ユニバーサルデザインは" 嘘 "?【株式会社モノ・ウェルビーイング】

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日本の自助具は多機能すぎる

ーー私も地域で働いているのですごく興味があります。福祉用具はどのように活用されているのか?

 

榊原  福祉用具っていうのはあくまでツールなんですよ。日本の福祉用具って介助用じゃないですか。本人用というよりは家族用でしょ。うちが提供したいのは本人が自立するための道具なので。一応、福祉用具とかのレンタルはやりますけどあんまり使わないです。その人がそうなりたいような生活になるために自助具をリハの中で活用していくってことなんですけど…あんまりないんですよね。

 

 

どっちかっていうと外出意欲の方が強くて外に出るっていうのがキーになってきますね。もうちょっとこの後のフォローができるようになってくるとOTとかが入って行って調理などができればいいんでしょうけど。今はその中間の段階ですかね。鎌倉っていう土地柄もあるんでしょうけど、鎌倉の方達って家にこもりがちで自分たちで家事動作をやるっていう方があまり多くないですね。だから、あんまりそういうニーズが出てこないっていうのもあるかも知れないですね。

 

 

望月  やりたいことを私はリハの中でやるので、話をよく聞いて、運動するだけがリハではないと思っています。昔のことを思い出したり、自分の話をしたり、自分の体のことを「こうだからここが痛いのね」とか「こうだから歩けないのね」というような気付きがあるだけでもいいと思っています。認知症の方で短期記憶がない方なんかは話している中で「編み物がすごく好きなんだけど…今はできない。」と言われた際には、「じゃあ私の先生になってください」ってお願いして一緒に編み物やったりとかします。「PTはこれでOTはこれ」っていうのはあまり好きじゃなくて、その人に必要なことやその人がその人らしくいられることだったらなんでもやりたいです。 

 

 

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榊原  リハビリの中で自助具を使うことはあんまりなくって、利用者さんが下肢機能に意識が高くて家事機能まで自助具のニーズが高まってくることがないんですよ。一応レンタルできる仕組みにはしてあるんで、月100円とか200円とかで借りれるようにはなってるんですよ。でもそういうニーズがあんまり出てこないんですよね。利用者側の生活に対してのニーズと我々が思っていたニーズとのギャップがあることに気付いた良い機会でもあるんですけどね。ここにきて買っていってくれる方もいます。そういうときに相談に乗って「こういうのがいいですよとか」紹介したりします。

 

 

望月  日本のもの(自助具)ってだめだなぁって。海外のものはその動作だけを考えてやっているので確実性があって、だけど見ただけじゃ何に使うのかわからないのでここに来て学びましたね。

 

 

榊原   うちの自助具は半分~1/3くらいはスウェーデンから輸入しています。だから向こうの色合いのものだったり、きれいな感じのものとかがあります。日本の自助具は多機能すぎる。いろんな事が出来て、誰にでも合いますって言うけれど誰にでも合いますって誰に合わないじゃないですか。ユニバーサルデザインって「誰にでも合います」っていうけれどもあれって嘘じゃないですか。

 

 

ホントは「できるだけ多くの人に合います」っていうものであって。それをできるだけ多くの人に合わせるために細々いろんなものを付けちゃうんですよね。ユニバーサルデザインは「できるだけ多くの人」なんですよ。それがその機能が合う人の「できるだけ」になっているから。それが合う人にはそのまま提供できるけど。うちは自助具加工したりいじったりして販売したりもしています。その一工夫が必要なんですよね。

 

 

リーチャーの本物とニセモノ

 

 

ーーたくさんここに並んでますけど、どれか例に出して教えていただけますか?

 

 

望月  もちろんです。んーどれがいいかな。

 

 

ーーでも、どれもカラフルで使ってみたい感じがしますね。

 

 

望月  この二つのリーチャーなんですけど、こっちがニセモノでこっちが本物です。違いわかりますか?

 

 

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ーー 見た目は一緒ですね。

 

 

 

 

ーー あ、掴んだときのグリップの硬さが全然違いますね。

 

 

望月  そうなんです。今までは福祉用具とかってカタログで見て絵で判断して、来て当たりはずれみたいな感じだったのでやっぱり本物があって、こういう見たり聞いたりする機会が大事かと思います。

 

 

ーースウェーデンは自助具のニーズは高いのか?

 

 

榊原  ニーズはあるし、生活にセラピストが関わっていて自助具を提案する機会も多いので生活機能が下がらないんですよ。そういう時に自助具とかが使われていくんですよね。

 

 

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望月  そういうところが日本とは違いますよね。動く福祉用具屋が常にいて、体も見てくれるっていう環境が日本にはないから、こういうのがあるっていうイメージもないとニーズも出てこないですよね。

 

 

榊原  生活している人もわかんないんですよね。できないと思っているし、あきらめちゃってるし。試せるとまた違うんでしょうけども…

 

 

望月  例えば日本のペットボトルオープナーはプルタブを開ける機能も付いていて多機能なんですけど…海外のものはペットボトルを開けるだけのもの、プルタブを開けるだけのものというふうになります。一つの機能に特化しているので、握りやすいし使いやすいんですよね。うちで一番買われているものの一つです。


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【目次】

 

第一回:地域リハのヒントは、「福祉大国」スウェーデンにあり

第二回:ユニバーサルデザインは"嘘"?

第三回:なぜ転倒するのか。健康生成論とは  

 

 

経歴

 

榊原 正博 (ビジネス職)

株式会社モノ・ウェルビーイング 代表、公益財団法人神奈川科学技術アカデミー教育研修アドバイザー(非常勤)、一般社団法人 日本医工ものづくりコモンズ、湘南リハケア実行委員長、鎌倉バリアフリービーチ実行委員会、特定非営利活動法人 湘南バリアフリーツアーセンター理事長 地域災害弱者支援会議メンバー(鎌倉市) 電気通信大学機械制御工学科卒業後、医療機器メーカー技術開発部門勤務。

 

望月 純(理学療法士)

 

株式会社モノ・ウェルビーイング、一般社団法人 神奈川県理学療法士会、湘南リハケア実行委員、公益財団法人藤沢市保健医療財団 勤務し、藤沢市民向け保健事業、障害児者向け保健相談・指導・教育事業に従事。その後、株式会社モノ・ウェルビーイング入社

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