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協力医療機関連携・LIFE・テクノロジー、令和9年度改定を前に3つの壁──リハ職配置とLIFE算定個数の相関も明らかに

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社会保障審議会介護給付費分科会(第255回)が2026年3月30日に開催され、令和6年度介護報酬改定の効果検証調査(令和7年度調査)の結果が報告されました。令和9年4月の完全義務化まで残り1年となった協力医療機関との連携体制について、要件を満たす施設は増加傾向にあるものの、「まだ検討すら行っていない」施設が2~5割存在する実態が明らかになり、複数の委員から危機感をにじませた発言が相次ぎました。

協力医療機関との連携──進捗と深刻なギャップ

令和6年度改定で義務化された「協力医療機関の3要件」(相談対応・診療体制・入院受入)を満たす医療機関を定めている施設の割合は、介護老人福祉施設(特養)で67.9%、介護老人保健施設(老健)で83.3%、介護医療院で84.9%、養護老人ホームで60.4%でした。義務化対象の施設では昨年調査から約10ポイントの増加が確認されています。

一方で、要件を満たす協力医療機関を定めていない施設のうち、「まだ検討を行っていない」との回答が、義務化対象の施設系サービス・養護老人ホームで21.4%~50.0%、努力義務の居住系サービス・軽費老人ホームで34.6%~49.4%に達しています。定められない理由としては、施設系では「周辺に医療機関が少ない(またはない)」、居住系では「休日・夜間の対応は困難であるため提携を断られた」が上位を占め、両者に共通して「どこに相談すればよいかわからない」といった情報収集段階の課題も見られました。

加えて、施設側のアンケート結果と自治体側の把握状況との間に大きな乖離があることも浮き彫りになりました。自治体調査では、届出内容の確認を施設への聞き取り等で行っている都道府県は34.0%、市区町村全体では20.3%にとどまり、関係者等との協議・検討を行ったのは都道府県で19.1%、市区町村全体でわずか13.8%でした。自治体調査に基づく全国の連携状況(図表70)では、「集計していない」と回答した施設の割合が全施設種別で12.8%~33.4%に上り、都道府県別データ(図表72)を見ると、高知県では義務化対象のすべての施設類型で「集計していない」割合が74%~88%に達しています。

委員から噴出した危機感──「個別にヒアリングすべき時期」

全国老人保健施設協会の東憲太郎氏は、老健施設の16.7%がまだ連携できていない現状に触れ、「調査は抽出調査であり、この割合を全数に置き換えると約180施設の老健がまだ検討も行っていないことになる」と指摘。「経過措置の期間もあと1年しかない。まだ検討も行っていない施設に対し、なぜ検討していないのか都道府県を通じて個別にヒアリングを行うべき時期に来ている」と踏み込みました。

全国老人福祉施設協議会の小泉立志氏は、施設側の回答と自治体調査の間に「大きな乖離が見られる」と危惧を表明。3要件の中でも「入院の受入体制の確保が最大のネックになっている」ことを挙げ、「地理的・環境的な制約でどうしても体制確保が困難な地域については、オンライン診療等のICT活用を代替手段として柔軟に認めるなど、連携のあり方をより現実的な視点で見直していく時期に来ている」と訴えました。

全国町村会の中島栄氏(茨城県美浦村長)は、中山間・人口減少地域に医療機関が存在しない地域が多い実態に言及し、「医療機関の数が少ない地域であっても連携体制が整うよう、工夫した仕組みづくりが必要である」と求めました。

健康保険組合連合会の伊藤悦郎氏は、「経過措置が延長されることがないように、国など関係機関がしっかり対策を講じて後押ししていただきたい」と述べ、経過措置の安易な延長を牽制しました。

協力医療機関連携加算の算定状況も低調です。3要件を満たす場合に算定できる50単位/月の加算を算定しているのは、特養で37.6%、老健で58.3%、介護医療院で51.8%。算定しない理由として「定期的な会議の負担が重く、会議を行えていない」が施設系で40.3%~52.9%と突出しています。

日本医師会の江澤和彦氏は、協力医療機関連携加算の算定が芳しくない背景として、「定期的な会議の負担が重い」が最大の理由であることに触れた上で、令和8年度診療報酬改定でカンファレンス要件がかなり緩和されていることを挙げ、「介護報酬においても令和8年6月から診療報酬と合わせて同様に見直すべきだ」と主張しました。

慶応義塾大学の堀田聰子氏は、施設と医療機関の「点と点の関係性」ではなく「面でどのようにカバーするか」という視点の必要性を提起。施設内での医療ニーズへの対応として、「医療から介護へのタスクシフトの余地があるとすれば、どのようにキャパシティの育成をしていくのかも検討していく必要がある」と述べました。

LIFE関連加算──「負担感」の壁は依然厚い

資料1-2では、令和6年度改定におけるLIFE(科学的介護情報システム)関連の見直し効果が報告されました。アウトカム評価の各加算を算定していない理由として、「アセスメントが負担である」との回答がいずれの加算でも上位を占めています。

注目すべきは、リハビリテーション職員(PT・OT・ST)の常勤換算人数1人あたりの利用者数とLIFE関連加算の算定個数の関連を調査した結果、介護老人保健施設と介護老人福祉施設において、リハビリテーション職員数が充実しているほどLIFE関連加算の算定個数が多い傾向が確認された点です。

日本介護福祉士会の及川ゆりこ氏は、「アセスメントの負担感が強いことがこれだけ示されている」とし、「LIFEの実用性の向上やフィードバック機能の改善強化をお願いしたい」と要望しました。

日本介護支援専門員協会の濵田和則氏は、「現場の生の声――こうあったらいい、こうしてほしいという意見をより多く収集した上でのシステム開発をお願いしたい」と、現場起点のシステム改善を求めました。

福祉用具の貸与・販売選択制──リハ専門職の意見聴取は一定程度実現

資料1-3では、令和6年4月に導入された福祉用具4種目(つえ、歩行器、固定用スロープ、歩行補助つえ)の貸与・販売選択制について、導入後の状況が報告されました。

導入直後には販売利用者が増加したものの、令和7年4月以降は前年比で減少傾向にあります。購入を選択した主な理由は「長期利用が想定される」「貸与よりも購入の方が経済的」の順でした。購入後6ヶ月時点での使用継続率は約8割に達しています。

ケアマネジャーによる医学的意見の取得先は、主治医またはかかりつけ医が約5割でした。江澤和彦氏は「主治医やリハビリ専門職が利用者の状態を最もよく理解しているのであり、貸与か購入かの判断においては医療専門職の意見をなるべく聞くようにと取りまとめられた経緯がある」と述べ、一定程度の連携が実現していることを評価しました。

一方、保険者によって購入件数の割合に0%から2割超まで大きな差があることも示されました。規模の小さい市町村では購入割合が0%のケースが多く、地域格差が生じています。大分県国民健康保険団体連合会理事長の奥塚正典氏(中津市長)は、「制度の普及に地域格差が生じている。好事例の共有や広域的な支援体制の構築をお願いしたい」と述べました。

なお、購入を選択したことでケアプランの作成がなくなった利用者は117人と報告されており、認知症の人と家族の会の志田信也氏は、「販売後も予防的な関わりを維持できるような仕組みの構築が必要ではないか」と問題提起しました。

生産性向上──テクノロジー導入の「壁」はランニングコスト

資料1-4では、介護現場における生産性向上とテクノロジー導入の状況が示されました。居住系・入所・泊まり系における介護業務支援機器の導入率は56.4%(令和4年度10.2%)、見守り支援機器は47.2%(同30.0%)と大幅に増加しています。生産性向上推進体制加算の算定施設では、加算1算定施設の月平均残業時間は3.96時間、有給休暇取得日数は10.26日と、介護労働実態調査による平均(残業6.80時間、有給7.80日)を大きく上回る水準が確認されています。

ところが、加算の算定率は低水準にとどまっています。特養における加算1の算定率は2.8%にすぎません。テクノロジーを導入していない理由としては「導入費用が負担である」が67.9%で最多、次いで「ランニングコストが負担である」が48.8%を占めました。見守り機器は1台平均約25万円、入浴支援機器は1台平均約332万円と高額であり、踏み出せない事業所が多い実態が浮かび上がっています。

東憲太郎氏は自身が運営する老健施設を例に挙げ、「生産性向上推進体制加算の上位区分で月約10万円を算定しているが、実際にAIを活用した介護テクノロジーを導入すると月々30万円を超えるランニングコストがかかっている」と実情を明かし、「加算の算定の手間を簡素化するとともに、報酬単価を倍増させるぐらいの覚悟が必要ではないか」と迫りました。

小泉立志氏も3つの要望として、加算取得へのステップアップに向けた重層的支援の拡充、ICT機器間のデータ連携標準化の推進、そして「テクノロジー導入による効率化を単なる人件費削減の手段とするのではなく、捻出された時間をケアの質の向上や職員の研鑽に充てられるような好循環を生む制度設計」を求めました。

日本労働組合総連合会の平山春樹氏は、人員配置基準の柔軟化について「現時点で十分な検証がなされているとは言えない」とし、「テクノロジー導入をてこにした人員配置基準の緩和を進めることについては、現場の実態を十分に踏まえ慎重に進めるべき」と釘を刺しました。

特定施設における特例的柔軟化(人員配置の見直し)の届出は、令和8年1月中旬時点でわずか27施設にとどまっています。今後の届出予定についても「わからない」が43.6%、「検討予定はない」が26.7%と、広がりを見せていません。

なお、加算2を算定している事業所のうち、上位の加算1への移行について「今後検討予定」は25.4%、「検討している」は23.6%にとどまり、見守り機器の全利用者分導入(未導入理由の61.6%)やインカムの全職員分導入(同56.3%)といった要件がハードルとなっています。介護助手の活用についても39.0%の事業所が導入済みで、主な業務内容は「清掃・片付け・ごみ捨て」が84.1%で突出して多く、次いで「リネン交換・ベッドメイク」が68.7%。活用による変化として「介護職員の身体的負担軽減につながった」との回答が78.5%に上っています。

報告事項──カンファレンス要件の緩和、人員欠如の特例措置ほか

協力医療機関連携加算の要件変更(議題2)

令和8年度診療報酬改定との整合性を図る観点から、協力医療機関との定期的なカンファレンスの開催頻度が見直されます。ICTによる情報共有を行う場合は年1回以上、行わない場合は年3回以上に改められ、令和8年6月からの適用が見込まれます。

日本慢性期医療協会の田中志子氏は病院側の立場から、「電子カルテと介護記録のベンダー間の連結費用が想像を超える負担であり、情報を共有するための制度上のハードルもある。実現したくてもなかなか連携できないのが現状だ」と吐露。費用の支援やベンダーへの指導、電子カルテに関する規制緩和を求めました。

やむを得ない事情における人員欠如の特例(議題3)

診療報酬改定における取扱いと足並みをそろえる形で、突発的でやむを得ない事情により人員欠如が生じた場合、ハローワーク活用等の要件を満たす事業所・施設について、1年に1回に限り3ヶ月を超えない期間は減算を猶予する方針が示されました。令和8年6月からの適用を想定しています。

平山春樹氏は「欠如状態が続くことは残された職員に過度な負担を強いることになり、さらなる離職を招きかねない」と慎重な姿勢を示し、田母神裕美氏(日本看護協会)も「基準を満たさない状況がさらに長期間継続することを許容することについては懸念がある」と述べました。

認知症の人と家族の会の志田信也氏は、「利用者にとっては、スタッフが少ない状態でサービスの質は担保できるのかが一番の気がかりだ」と、利用者目線での懸念を表明しました。

田中志子氏は、人員数だけでなく算定に必要な有資格者が産休・育休・病休で一時的に不在となるケースについても同様の措置が必要ではないかと質問。事務局は「具体的なところについては個別にご相談いただきたい」としつつ、基本的な考え方は医療側の規定と同様とする方針を示しました。

通信機能を備えた福祉用具(議題4)

認知症老人徘徊感知機器のうち、GPS通信ユニットを内蔵し本人が携行する形態の機器について、通信機能部分も介護保険の給付対象に含めることが報告されました。ただし通信料金は給付対象外です。今後、福祉用具情報システムの改修を経て、改正通知およびQ&Aが発出される予定です。

志田信也氏は「認知症の人の基本的人権との兼ね合いは繊細な課題がある」と述べ、認知症基本法に示された意思尊重の原則を踏まえた審議を求めました。江澤和彦氏も「ご本人の意思確認をどこかで考えておかないといけない重要な課題」と同調しました。

福祉用具・住宅改修評価検討会の結果(議題5)

介護用保清用具(寝たままの状態で身体の保清を行う機器)の提案について再評価が行われた結果、「介助者の負担軽減効果は一定程度確認できたが、要介護者等の自立促進に資する効果の実証は十分でない」として、否とされました。

まとめ・今後の展望

本日の分科会では、介護報酬改定検証研究委員会の松田晋哉委員長(福岡国際医療福祉大学)から、4つの調査結果がすべて承認されたことが報告されました。

協力医療機関との連携は、令和9年4月の完全義務化まで残り1年。検討すら行っていない施設への早急な対応が求められる局面に入っています。テクノロジー導入によるランニングコストの重さ、LIFEの現場負担感の根深さなど、令和9年度の次期改定に向けた論点も鮮明になりつつあります。

▶︎第255回社会保障審議会介護給付費分科会

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