【森岡 周先生】理学療法士|畿央大学大学院健康科学研究科 主任・教授

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【インタビュー:目次】

第一回:不真面目な高校生活から一転、今の礎を築く養成校時代

第二回:自らアポを取り、パリ留学へ

第三回:熱傷にはじまり、腎不全、バイオメカニクス、そして脳研究へ

第四回:畿央大学前学長の生き様に憧れ、大学教員の道へ

第五回:共に楽しむことこそ、教育の原点

第六回:心身の揺らぎを忘れたとき、人間はロボット・AIにとって変わられる。

第七回:異業種、異世代、異性とのコミュニケーションが脳を育てる

最終回:生きる

 

最終回:生きる

森岡先生 実は、私には子供が二人いますが、二人とも大学生になります。

 

私自身の「生きる」について考えたとき、種の保存はもうすぐ終わりです。これはあくまでも私の経験に基づく主観的意識ということを付け加えておきます。

 

結婚が早く、子供を早くに授かることができ、いわゆる子育ても50歳で完了する予定です。

 

50歳で完了してしまうことに対して、今の気持ちを保ったまま、その先を過ごすことができるのだろうか、と不安になります。一時期、発達のリセットのために休むという選択も、実は視野に入れています。

 

一方で、現代社会では晩婚化が進み、子供を育てる期間が遅くなっています。遅くなれば、生活のリスクマネジメントを考える必要が出てきます。

 

また、日本は先進国の一つであり、ある意味豊かであることから、生き方の意識が変わりつつあり、必ずしも結婚にこだわる意識が少なくなってきました。

 

「一家あるいは自分自身を路頭に迷わさないためにはどうすればいいのか」

 

これを考えると、知恵を使い65歳以上になっても、男女問わず仕事を続ける方法を考えなければなりません。そして、今を楽しみつつも「生きる」であったり、「生活する」ことを真剣に考えはじめる20代後半あるいは30代からシミュレーションしておくことも必要です。

 

一つ忠告させて欲しいことは、ファッショナブルなもの、簡単に説明し必要以上に誇張しているもの、不確実であるにも関わらず断定しているものには、その後の成長を止めることになるために飛びつくな、ということです。

 

目先の報酬に飛びつくときは、大抵、外部からの不必要な情報に惑わされた結果、自分自身が無意識のうちに不安や恐怖を感じている場合が多い。脳と行動の関係はそのようになっているようです。

 

薬物依存やネット依存なんかもこれにあたります。セミナー依存な人もいますよね。

 

そうすると、双方向に依存し合う大人な関係でなく、一方向に依存しっぱなしになり、成長をむしろ止めてしまいます。依存される側は、承認欲求が強く満たされているため、カリスマのような錯覚に陥り、心地よくなりますけどね。

 

だから、離れられてしまう、あるいは裏切られてしまうことが恐くなり、実績が乏しいにも関わらず、必要以上に自分を誇張、宣伝することになってしまいます。

 

その情報が正確な証拠に基づいているものなのかを見分けなければなりませんし、基本、医療行為も人間関係の上に成立していますから、すべてにプラセボ効果が有るわけで、誰か個人に対して効果があったからと言って、それが万人への根拠になるわけではないのです。

 

道徳倫理

森岡周先生 最近では、SNS上でいますぐに報酬が得られることを誇張した様々な情報を見ることが増えましたが、報酬は先延ばしにするからこそ意味を持ちます。

 

人間はその先延ばし能力を発達させてきました。目先の報酬よりも将来の報酬を優先する能力の獲得は、まさに脳の発達の賜物です。

 

だから、人間は不確実であるにも関わらず、ある目標に対して淡々と努力することができるのです。

 

しかし、あの手この手で人を呼ぼうとするセミナー・講演を平気で行い、目先の報酬や仮想の敵をつくり、自己の良さをうたう者が業界内にもチラホラ見受けられるようになりました。

 

私たちは、対象者を自立させるための仕事に就いているはずですが、いつの間にか、プラセボ効果を用いて、リピーターを呼び込む方向へ意識転換している者もいます。

 

極端な比喩になりますが、例えば、男性が女性を口説こうとする時に、人を批判しながら自分のすぐれた点を誇張する男性と、そんなことをせずとも、その良さがにじみ出ている男性と、どっちに惹かれるか、考えてみてください。

 

新しいことに挑戦することはとても大事だとは思いますが、“道徳倫理”に反することだけは許されません。最近では、苦言を呈してくれる人が少ないのかもしれません。

 

言う方も言われる方もいい気持ちではありませんが、私自身はなるべく伝えるようにしています。

 

私自身は、目上の方に言う場合もありますし、逆に年下に言われることもあります。

 

この年になっても、そして外部であっても、おかしいことをおかしいと指摘してくれる存在がいることは、非常にありがたいことだと思っています。

 

いわゆる医療者の中で、人の成長を促し、目標を達成させる能力に療法士は長けていると思っています。特殊なテクニックよりも、むしろこの能力こそ社会から求められているスキルと言え、ここに専門性があると私は思っています。

 

テクニックに走る気持ちもわかりますが、それは自分本位の気持ちが実は強いはず。私もそうでした。

 

しかし、「もし自分、あるいは大事な人が脳卒中になったら、本当にその治療あるいはリハビリテーションを受けたいのか、受けさせたいのか?」と考えたとき、その答えが揺らぐはずです。こころを常に揺らがしておかなければ、謙虚さを失います。

 

脳は一度壊れると、元どおりになることはありません。そして機能回復という言葉は、過去に戻るという様相が強い感じもします。私自身、元に戻るという考えは、過去に戻るという意味でナンセンスだと思っています。

 

脳の機能として、最も優れている点は記憶と予測だと私は思っています。記憶は、将来をうまく生きていくために必要なものです。小学生の子供が幼稚園に戻りたいなどとは言いません。

 

脳は記憶を蓄え、それを使って未来を想像したりする予測器官です。だから、脳科学の視点から考えると「回復」とは、過去の状態に戻るというのではなく、未来に向かって、その身体を使って新しく「学習」するということになります。

 

脳は、人のこころを前向きにさせる大事な器官です。だから、脳卒中になっても、80歳になっても、ちょっとした未来が楽しみだと思えるよう、その人のこころを動かすことがとても大事だと思います。

 

そのコミュニケーションスキルこそ、まずは療法士が身につける能力だと、私は思っています。

 

― 先生にとってプロフェッショナルとは?

 

「信念を持ちながらも謙虚な人。時代に適応し続ける人」

「人に見られている意識、そして社会における自分の役割を感じ取る能力を持ち、それを演じきる人」

「人間は自然の一つであることを意識している人」

 

 

森岡 周 先生 プロフィール

1992年 高知医療学院理学療法学科卒業

1992年 近森リハビリテーション病院 理学療法士

1997年 佛教大学社会学部卒業

1997年 Centre Hospitalier Sainte Anne (Paris, France) 留学

2001年 高知大学大学院教育学研究科 修了 修士(教育学)

2004年 高知医科大学大学院医学系研究科神経科学専攻 修了(特例早期修了) 博士(医学)

2007年 畿央大学大学院健康科学研究科 主任・教授

2013年 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター センター長

2014年 首都大学東京人間健康科学研究科 客員教授

 

畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター HP: http://www.kio.ac.jp/nrc/

森岡 周先生SNS

Facebook:https://www.facebook.com/shu.morioka

Twitter https://twitter.com/ShuMorioka

 

<2017年3月現在の論文・著書>

英文原著73編(査読付)、和文原著100編(査読付)、総説72編(査読無)

著書(単著・編著)15冊、(分担)20冊

http://researchmap.jp/read0201563

 

(撮影地、撮影協力:畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター内)

 

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