サイエンス?それともアート? ~ エビデンスと実際の臨床を繋ぐ ~(株)メドレー -理学療法士(PT) 藤本 修平先生 – 最終回

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前回の内容:研究している多くの人が持つであろうある悩み

理学療法士、作業療法士が研究法を知らなければいけない2つの理由

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研究はしなくてもいいのですが、研究方法は知っている必要はあります。というのも、目の前の患者さんが治療してよくなりましたって、本当によくなったかは判断できないですよね。

その理由は2つあります。ひとつは、情報を適切につかう、つたえるという能力は、研究方法を知らずには持てないからです。

医療者は、情報を扱う職業なわけですから、情報を適切に使えない、伝えられないとまずいわけです。

ふたつめは、臨床の効果を判断することができないからです。研究方法論としては当たり前ですが、比較の妥当性というものがあります。

比較をしないとまず効果は言えない、さらにその比較の妥当性が高くないと、その真実さは低くなる、ということです。この比較の妥当性を知らずに、目の前の患者さんを自分が治しているという意識を持ってしまうと危険です。

歩かせてたら覚醒がよくなってきたは本当?

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例えば、「歩かせてたら覚醒がよくなってきた」ってよく言う人がいますが、もちろん歩いたから覚醒がよくなったのかもしれないけど、歩かせないでもよくなったかもしれない。

もしかしたら、もっと他の効率的で患者さんに良い方法もあるかもしれない。さらに、いくら覚醒が良くたって、身長180センチ、100キロある人を、小柄な女性が歩行練習させることは大変だし危険をはらむ可能性がある。

そうなった時に、他の力がある人に任せることも考えますが、でも1人職場じゃできない、といった様々な環境条件がある。

自分が置かれている環境、患者さんの環境、エビデンス、経験や患者さんの価値観などを全て加味した上で治療方法の意思決定をすることが大事ですよね。

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理学療法って手技がたくさんあったり、エビデンスがまだ低い治療とかもある。ただ、それを「やってはいけない」というわけでなくて、根拠がこれくらいで、エビデンスがなくても経験的にどれくらいの可能性があると患者さんに説明できる必要がある。多様性を大事にしながら、それを中立に説明できることが大事だと思います。

説明にはメリットだけではなくデメリットを示して、患者さんと共有することが重要かなって思っています。そのための手段やツールとして、Shared decision makingや診療ガイドラインがあるといいのかなって思います。

先々には、患者さんが自分の病気に関する診療ガイドラインやエビデンスの知識を持って、「えっ、それって本当に大丈夫?」って自分の受ける治療に少し責任を持ちながら、意思決定を共有できるようになればいいと思います。そのときに患者さんが参考にする情報ソースとして、MEDLEYも役に立つかもしれません。

プロフェッショナルとは

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私は、「自分の行動に真の意味で責任をもつこと」だと思います。当たり前だと思うかもしれませんし、責任を持っているとも思うかもしれません。

でも、自分の行動、意思決定が、本当に根拠、経験、患者さんの価値観などを十分に考慮してやっていると、100%自信を持って言える人は少ないと思います。

それを100%に近づける努力をしているか、なんとなく正しくないことをやっていないか。そういう意識を持ち、内省をさらに行動につなげられること、これを行う責任を持てることがプロフェッショナルだと思います。

前回の内容:研究している多くの人が持つであろうある悩み

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藤本修平先生経歴

理学療法士 7年目
弘前大学医学部保健学科、弘前大学大学院修了(保健学修士)
東京湾岸リハビリテーション病院
京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 博士後期課程(〜現在)
株式会社メドレー(〜現在)
■研究テーマ/専門分野 診療ガイドラインの質評価、Shared decision makingの方法論、臨床倫理、健康情報学
研究方法論
(代表論文などはコチラ

■著書
行動医学テキスト(分担執筆)、中外医学社、2015年

■お問い合わせ
診療ガイドライン、Shared decision making、研究方法論などに関するお問い合わせは、shuheifujimototbr*gmail.comへ(*を@に変換してください)
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