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老健の廃業が年間31施設に倍増、「今後250施設が閉鎖の可能性」──第256回介護給付費分科会で全老健が緊急調査結果を報告

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2026年4月27日に開催された第256回社会保障審議会介護給付費分科会で、全国老人保健施設協会(全老健)の東憲太郎委員が老健施設の廃業急増に関する緊急調査結果を報告しました。PT・OTの主要な就業先の一つである老健で何が起きているのか──分科会での議論を整理します。

廃業件数は4年で4倍超に

東委員が示したデータによると、老健施設の廃業件数は以下のように推移しています1)

  • 令和元年〜令和4年:年平均7施設
  • 令和5年:15施設
  • 令和6年:31施設

年平均7施設だった水準が、令和5年に15施設、令和6年には31施設と年々倍増しています。 東委員は全老健が実施した緊急調査の結果にも触れ、具体的に廃業を検討している施設が約80、廃業の可能性が高いと回答した施設が約180にのぼり、合計で約250施設──全老健施設の約7%──が廃業リスクを抱えていると述べました1)。廃業に至る原因の多くは「経営困難」だといいます。

経営の二極化が進む老健

令和7年度介護事業経営概況調査の結果を見ると、老健の収支差率は令和5年度の▲0.6%から令和6年度には0.6%へと改善しています2)。しかし、赤字事業所の割合は49.3%にのぼり2)、平均値の改善とは裏腹に、黒字施設と赤字施設の二極化が進んでいる構図です。 特別養護老人ホームも収支差率は令和6年度で1.4%にとどまり2)、施設系サービス全体の経営環境は厳しい状況が続いています。

介護職の賃金差は依然8万円超、春闘5%時代に追いつけるか

資料3 の p.29(賃金構造基本統計調査による介護職員の賃金推移グラフ)

分科会では、令和7年賃金構造基本統計調査をもとに、介護職員と全産業平均の賃金格差が依然として約8.2万円あるとのデータが示されました1)3)。前年からの縮小幅は約1,000円にとどまっています。 連合の平山委員は、連合の集計では令和8年度春闘で全産業の賃上げが5%水準に達している一方、厚生労働省の「賃金引上げ等の実態に関する調査」では医療・福祉分野の賃金改定率が2.3%にとどまっていたと指摘。格差がさらに拡大する懸念を示しました1)

令和9年度改定に向けた4つのテーマ

分科会ではあわせて、令和9年度介護報酬改定に向けた検討の進め方が提示されました1)。事務局が示した分野横断的テーマは次の4つです。

  1. 1. 人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築
  2. 2. 地域包括ケアシステムの深化
  3. 3. 介護人材確保に向けた処遇改善等と職場環境改善やケアの質の向上に向けた生産性向上
  4. 4. 制度の安定性・持続可能性を確保する報酬のあり方

令和8年度には処遇改善に関する臨時改定(改定率+2.03%)が実施され、訪問看護や居宅介護支援(ケアマネ事業所)も処遇改善加算の対象に新たに加わりました4)。訪問リハビリテーション事業所も含まれており、リハ職の処遇改善にも直結する動きです。

委員から相次いだ「報酬の構造改革」の声

今回の分科会で目立ったのは、介護報酬の仕組みそのものを見直すべきだとする意見の多さです。 東委員は、令和9年度改定で報酬構造を「経営の原資」「賃上げ・処遇改善」「物価高騰対応」の3層に分け、処遇改善と物価対応については毎年の臨時改定で対応すべきだと提案しました1)。3年分の推計が困難な賃上げと物価の変動に、3年に1度の本改定だけで対応するのは無理があるとの認識です。 日本医師会の江沢委員も同様に、賃上げ・物価対応は毎年の別枠対応が不可欠と主張。令和6年度の診療報酬改定で物価・賃上げ分を年度別に段階対応した仕組みを引き合いに出し、介護報酬にも同様の枠組みを求めました1)。本体の報酬改定についても「3年ごとではなく2年ごとにし、毎回診療報酬との同時改定にすべきではないか」との踏み込んだ意見を述べています。 加算制度についても、算定率80%超の加算は基本報酬に組み込むことを検討すべきとの意見も出ました1)

リハ職への影響と今後の注目点

老健施設はPT・OTにとって主要な就業先の一つです。約250施設が廃業リスクを抱えているという調査結果は、リハ職の雇用環境にも直接影響し得るデータといえます。 一方、令和8年度の臨時改定で訪問リハビリテーション事業所が処遇改善加算の対象に加わったことは、在宅領域で働くリハ職にとって追い風です。 令和9年度改定に向けては、今年7月に介護従事者処遇状況等調査が実施され、11月頃に結果が公表される予定です1)。この調査結果が改定議論の基礎資料となります。夏頃にかけて主な論点の議論や事業者団体等からのヒアリングが進む見込みです。

※本記事は第256回社会保障審議会介護給付費分科会(2026年4月27日開催)の配布資料および議事内容をもとに作成しています。委員発言は議事の要旨に基づくものであり、公式議事録の公開後に表現が異なる場合があります。

参考文献

1) 厚生労働省. 第256回社会保障審議会介護給付費分科会 資料・議事内容(令和8年4月27日開催). https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_72487.html

2) 厚生労働省. 令和7年度介護事業経営概況調査結果の概要. https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/153-1/r07_chousa_kekka.pdf

3) 厚生労働省. 令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況. https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2025/

4) 厚生労働省. 令和8年度介護報酬改定について. https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_72487.html

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