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【寄本恵輔先生 | 理学療法士】リハビリ室の屋外で農業。チームアプローチの原点はそこに

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棺桶に入らないと困るから、あし伸ばしといて。

 

―― はじめに、理学療法士になろうと思ったきっかけを教えてください。

 

寄本先生(以下 寄本) ロックンローラーに憧れていた中学生の頃、「スーツを着て満員電車に押し込まれ・・・そんなサラリーマンなんかにはなりたくない」と思っていました。今となっては遠距離通勤電車に揺られ、全国アチコチ、スーツ着て出回っていますが・・・(笑)。

 

人と違うことで誰かの役に立つ。できれば人を驚かせるような仕事がしたいと思っていて、そんな時に職業ガイド本で理学療法士の存在を知りました。当時、理学療法士は周りにいませんでしたし、とても魅力ある仕事のように思えました。

 

―― 理学療法士になって、最初働きはじめたのはどんな病院でしたか?

 

寄本 新人で入職した病院は、私を含め理学療法士が2人しかいませんでした。そこは約800床の総合病院であり、1日40~50人の患者さんを担当し、カルテを書き終わるのが夜中までかかる、そんな環境でした。

 

もちろん先輩が一人しかいませんので、臨床を誰かに教わることもなかったです。また、医師や看護師とも満足に連携をとることもできませんでした。

 

理学療法士としての立場が全く確立していないため、「理学療法士ってマッサージする人だよね」という感じでした。「リハビリなんかやってもやらなくても同じでしょ」ということを平気で言われたり、「この患者さん、足が曲がったままだと棺桶に足が入らなかったら困るから、足伸ばしといて」と言われたこともありました。

 

心にグサってくる言葉でしたが、当時は何もわからない状態でしたので、それすら流しながら仕事をしなければなりませんでした。病棟の飲み会には呼ばれることもなく、呼ばれたと思えば誰かの欠員補充だったりもしました。

 

ーー それだとチームアプローチも難しそうですね‥。そこからどのように病棟と連携を取っていったのですか?

 

寄本 「農業をやる人に悪い人がいない」という単純な理由で、ある患者さんとリハ室の屋外の荒れ地を耕し、農作物を植えて秋野菜を収穫したことがありました。最終的にはエバーグリーンという西洋芝を育てパットゴルフをできるようになるまでになりました。

 

哀れに思ったのか、それとも興味を持ってくれたのかはわかりませんが、休日も汗だくになって芝を刈っていたので、手伝ってくれる病院スタッフも次第に増えてきました。日々の臨床では多忙で聞けなくてもその際に聞くことができ、コミュニケーションをとる機会が増えてったんですよね。今はそれが大きな病院の中で新人の存在感を嫌味なくアピールする方法としては良かったと思っています。

 

その甲斐あって、リハビリテーション科の農業好きな理学療法士として、医師や看護師などから医学・医療についてたくさん学ぶことができました。手術室・アンギオ室に入り浸り、救命科の初療に携わったり、治験のEvaluator(評価者)や、国内外の学会や研修に行くこともでき、当時の理学療法士としてはありえないような経験をさせていただきました。

 

普通の理学療法士っぽくない今の自分が形成されたと思っています。

 

ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者の治験

 

ーー 今すこし話があった「治験のEvaluator」についてもう少し詳しく教えてください。

 

寄本  理学療法士3年目のときに、ALS患者の治験(新しい薬の効果を確かめる作業)を手伝うことになりました。治験の効果判定のためEvaluatorとして、運動機能の評価を担当させていただき、最初は1日3人くらいの話だったんですが、いつの間にか20人くらいのALSの患者さんを診るようになりました。

 

それだけ多く診ていると、次第にいろんな問題点も浮かんでくるようになります。治験の評価よりも病状が進行していくALS患者さんの生活をどう支援するか。作業療法士や言語聴覚士がいないので、自分で自助具を作ったり、構音・嚥下障害のアプローチを試行錯誤していました。

 

それこそ朝から晩まで365日、年末年始もなく、私はほとんど病院で生活をしていました。告知後の患者さんと朝まで泣きながら語り明かしたり、明日も来るねって言ったのに自殺してしまったり・・・患者さんにたくさん成長させていただきました。

 

そんな生活を約3年間続け、500人以上のALS患者さんと携わってきたのですから、日本で一番ALS患者を診た理学療法士になったと思います。

 

―― 勉強会にたくさん通ったとか、たくさん本を読んだわけではないんですね。

 

寄本 当時は勉強会も教科書もなかったので、もちろん尊敬する理学療法士なんかいません。自分で考えて行動するしかなかったんです。さっきお伝えしたように医師や看護師はリハビリって何してくれるのかわかっていませんので、寝たきりの人を離床させていくことに否定的なことが多かった。

 

「何のために起こすの?どうせこの患者退院したら家では寝たきりだよ」と言われ、そこにもすごい苦労がありました。

 

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寄本 恵輔先生経歴

理学療法士 (国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター)

<経歴>

2000年 国立精神・神経センター国府台病院 リハビリテーション科

 2008年 国立国際医療センター国府台病院(現 国立国際医療研究センター国府台病院)リハビリテーション科及び救命科バックアップメンバー

2009年 吉野内科・神経内科医院リハビリテーション科科長、難病マンション「つばさハウス」つばさ訪問看護ステーション、鎌ヶ谷総合病院千葉神経難病治療センター難病脳内科・ALS相談室

2011年  国立精神・神経医療研究センター病院リハビリテーション部リハビリテーション科 理学療法主任

 

 <資格>

専門理学療法士(内部障害系、神経系) 認定理学療法士(神経障害、呼吸、代謝) 呼吸療法認定士 介護支援専門員 日本糖尿病療養指導士 日本救急医学会認定ICLSインストラクター アメリカ心臓協会認定BLS・ACLSプロバイダー Lee Silverman Voice Treatment(LSVT) LSVT BIG therapist

 

<院外活動>

日本神経難病リハビリテーション研究会世話人

東京都理学療法士協会北多摩ブロック世話人

東京都理学療法士協会代議員

小平市リハビリテーション協議会世話人学術部部長 公立昭和病院 非常勤講師

Shanghai Charity Foundation Special Found Caring For Children with rare disease of Duchenne Muscular Dystrophy as the Medical advisor(2013-2015)

JICA草の根事業「カトマンズ盆地における呼吸器疾患患者の早期社会復帰支援に向けての取り組み(2015-2017)―呼吸リハビリテーションの普及―」における専門アドバイザー

 

<原著・総論> 寄本恵輔:筋萎縮性側索硬化症における呼吸理学療法の適応と有効性に関する研究.IRYO.Vol.59.No11:598-603.2005

寄本恵輔:「今を生きる」を支援する緩和ケアとしての訪問リハビリテーション−セントクリストファー・ホスピスの研修を受けて−.訪問看護と介護.Vol.15 No.11.889-894.2010

寄本恵輔:理学療法士の役割. 慢性呼吸不全治療におけるチーム医療―長期人工呼吸器装着患者のより安全で快適な呼吸療法のために―. Clinical Engineering Vol.26 No.2.126-130.2015

寄本恵輔、小野充一:モナッシュ大学から学ぶオーストラリアの緩和ケア・心のケア.緩和ケア.難病と在宅ケア.21(3).44-49.2015

寄本恵輔、有明陽佑:ALSの呼吸障害に対するLIC TRAINERの開発-球麻痺症状や気管切開後であっても肺の柔軟性を維持・拡大する呼吸リハビリテーション機器-.難病と在宅ケア.vo.21.No.7.9-13.2015

寄本恵輔:小森哲夫(監) 神経難病領域のリハビリテーション実践アプローチ.呼吸障害93-116.MEDICAL VIEW.2015

 

<出演>

【寄本恵輔先生 | 理学療法士】リハビリ室の屋外で農業。チームアプローチの原点はそこに

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