5月13日の衆議院厚生労働委員会で、自由民主党の田野瀬太道議員がリハビリテーション政策に絞った15分間の質疑を行いました。上野賢一郎厚生労働大臣は、これまで「チーム」としていた省内体制を一段格上げし、「リハビリテーション統括調整室」を設置する方針を答弁。PT・OT法の制定以来60年間一度も行われていない主体的な法改正の検討、言語聴覚士の在留資格「医療」への追加協議の開始、そしてリハビリ専門職の処遇改善についても、それぞれ政府側から踏み込んだ回答が示されています。
「チーム」から「室」へ──統括調整室の設置を答弁
今回の質疑で最も注目すべきは、厚労省内のリハビリテーション政策を横断的に統括する組織体制の格上げです。
この問題は、2月27日の衆議院予算委員会で山本香苗委員(中道改革連合)が「厚労省にリハビリを統括する部署がない」と問題提起したことに端を発します(POST既報)。上野大臣は当時「省内体制をしっかり取る」と答弁。続く4月22日の厚労委では「関係チームのようなものを立ち上げたい」と一歩進めていました。
田野瀬議員はこの日、「チームではなく、係でもなく、担当課──リハビリ課が必要だ」と迫りました。先日のリハビリテーション議員連盟でも同様の質問をしたところ、厚労省から「チームを作る」との回答があったことを明かし、それでは不十分だと畳みかけた形です。
上野大臣は「就任してチームを作るということでやってきたが、さらに一歩進めて、室を設置したい」と応じ、正式名称として「リハビリテーション統括調整室」を挙げました。「体制を強化して、総合的な対策に取り組む」とも述べています。
2月の「体制整備」から4月の「チーム」、そして今回の「室」──わずか3カ月弱で組織形態が段階的に具体化した背景には、国会での継続的な追及に加え、議員連盟からの要望が重なったことがうかがえます。田野瀬議員が求めた「課」には届かなかったものの、省内の正式な組織単位として「室」が設けられる意味は小さくありません。
60年間「主体的改正ゼロ」──PT・OT法の見直しに言及
田野瀬議員は冒頭、昭和40年に制定された理学療法士及び作業療法士法が60年間一度も主体的に改正されていない事実を取り上げました。
同議員は「厚労省に確認したところ、主体的な改正は一度も行われていない」と述べ、現行法における作業療法の定義が「手芸、工作、その他の作業を行わせること」にとどまっている点を具体例として指摘。「手芸や工作以上の専門的な業務を現場では担っているのに、法律が60年前のまま乖離している」と問題提起しました。
あわせて、無資格者が理学療法士や作業療法士に紛らわしい名称を用いてリハビリを実施している事例にも言及。法改正の際には名称独占にとどまらず、業務独占と罰則の明記を求めました。
森光医政局長は、リハビリ専門職の役割がこの数十年で大きく変化し重要性が増していることを認めた上で、「5月7日から医療関係職種の安定的な養成・確保に関する検討会を開催し、議論を開始した」と答弁。紛らわしい名称の問題についても「関係団体からそうした声を伺っている。実態把握も含めて必要な対応を検討する」と応じました。森光局長が引用した同検討会は5月7日に第1回が開催されたばかりで、PT・OT・ST協会の各会長が構成員として参加しています。
上野大臣は質疑の締めくくりで、「昭和40年にこの法律ができた──ちょうど私が生まれた年だ」と述べた上で、「予防医療への貢献も期待される中で、リハビリテーション専門職の位置づけや役割を踏まえた制度的な見直しが考えられるかどうか、しっかり検討していきたい」と答弁しました。
田野瀬議員は最後に「来年のこの委員会で法改正の議論ができることを期待する」と述べ、質疑を結んでいます。
処遇改善「現場に届いていない」──目詰まりの解消を要請
処遇改善について質問が及ぶと、間保険局長が具体的な数字を示して答弁しました。
医療分野では、令和7年度補正予算でリハビリ専門職を含む医療従事者の賃金を3%分・半年間引き上げる措置を講じたこと、続く令和8年度診療報酬改定(本年6月施行)では令和8年度・令和9年度それぞれ3.2%のベースアップを実現するための措置を講じることが説明されました。
介護・障害福祉分野では、補正予算による緊急対応に加え、令和9年度の定例改定を待たずに令和8年度に前倒しで改定を実施するほか、令和9年度改定でも経営状況を把握した上で物価・賃金上昇を適切に反映する方針が示されています。
田野瀬議員はこれを受け、「処遇改善の施策は多岐にわたって実施されているのは分かっているが、実は現場に届いていない」と指摘。新設されるリハビリテーション統括調整室に対し、「どこかで目詰まりが起きている。それをチェックして、確実に現場の処遇改善につなげてほしい」と要請しました。
在留資格「医療」に言語聴覚士を──法務省と厚労省が協議開始
田野瀬議員は法務省にも質問を向けました。外国人の在留資格「医療」にはPTやOTの業務が記載されている一方、言語聴覚士(ST)が含まれていない問題です。
法務省の磯部在留管理支援部長は、在留資格「医療」への言語聴覚士の追加について「厚生労働省と協議を開始している」と明言。「引き続き厚生労働省と連携して検討を進めたい」と答弁しました。
田野瀬議員は「統括調整室ができることで、今までと違う一歩進んだ協議を進めてほしい」と述べ、新組織の設置を他の政策課題の推進力にも結びつける姿勢を見せました。
まとめ・今後の展望
本日の質疑で確認された事実は以下の通りです。
厚労省内に「リハビリテーション統括調整室」が設置される方針が大臣答弁で示されました。PT・OT法については、5月7日に開始された「医療関係職種の安定的な養成・確保に関する検討会」の中で議論が進む見通しです。処遇改善は令和8年度診療報酬改定(6月施行)で3.2%ベースアップの措置が講じられますが、現場への波及が今後の焦点となります。在留資格「医療」への言語聴覚士追加は、法務省・厚労省間で協議が始まった段階です。
統括調整室の設置時期、人員構成、所掌事務の詳細はまだ明らかになっていません。田野瀬議員が期待を寄せた「来年の法改正議論」が実現するかどうかも含め、引き続き動向を注視する必要があります。
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▶︎厚生労働委員会
質疑応答 全文
以下は、2026年5月13日 衆議院厚生労働委員会における田野瀬太道議員(自由民主党・無所属の会)の質疑応答全文です。
田野瀬太道 議員(自由民主党・無所属の会)
自民党の田野瀬でございます。今日は質問の機会をいただきまして誠にありがとうございます。厚生労働行政は幅広いですが、今日は時間も限られておりますので、リハビリテーションに関してのワンイシューで15分を使わせていただけたらと思います。
まずは前提・背景を申し上げます。我が国において、理学療法士、作業療法士をはじめとするリハビリ専門職は、長年にわたり国民の健康寿命の延伸、生活の質(QOL)の向上に多大なる貢献を果たしてきました。
病気やケガの治療後、再び立って、歩いて、働いて、地域で暮らす。その当たり前の生活を支えてきたのがリハビリ専門職であると言えます。
彼らの職業は、医療分野にあっては昭和40年に理学療法士及び作業療法士法として施行され、以降、多年にわたり我が国の医学的リハビリテーションを支えてきました。その後、医療分野に限らず介護の分野においても、平成12年の介護保険制度の開始と相まって、高齢者の自立支援や社会参加の促進としてリハビリテーションを推進してきたわけです。
超高齢化社会を迎えた我が国では、単に寿命を延ばすだけではなく、いかに自立した時間を長く保つかが国民的課題となっています。今般も高市内閣においては「攻めの予防医療」を推進として謳っておりますが、リハビリテーションについても疾病の予防だけでなく、重症化の予防としても様々な効果をもって推進されることが期待されます。
海外と比較しますと、海外においてはリハビリ専門職、いわゆるセラピストの皆さんは、はっきり言ってドクターと同格の社会的地位であったり、処遇も約束されていたりと、その海外との乖離も国内問題であろうかと思います。
こうしたリハビリテーションを取り巻く環境の変化の中で、制度やその運用に目を向けますと、実態と乖離した課題が依然として残っておりますので、このことについて質問させていただきます。
具体の質問の1点目です。理学療法士、作業療法士が担う業務に関してです。
理学療法士及び作業療法士法の昭和40年の制定以降、半世紀以上、60年にわたって時間が過ぎていますが、この間、国内におけるリハビリ関係職種の役割は大きく変化しています。しかしながら、業務範囲や医療分野におけるセラピストの位置付けは、時代の変化に十分対応しているとは言えない現状ではないかと思います。
厚労省に確認しましたところ、これはびっくりしたのですが、理学療法士及び作業療法士法に関して、主体的な改正は60年前から一度も行われていないということです。60年前と一緒の状態で、全く現実と乖離した法律が今存在しているということになります。
例えば一例を挙げます。作業療法についてですが、本来、個人の目的や価値観に合わせた動作の改善を図り、人々の健康と幸福を促進することが目的とされています。業務は多岐にわたっており、食事や入浴といった動作の向上を目指す方、地域活動への参画を目指す方など、目的は対象者によって大きく異なっているのが実態です。
しかしながら現行法には、作業療法の定義として「手芸、工作、その他の作業を行わせること」となっている。手芸や工作以上のもっと色々な専門的な作業を行っていただいているのが実態であり、ここが60年前と全然乖離しているということです。
そこで政府に伺います。理学療法士、作業療法士の役割や業務内容について、法改正しませんか。60年ぶりですけれども、制度的にもリハビリ関係職種を時代に即したものとすべきと考えております。
あわせて、現場において理学療法士や作業療法士に似通った紛らわしい名称で、無資格者がリハビリテーションを実施している事例が昨今散見されています。法改正をしていただけるならば、名称独占だけでなく業務の独占、そして罰則もしっかりと明記した上で整理すべきだと考えます。法改正についてのお考えをお聞かせください。
森光 医政局長
お答え申し上げます。委員ご指摘のようにリハビリテーションは、疾患の診断・治療の後に急性期、回復期、維持期、生活期まで一貫した流れで行われることが重要でございます。そのリハビリ専門職が果たしている役割は、この年代において変わってきておりますし、さらに重要性が増していると考えております。
現在、医療関係職種の安定的な養成・確保に関する検討会を5月7日から開催し、議論を開始したところでございます。引き続き関係者の皆様のご意見も踏まえながら、必要な検討を進めていきたいと考えております。
リハビリテーション専門職の名称に関してですが、各資格法の根拠法において、資格を持たない者が紛らわしい名称を用いてはならないとされており、違反した者に対する罰則も設けられております。一方、関係団体から紛らわしい名称を使用している事例があるとの声も伺っていることから、今後、実態把握も含めて必要な対応を検討していきたいと考えております。
田野瀬太道 議員
ありがとうございます。続きまして、リハビリテーション政策を統括する専門部署の設置についてお伺いいたします。
現在、リハビリテーションの活動範囲は多岐にわたっております。医療、介護、障害福祉、教育分野等、その活躍分野は極めて広いものとなっています。一方で、それぞれの縦割り行政による弊害において、リハビリテーション政策全体として向いている方向が1つにはなりにくいという側面もあるのではないかと考えております。
つきましては、国家戦略としてのリハビリテーションを展開するためにも、政策を推進するための統括専門部署を厚生労働省内に早急に設置していただきたいと考えております。あわせて、先日開かれた自民党のリハビリテーション議員連盟で同様の質問をしましたところ、厚労省からは「チームを作ります」との回答がありましたが、チームではなく、係でもなく、担当課──リハビリ課が必要だと考えておりますので、その辺りも含めてご回答をお願いします。
上野賢一郎 厚生労働大臣
リハビリテーション専門職の皆さんの活躍の場は、医療・介護の現場にとどまらず、予防、健康増進といった分野にも拡大しており、分野横断的な対応が重要だと考えております。
私は就任してチームを作るということでやってまいりましたが、さらに一歩進めて、今般、議員連盟からの要望もありますし、またこの委員会でもいろんなご意見をいただきましたので、室を設置したいと思っております。
リハビリテーション統括調整室を設置し、体制を強化して、総合的な対策に取り組んでまいります。
田野瀬太道 議員
非常に前向きなご答弁ありがとうございました。時間がないのでどんどん進めます。続きまして、リハビリ専門職全体の処遇改善について問わせていただきます。
高度な専門性と責任を担うリハビリ専門職ですが、賃金水準は必ずしも十分とは言えません。全産業平均との差は歴然としたものがあります。リハビリ団体の皆さんから聞きますと、少なくとも30年以上は賃金がアップしていないということもおっしゃっておられます。
このままでは他産業への人材流出──せっかく国家資格を取ったのに稼げないのでどんどん辞めていくというのが実態です。我が国のリハビリテーションの水準を保つことが厳しい状態になっています。
処遇改善は単なる労働問題ではなく、国民が必要なリハビリを安定的に受けられるかどうかに直結する問題です。処遇改善に向けての厚労省の見解をお聞かせいただけたらと思います。
間 保険局長
お答えいたします。リハビリ専門職も含め、医療・介護・障害福祉の現場で働く方々の人材確保や処遇改善は喫緊の課題であると認識しております。
まず医療分野では、令和7年度補正予算で賃上げに対する支援として、経営状況も踏まえつつ医療機関がリハビリ専門職を含む従事者の賃金を3%分・半年間引き上げる規模の措置を講じました。
それに引き続き、本年6月に実施される令和8年度診療報酬改定においては、リハビリ専門職を含む幅広い職種の方の賃上げに向けて、令和8年度、令和9年度それぞれ3.2%のベースアップを実現するための措置を講じることとしております。
介護・障害分野においては、補正予算による緊急的な対応に加え、他職種と遜色のない処遇改善に向けて、令和9年度の定例改定を待たずに令和8年度の改定を実施するほか、令和9年度の定例改定において、介護・障害福祉分野の賃上げ、経営の安定、離職防止、人材確保を図る必要があるとの認識のもとに、事業者の経営状況等を把握した上で、物価や賃金の上昇等を適切に反映するための対応を実施していくこととしております。
こうした措置を通じて、今後ともリハビリ専門職をはじめ、医療・介護・障害福祉の現場で働く方々の着実な賃上げにつなげていきたいと考えております。
田野瀬太道 議員
これも前向きなご答弁ありがとうございました。是非、室を作っていただいて──今まで多岐にわたって処遇改善をやっていただいているのは分かっていますが、実は現場に届いていませんので、室を作っていただいたら、どこかで目詰まりが起きていますから、それを是非チェックしていただいて、確実に処遇改善につながるよう対応をお願いしたいと思います。
続いての質問です。今日は法務省にもお出ましいただいております。外国人の在留資格「医療」についてお聞きします。
在留資格とは外国人が日本で行うことができる活動等を類型化したものですが、在留資格「医療」の中には理学療法士や作業療法士などの業務に従事する活動は記載されています。しかし、もう1つの重要なリハビリ専門職である言語聴覚士が、なぜか入っていません。
法務省にお伺いします。在留資格「医療」に言語聴覚士も加えていただきたいのですが、ご回答をお願いします。
磯部 在留管理支援部長
お答えいたします。在留資格「医療」については、専門的・技術的分野の在留資格であり、我が国の産業及び国民生活に与える影響その他の事情を勘案し、法務省令において受け入れ対象となる資格を具体的に定めているところでございます。
法務省令を改正し、在留資格「医療」の受け入れ対象に言語聴覚士を追加するためには、追加の必要性や具体的要件等について、医療分野を所掌する厚生労働省の意見を十分に踏まえることが必要と考えております。
現在、すでに厚生労働省と協議を開始しているところでございまして、引き続き厚生労働省と連携して検討を進めてまいりたいと考えております。
田野瀬太道 議員
ありがとうございました。引き続き厚生労働省と検討を進めていただけるとのことですので、室を作っていただくわけですから、今までと違う一歩進んだ協議を進めていただけたら大変ありがたいと思います。
用意しておりました質問は以上です。まとめに入らせていただきます。リハビリの皆さんが本来業務を生き生きと全国で展開していただければいただくほど、国民の疾病の予防につながりますし、疾病を持っている方の重症化の予防につながりますし、外科手術が行われた方の早期回復にもつながる。いわゆる医療費削減、介護費削減のいいことずくめでして、総理が提唱する「攻めの予防医療」、これもリハビリの皆さんが元気になるかならないかにかかっているのではないかと、こう言っても過言ではないかと思います。
是非、室を作っていただいた上で、どんどんとこの政策を進めていただけたらと思います。最後に、今までの質疑応答を踏まえて大臣から一言いただけたらと思います。
上野賢一郎 厚生労働大臣
非常に貴重なご提言をいただいております。まず「攻めの予防医療」に関しては、高市内閣の重点政策でもありますが、リハビリテーション専門職の皆さんが果たす役割は非常に大きいと思いますので、どういった政策が推進できるか、しっかり検討していきたいと考えています。
先ほど局長から答弁がありましたが、医療関係職種の養成確保についてもしっかり取り組んでいきたいと思います。
昭和40年にこの法律ができたということで、ちょうど私が生まれた年でございまして、その間、色々な状況変化がありますし、今後、予防医療への貢献も期待されるわけでありますので、これからのリハビリテーション専門職の位置づけや役割を踏まえた上で、制度的な見直しというのが考えられるかどうか、これもしっかり検討していきたいと考えております。
田野瀬太道 議員
来年のこの委員会で法改正の議論ができることを期待し、終わります。ありがとうございました。
出典:衆議院厚生労働委員会(2026年5月13日)田野瀬太道議員質疑(動画文字起こしを基に構成/会派:自由民主党・無所属の会) 文責:POST行政担当デスク






