地域リハのヒントは、「福祉大国」スウェーデンにあり【株式会社モノ・ウェルビーイング】

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予算が取れず、病院で入院できない国

 

 

ーー最初に、株式会社モノ・ウェルビーイングについて教えてください。

 

 

榊原  もともと福祉用具屋でいわゆる自助具を販売しています。設立にあたって、スウェーデンでは自助具でどのように自立支援をさせられるのかを見に行ったんです。向こうって、その人に合った道具が提供される仕組みがあって、それを日本にも取り入れたくて行ったんですけど、そこで見てきたのは自助具を提供することに対してのリハ職の関わりなんですね。

 

 

ーーどのように関わっているんですか?

 

 

榊原 その人の生活を見たセラピストがその人に必要な道具を提供して、自助具に対して「こんな修正かけたほうがいいよ」っていう仕組みだったんです。なので、こっちに戻ってきたときに、うちのスタッフにもリハビリテーションを提供する中で自助具、福祉用具があるっていうスタイルで今やっています。

 

 

ーーもともと榊原さんが始めようと思ったきっかけって?

 

 

 

榊原  もともと医療機器メーカーにいたんですよ。そこで医療機器開発に携わっていて、作れば作るほど人が寝たきりになっていくんですよね。亡くならない代わりに生きてない人が増えていって、医療機器として目的が違うんじゃないかなぁって…。そこで人が生活の中で生きれる物づくりがしたくてこういう福祉自助具の会社を始めました。

 

 

ーーなるほど。それでなぜスウェーデンに?

 

 

榊原  スウェーデンは税金が高い国ではあるけれども、福祉が充実しているんですが、それっていうのは裏返しがあって、寝たきりにならない国ではあるんですけれども病院で入院できないんです。医療に対して予算がほとんどとれないために地域で携わる形をとっているんですよね。具体的には、看護師を中心とした在宅で暮らすためのケアチームがあって1日に何回もセラピストが訪問介護していったりリハを入れていったりしているんです。


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彼らがやるリハビリテーションっていうのは徒手技術もなくはないんですけれども基本的にはマネジメントとアセスメントなんですよね。例えば、月曜日評価してリハメニュー作って冷蔵庫にバンッて貼って、「じゃあ」って帰っていくような…。治療っていうよりはそこでアセスメントをするというのが主の仕事でメニューの実施状況を確認するのは家族だったりヘルパーだったりの後の人たちがするんですよ。要はそこでやってるかやってないかを確認ができるんですよね。

 

それでまた1週間後にきてもう1回アセスメントして、前回より良くなっていればまた違うメニューを貼ってみたいなことをやっているんです。そうすることによってその時間だけのリハビリじゃなくて継続するリハビリができるんですよ。それで、うちもそれを取り入れようとしてて、彼女(望月)にもメニューをしっかり考えるようにしてもらっています。

 

 

地域に仲間がいない!

 

 

ーーアセスメントとマネージメント、まさにこれからの医療に必要とされているところですね。では望月さんがPTになったきっかけをお聞きしてもよろしいですか?

 

 

望月 小中学校でバドミントンをやっていて、腰痛でリハビリに通っていたのですが治らず…。そのときは理学療法士がリハビリをしてくれていたということは分からずにリハを受けていて、、「リハの人なのに治してくれなかった」という苛立ちというか、専門職なのに…という思いがずっとありました。そんな気持ちを持ちつつも、もともとは美術の方に行きたかったので美術の勉強をしていました。


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そんな中で進路の時に、理学療法士という職種があるということを知って、「あ、私を治してくれなかった人だ」って思いだして。もともと負けず嫌いっていうのもあるんですけど、何で治らなかったのかが気になるし、あの時治してくれなかったっていうことに対して、だったら自分で治せるようになりたいと思ってしまい…美術はきっぱりと断ってこの道に進みました。なのできっかけは、腰がどうして悪くなったのかとかそういうのを解決したかったというのが大きくあったと思いますね。

 

ーーここ(株式会社モノ・ウェルビーイング)で働きはじめたきっかけは?


 

 

望月  PTは普通、病院に勤めるイメージしかないじゃないですか。私が国家試験を受ける年に大きい腰椎椎間板ヘルニアをやってしまって、松葉杖で国家試験を受けに行って…。試験が終わった後に手術をしたので、その後の働き方を考えていました。病院でいきなりトランスをする自信がなくて、職を探していることをPTの恩師に相談したところ、縁あって藤沢市の保健医療センターで働くことになりました。そこは市民の健康増進をしているところで、当時は市民が年に1回PTに体の相談をすることができました。

 

 

 

 

市民の方が来て「病院に行くまででもないんだけど腰が痛くてね」みたいな相談を受けてPT評価をしたり、必要であればメニューを作って持って帰ってもらうという形式でやっていました。その仕事を通じて、地域で健康を支える職種としてPTがいることを初めて実感しました。地域に出てPTが活躍できるっていうのを学校ではほとんど知ることが出来なかったので、地域で働くPTもすごく大事だっていう風に感じました。

 

そこでは来所相談だけでなく、訪問相談にも行くんですけど、その先で地域のPTに会わないんですよ。それがすごい「ヤバいな」って思いました。地域にPTの需要はこんなにあるのに、仲間がいないっていうのがすごく寂しいというかマズいと思い始めて。ここを退職した後も地域で働けるといいなと思っていたら、またまたPTの恩師のつながりでここに入職しました。

 

 

ーーもともと、似たような仕事をやっていたんですね。

 

 

望月  そうですね。


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ーー望月さんがここで行っている業務内容や対象者は?

 

望月 元気なシニアの方でスポーツは続けたいんだけど医者に行くのは嫌で、自分で何とかしたい人と、退院後にまた入院前の生活に戻れるようになりたい人と、最近歩き方がおかしいとか、「表情が…」とかを家族が気付いたり、ケアマネさんが気付いて連絡をくれて、気軽にPTを使っくれる場合とありますね。あとは住宅改修関係です。手すりをどこにつけたらいいかわからないとか、お風呂に入りづらくなったんで道具がほしいんだけど何がいいかわからない、とか。介護系も障害系もどっちもありますね。

 

 

榊原  基本期にはうちは自費のサービス、いわゆる制度外サービスなので介護保険を使っている方であればケアマネから依頼が来ますね。そういうケースっていうのは、リハが今の時間であったら足りないであったりとか退院直後に集中的に介入することもありますね。あとは元気なシニアとか。元気なシニアは75歳以上が多いのかな。あとは障害を有したお子さんもいます。いわゆる制度にこぼれる人たちがうちに来るんですよ。訪問リハビリもしますがあくまでもアセスメント。そこから自分でできるようにやり方を教えるっていう形です。

 

 

【目次】

 

第一回:地域リハのヒントは、「福祉大国」スウェーデンにあり

第二回:ユニバーサルデザインは"嘘"?   ※明日配信

第三回:なぜ転倒するのか、健康生成論とは

 

地域での関わり方、具体的な事例と対応が聞きたい方へ

 

jisedai

 

次世代リハサミット2016

 

 

日時

2016年9月24日(土)13:30~17:30 (受付開始13:00~)

会場

東京工科大学(蒲田キャンパス)3号館10階 階段教室

入場料

3,000円

申し込みはこちら

https://www.oyamiru.com/seminar/enter_201607a#jp1

 

 

 

経歴

 

榊原 正博 (ビジネス職)

株式会社モノ・ウェルビーイング 代表、公益財団法人神奈川科学技術アカデミー教育研修アドバイザー(非常勤)、一般社団法人 日本医工ものづくりコモンズ、湘南リハケア実行委員長、鎌倉バリアフリービーチ実行委員会、特定非営利活動法人 湘南バリアフリーツアーセンター理事長 地域災害弱者支援会議メンバー(鎌倉市) 電気通信大学機械制御工学科卒業後、医療機器メーカー技術開発部門勤務。

 

望月 純(理学療法士)

 

株式会社モノ・ウェルビーイング、一般社団法人 神奈川県理学療法士会、湘南リハケア実行委員、公益財団法人藤沢市保健医療財団 勤務し、藤沢市民向け保健事業、障害児者向け保健相談・指導・教育事業に従事。その後、株式会社モノ・ウェルビーイング入社

地域リハのヒントは、「福祉大国」スウェーデンにあり【株式会社モノ・ウェルビーイング】

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