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その膝の痛みはどこから?―内側の痛みをテーマに―

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 多くの変形性膝関節症(以下膝OA)において、主症状は膝内側部の疼痛です。膝内側といっても、内側には多数の組織があります。まずは、膝内側のどの組織が痛みを発しているのかを特定し、その上で痛みを生じるメカニズムを推察しなければなりません。膝関節は解剖学的に非常に密に結合組織が重なり合っており、互いの組織の滑走不全があると組織間で互いにストレスを与えやすい状態になります。その痛みはどの組織の痛みなのかを特定する上で、何よりも精密な触診が重要になります。

 

■膝の解剖と運動

 膝関節は大きく、膝蓋大腿(PF)関節と脛骨大腿(FT)関節に分けられます。大腿骨膝蓋面の外側隆起は内側隆起よりも高く、幅広で、突出しています。膝蓋骨が通る溝である顆間溝軸は、大腿骨骨幹部軸に対し外方へ約10°傾斜しています。顆間窩は内・外側顆を分けるとともに、膝前十字靱帯と後十字靱帯の通路を形成します。FT関節における膝伸展に伴う脛骨外旋運動は“screw home movement”と呼ばれ、生理学的な回旋運動とされています。Screw home movementによってロックされた膝完全伸展位からの初期屈曲時には、下腿を内旋させることによって終末伸展が解除されます。これには膝窩筋の作用が重要とされています。

 

 膝蓋骨の関節面は滑膜と連絡し、膝蓋下脂肪体は滑膜と線維膜との間に存在します。内側膝蓋大腿靱帯・半月膝蓋靱帯が内側支帯深層に位置し、膝蓋骨外側への動きを制動します。そして、FT関節とPF関節の連動として、膝関節内・外旋と膝蓋骨の運動の理解は必須です。脛骨外旋時に膝蓋骨は外方移動・内方傾斜し、脛骨内旋時に膝蓋骨は内方移動・外方傾斜します。

 FT関節キネマティクス異常として、膝関節伸展に伴う過度の下腿外旋、膝屈曲に伴う下腿内旋不足がしばしば見られます。下腿が外旋位であることによって、膝関節疾患や機能異常につながるとともに、それは膝疾患の治療を難しくします。このような膝の異常な回旋動態を蒲田は「下腿外旋症候群」と名付けました。異常な回旋アライメントでの運動を反復することは膝内側へのストレスを増大させ、痛みや機能低下を引き起こします。

   

■下腿外旋症候群の治療法

 膝関節におけるリアライン・コンセプトの方針を下の図の通りとしています。OA膝のキネマティクス研究の結果をみると、これは典型的な下腿外旋症候群といえます。OA膝のリアライメントとして、下腿外旋拘縮を解消させて膝屈曲に伴う十分な下腿内旋運動を回復させることが必要となります。その結果、外方に偏位した脛骨を正常な位置に近づけることが可能となります。OA膝であってもキネマティクスが正常化してくると、徐々に関節としての運動機能が改善されてきます。他動伸展の痛みが消失したら、①リアライン(伸展制限の解消)、②スタビライズ(膝伸展筋力の回復)、③コーディネート(正常歩行の獲得)を進めていきます。

 膝の正常な回旋アライメントを取り戻すためには、運動療法だけでは困難であり、ISR®(組織間リリース®)の技術が求められます。「CSPT膝編」は、膝関節の回旋アライメント評価とともに、それを確実に改善するための治療を習得できるような内容となっています。膝関節疾患でお悩みの治療家の皆様、ぜひ受講をご検討ください。

 

症例紹介

■症例1

 変形性膝関節(罹患期間5年)の60歳代女性に対して、1回の治療にて以下のような変化が得られました。実施した治療は、下腿外旋拘縮を作っている膝周囲の軟部組織に対する「組織間リリース」と、下腿内旋位での膝伸展・屈曲運動「RRRプログラム」でした。その結果、下の図にあるように、アライメント(膝内反)の改善、可動域の改善が得られ、3回の治療で歩行時痛が消失しました。

■症例2

1.プロフィール

 症例は40歳代、女性であり、趣味としてバレーボール、職業は看護師です。

 

2.現病歴・既往歴

 過去にたびたび左膝の疼痛を経験したが、今回は明らかな受傷機転なく左膝痛出現。仕事やADLでも痛みが出てきたため、医療機関受診。その後しばらく落ち着いたが、約1.5か月後に再び疼痛増悪し、リハビリテーション開始となる。最近の既往歴として左足関節捻挫が挙げられる。

 

3.評価・問題点

 初回評価では、内側膝蓋支帯付近、膝蓋腱外側~脂肪体にかけて腫脹、熱感を認めた。疼痛(圧痛)部位は内側、外側膝蓋支帯であった。荷重、非荷重位とも屈曲、伸展強制で痛みがあり、歩行ではわずかに、階段下りで特に強い痛みを認めた。

 可動域は屈曲155/130°p、伸展3 p /5°であった。筋機能として随意収縮時の内側広筋の緊張は、右5/10、左4/10、MMTでハムストリングス4/4-、中殿筋4/4-、四頭筋筋出力の弱化が指摘された。また大腿四頭筋活動時には膝蓋骨周囲に疼痛を認めた。

 

 伸展筋力発揮時に、著明な下腿外旋位(Q-angle 30°/32°)、膝蓋骨外方傾斜のマルアライメントを認めた。スペシャルテストではLackman’s test(±)、McMurrays Test(-)であり、MRIにて内側・外側半月板に病変が認められた。その他に左足関節距骨後方滑り制限(+)とそれによる足関節背屈制限15/20°、股関節周囲のTightness(-)であった。

 

 以上より、本症例の問題点を伸展・屈曲可動域制限、OKC膝伸展にて、最終域での下腿外旋が著名にみられるマルアライメントとした。

 

4.目標

 下腿内旋の可動性、内旋位での安定性の改善により、内側へのストレス軽減、症状の消失を図る。

 

5.治療内容

 大腿外側のリリースにより、外旋アライメントを修正しつつ、展可動域の向上を図った。脛骨の後方への可動性が不十分であったため、膝窩部の脛骨後方、すなわち膝内側のハムストリングス―腓腹筋間のリリースを丁寧に行い、下腿内旋エクササイズにて、内旋可動域の向上に努めた。

下腿内旋の可動性、内旋位での安定性の改善により、内側へのストレス軽減、症状の消失を図る。

 

6.治療経過

 治療開始初日:非荷重位での疼痛消失(可動域回復)

 2週後:フルスクワット時の疼痛消失

 1か月後:バレー練習部分参加

 2か月後:Q-angle 32°⇒20°改善が認められ、可動域 屈曲、伸展fullとなった。

      筋機能 VMtone 4/10⇒6/10と徐々に回復が得られた。

      動作としては、しゃがみ込み時痛消失、階段下りでは違和感程度となった。

 

7.考察

 今回の症例は、階段の下り動作、しゃがみ込み動作で膝内側の痛みを生じる活動量の多い症例であった。FT関節、PF関節両方の問題を抱えていたが、ROMの改善、下腿外旋アライメントの改善により、スポーツ復帰が徐々に可能となった。

 

セミナー紹介

 リアライン・コンセプトに基づく下腿外旋症候群の治療法を習得されたい方は、CSPT膝関節編の受講を推奨します。このセミナーでは、中高年のOAからアスリートまで、幅広い患者層に共通する下腿外旋拘縮について深く学ぶことができます。多くの人で共通する問題を解決する評価、治療を講習します。ご興味のある方は以下のサイトをご確認ください。(定員まであと10名弱となっています。)

 

CSPT膝関節要項

日時:2017年9月24日

場所:東京都渋谷区(JR渋谷駅近隣)

登録:http://www.glabshop.com/cspt2017/

その膝の痛みはどこから?―内側の痛みをテーマに―

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