生む

両調査の数値が異なる最大の要因は、対象企業の規模です。

賃金構造基本統計調査は従業員5人以上の事業所を対象としています。街のクリニックや小規模デイサービスも含まれるため、日本の賃金水準の全体像を映します。

職種別民間給与実態調査は企業規模50人以上かつ事業所規模50人以上が条件です。課長・係長といった役職段階が公務員組織と対比できる一定規模以上の事業所に限るため、相対的に賃金水準が高い層のデータになります。

ポイント:職種別民間給与実態調査のほうが数字が高く出やすい構造です。両調査の年収を単純比較しないよう注意が必要です。

調査時点の違い──4月と6月

職種別民間給与実態調査は4月分の給与を調べます。春闘の結果が反映された直後のデータを速やかに人事院勧告に活用するためです。結果は同年8月に公表されます。

賃金構造基本統計調査は6月分の給与を調べます。公表は翌年1月以降です。

同じ「令和7年」のデータでも、調査時点が2ヶ月ずれている点は意識しておく必要があります。

PT・OT・STにとって重要な違い──職種の分け方

リハビリテーション専門職にとって、最も実感しやすい違いが職種分類です。

賃金構造基本統計調査

4職種合算

PT・OT・ST・視能訓練士を
まとめて1つの小分類に。
職種ごとの給与はわからない

職種別民間給与実態調査

PT・OT個別

理学療法士・作業療法士を
それぞれ独立した職種で集計。
STは対象76職種に含まれない

PT・OT個別の給与水準を知りたい場合は職種別民間給与実態調査が有用であり、4職種全体の推移や企業規模別の傾向を把握するには賃金構造基本統計調査が適しています。

調査手法の違い──精度と範囲のトレードオフ

賃金構造基本統計調査は郵送またはオンラインで事業所が自ら記入する方式(自計)です。対象は約78,700事業所(令和6年)と広範囲ですが、記入ミスのリスクは事業所側に委ねられます。

職種別民間給与実態調査は約1,000人の調査員が事業所を直接訪問し、調査員が記入する方式(他計)です。対象は約11,700事業所と範囲は絞られますが、データの正確性は高いとされます。

広く浅くカバーするか、狭く深く精度を追求するか。両調査の設計思想がここに表れています。

コロナ禍による空白期間

職種別民間給与実態調査は、2020年(令和2年)から2022年(令和4年)まで、コロナ禍の影響で病院部門の調査が中止されていました。PT・OTのデータは令和5年から再開され、現在は3年分の連続データが蓄積されています。

賃金構造基本統計調査はコロナ禍でも毎年実施されており、データの連続性が保たれています。

まとめ──どちらのデータを見ればよいか

両調査は「民間の給与を調べる」という点では共通しますが、設計思想が根本から異なります。

PT・OT個別の給与水準を知りたい
 → 職種別民間給与実態調査(人事院)

4職種全体の推移・企業規模別の傾向を把握したい
 → 賃金構造基本統計調査(厚労省)

小規模事業所を含む全体像を見たい
 → 賃金構造基本統計調査

50人以上の事業所に限った水準を見たい
 → 職種別民間給与実態調査

数字だけを見て「年収が上がった・下がった」と判断する前に、そのデータがどちらの調査から来ているのかを確認する。それが、自分の給与水準を正しく理解するための第一歩です。

参考文献

【出典】
・厚生労働省「賃金構造基本統計調査」
・人事院「職種別民間給与実態調査」
・人事院「令和7年人事院勧告」

※本記事は両調査の制度・手法の違いを整理したものであり、個別の給与データの分析は以下の記事をご覧ください。
・賃金構造基本統計調査のデータ分析 → リハ職種の推定年収まとめ(近日配信予定)
・職種別民間給与実態調査のデータ分析 → PTOT年代別平均年収まとめ(近日配信予定)*R6年度までの調査結果はこちら

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