なぜ転倒するのか。健康生成論とは - 株式会社モノ・ウェルビーイング -

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自助具が広まらない理由

 

 

ーーここは福祉用具の相談とかもしているのですか?

 

榊原  時々セラピストからあるけど少ないですね。地域のセラピストで、特に訪問やっているOTさんがいつも何を行っているのか気になりますね。結構、今手元にあるもので頑張っちゃてるのもあるのかなぁって思うんですよね。会員制のサービスで月会費払っていただいてリハなんかも行く仕組みなんですけど、OT向けに自助具をレンタルするサービスもやろうと思っているんですよね。

 

というのも、自分が利用者さんに使いたい自助具が買えないんですよね。事業所で買うわけにもいかないし。じゃあ自分で買うかっていう話にもなりますし。利用者さんに買ってもらうにしてもお金を払ってもらうのって結構嫌じゃないですか、セラピストの方って。変化するのもわかるんだけどしばらくしたらいらなくなるのもわかるので、事業所に自助具が入れない。そこで好きな時に好きなだけ好きなものを使えるようなサービスを考えています。

 

 

ーーなかなか自助具って広まっていかない。それにはセラピスト自身もあまりその存在を知らないっていうのも大きいのかもしれませんね。


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自主性を促すコツ

 

 

榊原 健康生成論っていう「人が健康になるために人が備えるべき3つの要素」っていう考え方があるんです。

 

 

ICFはその人の健康状態を示しますけど、あれって点を示していますよね。今こうだと、次の目標はこうだって、その人がどっちに向かっているのか健康になるように向かっているのか、悪い方向に向かっているのっていうのは表現できてないんです。健康生成論っていうのは人のメンタル的なところでストレスに耐える力とか、ストレスに流されてしまう力を表現するもので、今自分が関わっていることに対して理解できているのか、意味づけできている、自分でコントロールできてるっていうその3要素が揃うと人は勝手に健康になっていくっていう理論なんです。

 

 

彼女がやっているリハにもイメージをもってもらいながらやっていて、視るポイントが今それがちゃんと理解できているのか、意味づけできているのか、自分でできているのかっていうのを育ててもらっているんですね。生活機能が変化していなくても、健康生成論的な3要素が向上すると、その人は勝手に外にで始めたり元気になっていくんですよね。この3要はICFの中のどこにはまるかというと個人因子の中にはまるんです。自己効力感とかモチベーションとか動機とか。それをどう育てるかっていうのってあんまり理論的にないじゃないですか。

 

 

それを理論的に提供しているのが、健康生成論っていう概念なんです。もともとはメンタルヘルス的な概念なんだけどそれをスウェーデンではリハビリに応用している。身体機能は変わらなくても全然いいと思っていて、活動とか参加とか無理矢理ひっぱり上げるんじゃなくて、自らが変わって、自分でできて活動と参加が変わっていく。それが理想ですよね。


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望月 転倒しやすい方がいて、転倒しては骨折して、凹んで「私なんて」ってけっこう多いと思うんですけど。なぜ自分が転倒するのか。筋トレやストレッチはしてくれるけど、なぜ自分が転倒して、なぜ骨が折れやすいのかっていうのを説明する時間があまり日本の病院は足りていない気がします。

 

 

それらを自分で理解できずに在宅に戻るからまた繰り返す。なぜ自分は転びやすいのかっていう問いも、原因は前庭の問題かもしれないし、筋力がないからなのかもしれないし、視野の問題かもしれないし…いろいろな原因が考えられるじゃないですか。その人の原因に着目して治療しないとその人は何度も転倒します。

 

 

セラピストは話しをよく聴いて、体のことだけではなくその人の生活とか趣味とか生き方とか、そういうのを聴くなかで、転びやすい原因が分かったり、何がその人らしく生きていくのに必要なのかが分かったりすると思います。相手に伝えることで自分自身を理解してもらう。そういう役割でいたいなって思いますね。


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ーー最後に病院に勤めている理学療法士にメッセージをお願いします。

 

 

望月 病院内の評価で自立して退院しても、在宅で自立できないことが多いように思います。そのギャップを地域のPTは埋めていくのですが、そのギャップを小さくしていけたらと切に思います。在宅に戻った時のことをイメージしたリハを病院ではもっと行ってほしいですね。地域に出でもPTは必要とされていて、就職先の選択肢として地域が存在していることを広めて仲間を増やしていけたらいいなと思っています。

 

 

【目次】

 

第一回:地域リハのヒントは、「福祉大国」スウェーデンにあり

第二回:ユニバーサルデザインは"嘘"? 

第三回:なぜ転倒するのか。健康生成論とは  

 

なぜ転倒するのか。健康生成論とは - 株式会社モノ・ウェルビーイング -

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