キャリアコンサルタントが徹底サポート

日慢協・橋本会長「認知症治療は精神科だけで完結しない」──リハ含む"3機能"体制と療養病棟の受け皿論を提言

77 posts

日本慢性期医療協会の橋本康子会長は4月9日の定例記者会見で、今後増加が見込まれる認知症患者の治療体制について提言しました。認知症治療には「精神症状治療」「内科的治療」「尊厳を守るケア」の3機能が不可欠であり、「尊厳を守るケア」の中核にリハビリテーションを位置づけた点が注目されます。療養病棟がその受け皿となりうるとの見解も示されました。

認知症患者は2060年に645万人へ──有病率17.7%の時代が来る

橋本会長はまず、65歳以上の認知症・MCI患者数の将来推計を提示しました。2022年時点で認知症患者は約443万人、MCI患者は約559万人。これが2060年には認知症645万人、MCI632万人に達し、有病率は12.3%から17.7%へ上昇する見通しです。

アルツハイマー型認知症の自然経過にも触れ、軽度から中等度、重度へと数年かけて進行する疾患特性を説明。一方で「治療やちゃんとしたケアをすれば、軽度から中等度への移行を遅らせることができる」と述べ、適切な介入の意義を強調しました。

精神病床は減少、認知症治療病棟は増加──在院日数は約1年

認知症治療病棟(精神病床)の動向も報告されました。精神病床全体は2015年の33万6千床から2024年に31万6千床へ約2万床減少。その一方で、認知症治療病棟の病床数は約3万5千床から約4万床へ増加し、稼働率は約88%に達しています。

認知症患者の平均在院日数は、精神科病床でアルツハイマー病328日、血管性認知症368日。病院全体でもそれぞれ280日、294日と、いずれも1年前後に及びます。橋本会長は「死亡退院が比較的多い」との認識も示し、今後の受入先確保が課題になると指摘しました。

"3機能"の柱にリハビリテーションを明記

今回の提言の核となったのが、認知症治療に必要な3つの機能です。

1つ目は精神症状治療。BPSD(徘徊・暴言・興奮・妄想など)の軽減を精神保健指定医が担います。2つ目は内科的症状治療。認知症治療病棟の入院患者の約9割が75歳以上であり、脳梗塞後遺症、慢性腎不全、慢性心不全、誤嚥性肺炎など多くの合併症を抱える「多病」の状態にあります。精神科医だけでは対応しきれず、総合診療医との連携が不可欠だという主張です。

そして3つ目が尊厳を守るケア。ここに「寝たきり防止」「生活リズムの再構築」「身体拘束ゼロ」と並んで「リハビリテーション」が明記されました。橋本会長は「認知症の方でもちゃんとトイレに行って用を済ませることができる人はたくさんおられる。リハビリテーションをしっかり行い、ADLを維持していくことが大事だ」と語りました。

【★画像挿入:定例記者会見資料 の p.6(認知症治療に必要な3つの機能)をここに貼る】

療養病棟は認知症の「受け皿になる」

橋本会長は、療養病棟が認知症患者の受け皿として機能しうる根拠も示しました。入院・外来医療等における実態調査(令和7年3月)によると、療養病棟の入院患者の60%に認知症があり、28%にBPSD、10%にせん妄が認められます。すでに多くの認知症患者を受け入れている実態があるということです。

身体的拘束についても、デバイスなし×認知症ありの患者がいる196病棟のうち52.0%が拘束実施率0%。デバイスありの384病棟でも30.7%が拘束率0%と、拘束を行わない病棟が相当数ある点を強調しました。

最終スライドでは「認知症治療のあり方(案)」として、精神病棟・認知症治療病棟・療養病棟・回リハ/地ケア病棟を横断する制度設計の方向性を提示。基準とすべき機能として精神症状治療、内科的症状治療、尊厳を守るケア(身体拘束ゼロ/寝たきりゼロ)に加え、「認知症リハビリテーション」を掲げました。

質疑で浮かび上がった論点──ケア加算の期間延長、ポリファーマシー、在宅復帰のスキル

記者との質疑では、多角的な論点が交わされました。

橋本会長は、療養病棟における認知症ケア加算の算定期間についても言及。現行制度では14日間は高い点数がつくものの15日目以降は大きく下がる仕組みで、「2週間ではBPSDがなかなか落ち着かない。1カ月、2カ月の期間があれば、適切なケアで落ち着いてくる」と、算定期間の延長を求めました。

記者から都市部での認知症対応について問われると、橋本会長は「今から新たに病棟を作るのは建築コストや地価の面で現実的ではない」とし、既存の精神科病床や療養病床からの転換、介護医療院の活用を挙げました。

池端幸彦副会長はこれを補足し、「BPSDが出た時は治療病棟で1カ月ほど薬の調整をして落ち着かせ、身体合併症を持った方は療養病棟で管理し、在宅と行ったり来たりしながら最後まで支えていく」との考えを示しました。

ポリファーマシーへの懸念を問う記者に対しては、橋本会長が「認知症の方は自分が何の薬を飲んでいるか全然わかっていないことが多い。一剤一剤は副作用が軽くても、3剤、4剤、5剤と重なると腎機能・肝機能の悪化を招く。不要な薬を減らすのは慢性期医療の大事な仕事だ」と回答。池端副会長も「薬の相互作用で認知症が悪化していたり、便秘を治すと認知症が少し改善するケースもある。それを調整するのも療養病棟の重要な役割だ」と付け加えました。

在宅復帰後のケアスキルについて記者から問われると、橋本会長は「正直に言って、現状では十分ではない」と率直に認めた上で、「家族や一般の方向けの研修が今後絶対に必要になる」と述べました。池端副会長は「一番大変なのは軽度から中等度で動けるがBPSDが出ている段階。高度になると逆に動きが悪くなり施設でも対応可能になる。その中途段階を専門家や療養病棟でしばらく見てまた返す、という繰り返しが重要だ。医者だけでなく多職種が関わり、リハも関わってやると結構うまくいく」と、リハ専門職の関与の重要性に触れました。

まとめ・今後の展望

今回の記者会見で日本慢性期医療協会は、認知症治療を精神科領域に閉じず、「精神症状治療」「内科的治療」「尊厳を守るケア」の3機能を基準とする体制整備の必要性を打ち出しました。「尊厳を守るケア」にリハビリテーションが明確に位置づけられた点、療養病棟や回リハ・地ケア病棟、介護医療院を含む幅広い病床での認知症対応を求めた点は、リハビリテーション専門職の業務範囲と役割に直結するテーマです。

認知症ケア加算の算定期間延長の要望は、次期診療報酬改定に向けた議論の一つになる可能性があります。

日慢協・橋本会長「認知症治療は精神科だけで完結しない」──リハ含む"3機能"体制と療養病棟の受け皿論を提言

最近読まれている記事

企業おすすめ特集

編集部オススメ記事