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吉村和也先生−厚生労働省保険局保険課で働く理学療法士(PT)−第二部

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医療から介護へ、病院から地域へ

 臨床現場で働くPTの給与については、しっかり考えていく必要があると個人的には思っています。現在、PTの給与は年代別の一般的なサラリーマンの平均よりも低いのが現状です。医療機関で働くPTの給与が決まる主な要因が、PTが医療機関の収益にどれだけ貢献できるか、だとすると、PT一人が実施できる単位の上限数と単位あたりの点数が決まっているため、今後点数が上がるか新たな加算がない限り、給与が大きく変わることはないのではないかと思っています。さらに、現在は2025年に向けて「医療から介護へ」、「病院から地域へ」の観点から医療や介護を見直そうという動きがあり、平成26年度の診療報酬改定率は消費税引き上げもあり若干のプラス改定でしたが、今後は診療報酬そのもののパイが目に見えて大きくなることは難しいと思っています。

この状況の中で我々に出来ることは、PTが関わることがどれだけ患者さんのADLの改善などにつながるか、を客観的な指標でエビデンスをつくり、理学療法やリハビリテーションの必要性を公の場に示すことだと思います。我々の必要性が認められれば、今回の急性期病棟におけるリハ専門職の配置に対する評価があったように、診療報酬の中でも評価される可能性もあると思います。本当に基本的なことではありますが、やはりこれが一番重要なのではないでしょうか。
 yoshimura今後PTの取り巻く状況に対してその課題と打開策をお聞きしました。

理学療法士の専門を発揮できる場所の開拓

 地域包括ケアシステムの構築や地域完結型の医療を目指す中で、高齢者が退院後も自立した生活をおくり続けられるようにすることや、そもそも病院に行かずにいられるようにするために、今後はPTがいろんな場面で活躍していくべきだと思います。介護保険や介護予防の分野はもちろん、より若い世代に向けた企業や学校での健康増進事業や健康教育など、PTがその専門性を発揮できる場所を幅広く開拓する必要があると思います。

厚生労働省は今、予防にかなり力を入れ始めています。昨年示した健康づくりに関する方針では、介護予防事業ではリハ専門職を活用し、機能訓練だけではなく、ICFでいう「活動」や「参加」にもバランスよく働きかける自立支援を推進していくこととしています。また、介護保険の中でも、リハ専門職の役割として、ケアマネや介護職に対して予防や機能回復の視点から適切な助言を行うなど、PT自身がサービスを提供するのみでなく、マネジメントの立場から他の専門職と協力していくことを求める動きがあります。さらに医政局からは「理学療法士が、介護予防事業等において、診療の補助には該当しない範囲の転倒防止のための指導などを行っている場合があるが、この場合、「理学療法士」という名称を用いて活動することは何ら問題がなく、特段の対応の必要はない。」という方向性が示されています。 その他にも、現在、経済産業省が「次世代ヘルスケア産業協議会」を設置し、国民の健康寿命の延伸に向けて公的保険外の予防・健康管理サービスを推進していく動きがあります。ここでの検討事項は実はPTにも深く関わる内容になり得ますので、ぜひ今後の動向等をチェックいただければと思います。 こうした各省庁の予防を推進する動きを見ていると、いま我々にとって非常にいい流れが来始めていると感じます。ここでしっかりこの流れを見極め、予防理学療法を発展、普及させ、世の中のニーズに応えていく姿勢が重要だと思っています。
 yoshimura輪違氏のインタビューに答える吉村先生。実際の意見交換は白熱していました。

理学療法士の要求される能力

 PTは、職人気質といいますか、自分の手・技術で患者さんを少しでも良くしてあげたい、と考えている人が多いように思います。当然その考えは良いことなのですが、今後はそうしたスペシャリストとしてのPTだけでなく、ジェネラリストやコーディネーターとしてのPTも求められるようになり、特に地域では後者が重要になってくるのではないかと思っています。というのも、地域で暮らす何百人から何万人もの人が健康に暮らしていけるようにしていこうと思うと、病院と同じように理学療法をやっていては、到底回りません。地域では他者との連携や役割分担は不可欠です。全て自分でやるのではなく、他の専門職などに任せるところは任せ、知識・技術・リスク管理等の観点からPTでなければいけないところはPTがやる、というような互いの専門性を活かした役割分担が大切だと思います。

 私は大学卒業後すぐに大学院に進学し、地域をフィールドとした高齢者の研究や介護予防事業などをやってきました。大学院の2年間で実際に地域の現場に関わったことで、それまで漠然としていた「地域」のイメージをより具体的にすることができました。また、大学院に進学した直後に参加した全国学会で市役所に勤めておられるPTの方に出会い、その方にお願いをして市の現場を見学させてもらったことも、私の中で今の「地域」の考え方を築くきっかけとなっています。その市役所にはセラピストが十名程度勤めておられ、子供から高齢者まで十数万人いる市民がいきいきと暮らしていけるよう、専門職の視点から環境整備などをされています。見学の中で印象的だったのが、PTは直接的に治療等で関わるのではなく、市内に幅広いネットワークを形成し、地域にあるさまざまな資源を有効活用したり、住民自身が地域住民の健康増進に向けて主体的に考え動けるように働きかけていたことです。この見学を通じて、PTの専門性を改めて考えるきっかけをいただき、工夫次第で我々に出来ることはたくさんあるということを実感することができました。
yoshimura大学生活で大きく変化したその思いを語っていただきました。

吉村和也先生経歴

資格:理学療法士

所属:厚生労働省保険局保険課

経験年数:4年目

出身校:京都大学大学院修士課程、畿央大学

吉村和也先生−厚生労働省保険局保険課で働く理学療法士(PT)−第二部

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