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第二回:運動器理学療法では徒手理学療法が必須【埼玉県立大学 理学療法学科教授|藤縄 理先生】

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スポーツ理学療法の基礎に、整形理学療法

ー米国と日本で、学ばれた内容に差はありましたか?

 

藤縄先生 全く違います。レベルに差があるというよりも学ぶ内容に違いがありました。まず、配布資料は授業の項目を書いてありその下にスペースが空けてあるだけ。参考文献は紹介されていましたが、それを読んでも内容が全く理解できない状態でした。

 

理論の授業の後、それを元にした実技と翌週に実技試験がありました。実技の資料は手順について文章だけの説明はありました。さらに、中間試験と最終試験、そして2つの試験の間に文献研究レポートが義務付けられていました。

 

その時の参考文献や実技指導の内容が、このテキスト(系統別・治療手技の展開―感覚器系(外皮)/結合組織/筋系/神経系/関節系)のもとになっています。帰国後、Kaltenborn-EVjenth conceptのコースやAustralian approachのコース、Parisのコースなどを受講しました。

 

スポーツに関しては、整形理学療法の基礎を勉強しなければなりません。スポーツだからスポーツだけというわけにはいきません。私の場合、スポーツをメインとして、その中の必修項目が徒手理学療法です。当時はOrthopedic Physical Therapy といっていました。この部分の基礎が重要であり、このテキストに載っているようなことを一通りやっていきました。

 

 

ー 当時先生が教えていた徒手理学療法の授業では、すでにテキストがあったのですか?

 

藤縄先生 いえ、まだテキストはありませんでした。留学していた際に使用した資料をもとに、私が翻訳し、このテキストのもととなる資料を作成して教えていました。さすがに、文字だけではやりにくかったものですから、徐々に学生をモデルとして写真を載せ始めました。

 

その資料をもとに、「系統別治療手技」の総論(基礎理論)とモビライゼーションのところを私が担当しました。総論もそうですが、それは古い方のテキスト(第二版)で、現在改訂されたものには載っていません。

 

今ではテキストも揃い、学校での授業の資料としては申し分ないのですが、ちゃんと教えられる教官が非常に少ないのが問題ですね。

 

 

ーよく徒手療法と聞くと運動器のイメージがありますが、神経難病や脳血管疾患の方にも徒手療法を用いることはありますか?

藤縄先生 疾患は関係ありませんね。人の体なので、原因疾患は関係なく、徒手療法は効果を発揮します。本当は、運動器理学療法の一部として、必ず徒手理学療法が入っていないとダメだと思っています。本来、運動器理学療法の大半を占めるのは徒手理学療法です。運動器疾患の方に運動療法を処方するとしても、関節が硬ければ、かえって身体を痛めてしまうことも考えられます。

 

いまだに痛いROM-exを行なっている施設を目にすることがありますが、50年前と全く変わっていません。日本の運動器といえば、手術の後療法とされています。あるいは、保存療法として徒手療法など行わず、トレーニングだけのケースもあります。ADL指導もそうです。理学療法士が運動器を診るには徒手理学療法の理論、手技がないと運動器は診ることができません。そもそも、一緒のものなのです。

 

 

日本における理学療法教育の歴史

ー教育が変わらない理由はなぜでしょうか?

藤縄先生 スタートがそういう教育ではなかったのです。というのは、東京病院で理学療法士教育が始まったころ、WHOから米国の教員が派遣されてきました。1960年代後半ごろだったと思います。その当時の米国の理学療法士は徒手理学療法をやっていませんでした。運動療法とADLトレーニングのみでした。その頃の教育から、50年間変わっていないのです。

 

 米国が徒手理学療法を始めたのが1960年代後半なのです。ちょうど日本で理学療法士/作業療法士教育がスタートとした時期。そこでStanley Paris(以下パリス)などが米国で徒手理学療法を教え始めました。パリスはニュージーランド人なのです。ニュージーランドやオーストラリア、イギリス、カナダ、いわゆるイギリス圏やドイツなどでは理学療法士が徒手理学療法をやっていました。理学療法の一部として。それが、米国ではカイロプラクティックというものがあります。

 

 

医師とカイロプラクティックは当時、対抗していたようで、当時の理学療法士は医師のもとで運動療法、ADLトレーニング、物理療法を言われるがまま処方されていました。それが今の日本と一緒のスタイルなわけです。しかし、米国は改革していきました。「徒手理学療法を理学療法士の分野でもやってやるんだ」という思いが強かったのだと思います。

 

先進国、例えばG20に出ている国の理学療法士は開業権をもっています。国によっては、米国のある州のように、開業した理学療法クリニックであっても、医師の処方箋が必要なようです。しかし、大部分はダイレクトアクセスが可能なのです。直接診療ができるわけです。

 

そのためには理学療法士が、機能診断できなければなりません。レッドフラッグ、イエローフラッグを評価し、PTの専門外では医師に依頼するという流れができます。レッドフラッグは重篤な病理学的問題で理学療法は適用とはならず、直ちに医師を紹介しなければならない病態です。イエローフラッグは心理・社会的な問題で、医師以外の専門家と協業することも必要です。

 

次のページ>>徒手理学療法の国際基準

 

【目次】

第一回:ピッツバーグ大学へ留学した理由

第二回:運動器理学療法では徒手理学療法が必須

第三回:徒手理学療法の国際基準

最終回:クリニカルリーズニングとは

 

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藤縄 理(ふじなわおさむ) 先生のプロフィール

学歴


1976(昭和51)年 3月 武蔵工業大学工学部機械工学科卒業
1980(昭和55)年 3月 国立犀潟療養所附属リハビリテ-ション学院理学療法学科卒業(同年5月 理学療法士免許取得)
1986(昭和61)年 8月 米国ペンシルバニア州、ピッツバ-グ大学大学院修士課程(スポ-ツ理学療法・整形理学療法専攻)修了(MS; Master of Science in Physical Therapy)
2007(平成19)年 3月 新潟大学大学院医歯学総合研究科生体機能調節医学専攻博士課程修了 博士(医学)



職歴


1980(昭和55)年 4月 国立療養所勤務
1986(昭和61)年 9月 国立療養所犀潟病院附属リハビリテ-ション学院理学療法学科教官に配置換え(犀潟病院併任)
1999(平成11)年 4月 埼玉県立大学保健医療福祉学部理学療法学科 助教授
2005(平成17)年 4月   同上           教授(現在に至る)
2009(平成21)年 4月 埼玉県立大学保健医療福祉学研究科保健医療福祉学専攻リハビリテーション学専修 教授(現在に至る)

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