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第二回:チェアスキーの発展【日本支援工学理学療法学会 運営幹事|動物に対する理学療法部門 代表運営幹事 秋田 裕先生】

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車椅子で富士山に登る

ー チェアスキーに興味を持ったきっかけはなんだったのですか?

 

秋田先生 理学療法士になって5年ほど経った時に、神奈川県総合リハビリテーションセンターに転職しました。センター内にはリハビリテーション工学科という部門があり、リハビリテーション工学技師が義肢装具や車椅子などの製作や研究をしていました。

 

「車椅子を駆動する時に、どれくらいの力を使うのか、どのくらい酸素を消費するのか」などの研究をしていて「理学療法士も車椅子の練習をするんだから入れ」と誘っていただき、「車椅子の車軸の位置を変えたら、負担がどれくらい増えるのか」という研究に参加させてもらいました。

 

脊髄損傷の方が富士山に登るための車椅子を製作する3年越しのイベントがあって、それにも参加させてもらい、入職した夏に登頂に成功しました。

 

冬のパラリンピックで活躍しているチェアスキーも、の当時はまだ開発段階で、初級者のゲレンデをどうにか滑れる程度のものでした。

 

日本チェアスキー協会という団体を立ち上げて普及活動を続けましたが、スキー用具としてのチェアスキーもどんどん開発が進み、競技スキーとしても発展して現在に至るわけです。

 

エンジニアの方に「チェアスキーを使うためにもトレーニングが必要」ということで、理学療法士として関わるようになりました。開発の中心人物だったエンジニアの田中理さんがロンドンで開催された国際義肢装具学会(ISPO)に参加してチェアスキーの開発について発表したところ、同じセッションで整形外科医ネフ先生が、ドイツでもチェアスキーと同じようなものを開発しているという発表をしていたのです。

 

「だったら一緒にヨーロッパのスキー場で滑り比べをしよう」という話になり、翌年スイスのサンモリッツでチェアスキー場に行くことになりました。そこでは、日本とドイツに加えてスイスでも開発されていた脊髄損傷の方用のソリも加わって交流会をしたんです。

 

たまたま翌年に、スイスの脊髄損傷者協会が「障害者の冬季スポーツワークショップ」を開催するということで、さらにアメリカやカナダからも脊髄損傷の方用のスキーが集まったのをきっかけにして、チェアスキー(国際的にはシットスキーというのですが)が冬季パラリンピックの正式種目になったのです。

 

日本はモノづくりがすごく丁寧ですから、スキー用具としてのレベルは高かったんですけど、競技者としてのスキー技術はまだまだ低かったのです。そこで日本障害者スキー連盟という団体を立ち上げ、スキーコーチを招聘してトレーニングを重ねました。

 

障害者が楽しむための道具

 

― スキー協会ではどのようなお仕事をされていたのですか?

 

秋田先生 日本障害者スキー連盟の中では役員を数年していました。理学療法士としては、選手のクラス分けという仕事をしていました。「あなたはバランスがいいから」とか「麻痺の程度はこのくらいだから」という基準に沿ってハンデキャップをつけ、競技をするのです。

 

― パラリンピックにも関わられていたのですか?

 

秋田先生 選手団には加わりませんでしたが、インスブルックとティーニュの大会には同行して選手のサポートをしました。国内の競技会や強化合宿などでは、体力評価やテーピング、コンディショニングなどを通じてチェアスキーには長く関わっていました。

 

チェアスキーのような用具の開発にも関わらせていただきましたが「障害者の基本的な生活を支える福祉用具ばかりでなく、生活を楽しみ生活を豊かにするさまざまな用具」に興味を持つようになりました。

 

医学的な治療手段をもってしても障害が残ってしまった時にどうするか、というときに力になるのが、工学的なアプローチです。福祉用具を導入したり家の改修をしたして生活環境を整えることです。ここには手すりが必要、歩けなくなったので車椅子が必要、とかですね。こんな経験から私は支援工学に興味を持つようになったのです。

 

日本支援工学理学療法学会の情報

設立の趣旨

義肢装具、車いすや福祉用具による急性期、回復期、維持期(生活期)、終末期の各病期での介入効果の検証や開発等を基盤とする臨床研究の推進とEBMの構築を図り、障がい者の生活自立支援を促進するための住環境整備への関わり、ロボティクス技術による運動療法機器や。福祉工学的支援としての介護機器の活用、新たな開発や効果検証など幅広い領域を網羅しています。さらに運動器、脳血管障害や脊髄損傷を始めとする中枢性神経障害、内部障害や虚弱高齢者等を対象として、関連する領域との横断的臨床研究活動の実践、障がい者(児)、高齢者の活動・参加とノーマライゼーションの促進、さらに隣接する理学療法学会との積極的連携を図りながら、包括的理学療法サービスの展開とQOL向上に寄与することを設立目的としています。

引用:日本支援工学理学療法学会HPより

 

第一回 効果をあげる理学療法技術としての装具療法を考えるフォーラム開催

事前登録を開始しました(H29.12.1~)。

当日受付は行いません。募集定員が少なく、早期に定員となることが予測されます。
受講をご希望される方は早めにご登録をお願いいたします。
 

 

日本理学療法士学会 動物に対する理学療法部門の情報

設立の趣旨

動物に対する理学療法部門は、動物を対象とし、動物自身と動物と生活する人を包括的に支援していくために、日本動物理学療法研究会や関連学会と連携し、獣医療におけるリハビリテーションおよび理学療法に関する臨床研究・基礎研究を行い、人材の育成に努め、動物理学療法の普及と獣医療の発展に寄与することを目的とします。
 また、世界理学療法連名のサブグループの連携窓口になります。

引用:動物に対する理学療法部門HPより

 

秋田裕先生 プロフィール

【経歴】

1949年東京で生まれる。

1969年4月 高校卒業 後、2年間の浪人を経て国立療養所東京病院附属リハビリテーション学院理学療法学科入学。

1973年3月 4年かけて同校卒業。京都府立洛東病院、神奈川県総合リハビリテーションセンター、健康保健総合川崎中央病院(現 川崎社会保険病院)、を経て横浜市総合リハビリテーションセンター2009年の定年まで勤務。

 

2007年 日本理学療法士協会賞受賞

2011年 神奈川県知事表彰(保健衛生表彰)受賞

2015年 厚生働大臣表彰受賞

 

【役職等】

社団法人日本理学療法士協会代議員、生活環境支援系専門理学療法士。

日本支援工学理学療法学会運営幹事

動物に対する理学療法部門代表運営幹事

社団法人 神奈川県理学療法士会監事

日本身体障害者補助犬学会理事長

 

【その他】

 1978年より、車いす障害者のスキー用具である「チェアスキー」の開発と普及活動に参画。1980年の日本チェアスキー協会の設立以後、運営委員、強化部員、理事。日本障害者連盟の設立に携わり理事として障害者スキーの普及と競技選手の養成など、国内国外での活動にかかわる。1984年にはスイス・ドイツの障害者と共に開催したシットスキー国際ミーティング(スイス・サンモリッツ)の企画運営に携わり、1988年第4回冬季パラリンピック大会(オーストリア・インスブルック)、1992年第5回冬季パラリンピック大会(フランス・ティーニュ)にはサポーターとして参加した。1998年第7回長野パラリンピック冬季大会で女子選手として初めて金メダルを獲得した大日方邦子選手は横浜リハセンターででの担当理学療法士だった。

 2000年の上海万博では、万博史上初めて開設された障害者パビリオンで、補助犬(盲導犬、介助犬、聴導犬)5頭をユーザーとともに紹介。理学療法士の職域拡大の課題として、動物に対する理学療法の確立を目指して活動している。

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