第一回:作業療法の本質とは【日本臨床作業療法学会会長 | 澤田 辰徳先生】

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ー 作業療法士になろうと思ったきっかけ

 

澤田先生:人様に言えた話ではないのですが、最初は作業療法士になる気は1ミクロンもなくて、弁護士になろうと考えていました。

 

実際、それなりにいい大学の法学部も受かっていたのですが、親父の飲み友達が作業療法士で、授業料が安いから行けと言われ、行かざるを得ませんでした。スポンサーには逆らえないですね(笑) 

 

なので、どんな仕事かもよく分かってなかったんですよ。リハビリの仕事っていうのは分かりましたけど。電気工事のバイトで病院に行った時に、視能訓練室を見て、バイト先の上司のおじさんに「お前こういうところで仕事するのか」って言われて「多分そうです」って答えていました。(笑)

 

改造ラジカセから藤井フミヤが

 

ー 最初勤めた病院はどちらだったのですか?

 

澤田先生:大学3年生くらいの時に、すごく気さくに面倒見てくださっていた先生に「お前就職どうするんや。何も考えてないんだったら大学院こいや」と言われ、そのまま大学院に進学することにしました。部門がハンドセラピーをだったので、教授にテーマを推奨されて研究は「スポーツ選手の遅発性尺骨神経麻痺をどう早期発見するのか」ということをやっていました。メインは大学院に通いながらいくつかの病院に、週1回のバイトと臨床を見たかったので研修勤務で病院や老健に行っていました。

 

大学院を卒業して臨床に出るとなった時、それまでの臨床経験から、オペをして沢山の作業療法を行って動きが良くなっても、生活で全く使っていない。多少の動きが制限されていても生活でたいして困らない。作業療法の専門性は何かで悩みました。作業療法らしさは障害の重度でこそ生きるなどとその時は単細胞に思って、中枢系の病院に行こうと思いました。今考えれば、間違っているんですけどね。(笑)

 

大学院時代に働いていた非常勤先の先生が、同級生のボバースアプローチの国際インストラクターの先生をお呼びして勉強会をされました。その際にお手伝いさせていただき、初めて見た時は、正直ハンドセラピーの劇的な変化を見ていた私には何をやっているか、何が変わったのか全然分からなかったのですが(笑)。やっぱり脳のことをもっと勉強しなきゃいけないと思い、最初はボバースを熱心にやっているところを探して、いくつかの有名な病院を回ったりしていました。ただ、ふと「作業療法の本質ってなにかな」と考えたときに、「いわゆる機能訓練に特化する」ことだけじゃまずいなと思ったわけです。

 

最終的に選んだ病院は有名な病院ではなく、ボロボロのお化け屋敷のような(笑)長期の療養型病院でした。OTも少なく、トップの人も経験年数が私より1年多いだけ。トップの先生の見学をさせていただきましたが、やっていることは長期入院の患者さんが「外出したい」といったら病院車を使って博物館に連れて行ったり、視覚刺激がなかなか入らない人のために「藤井フミヤが好きだから」と、ラジカセを改造してボタンを押すと藤井フミヤの曲が流れるようにしたりとか。最後に先生が患者さんのことを第一に考えてくれる人であれば歓迎ですと一言言われ、入職を決めました。その先生こそ、運転支援のトップランナーでもある千葉県立保健医療大学の藤田佳男先生でした。藤田さんからは多くのことを学ばせてもらいました。

 

「目的としての作業」と「手段としての作業」

 

ー 「作業療法の本質とは」という話がありましたが、具体的には何なのでしょうか?

 

澤田先生:元ボストン大学のTrombly先生がおっしゃった「作業を目的として利用するか。手段として利用するか。」という二通りであるという考え方です。これが簡潔に作業療法の本質を表していると思います。

目的として利用するっていうのは、服が着替えるようになりたい人が、実際に着替える練習とか服が着られるようにアプローチすることであったり、料理がしたいっていう人に料理ができるようにアプローチすることです。そこには機能回復もあり、代償動作もあり、自助具をつくること、環境を調節することもあり、その人が目的とする作業をできるようにすることが作業療法の本質の一つです。

 

もう一つの手段として利用するっていうのは、いわゆる伝統的な作業療法を指します。実際の養成校教育などでもされていますが、はた織りや陶芸など手工芸などの作業を行うことで人の心身機能を改善する場合です。例えば、機織りによって上肢機能を改善する、畑仕事をすることで鬱々とした気持ちを発散するなどです。元来、作業療法のはじまりとして行われた道徳療法というものがあり、ピネルという精神科医が精神疾患の方に農作業などの簡単な作業を与えたら、非常に効果が見られたということがあり、これがまさしく手段的利用と言えます。つまり、作業には健康を促進する力があることを示しています。結局、私はこの二つが「作業療法の本質」だと思っています。

 

ー 今の若手の作業療法士を見ていると、未だに機能改善に興味をもつ人が多いような気がします。

 

澤田先生:多いのは多いと思います。作業療法が理学療法と混同されてその専門性を見失い、「作業療法はこうあるべきだ」という理論がたくさん出ました。今はカナダやアメリカ、以前こちらでも取材をされた西方先生が通っていた南カリフォルニア大学発祥の“作業科学”という学問も出てきたりして、過去と比較して「作業療法の専門性」というものがかなり明確になってきています。私自身、機能に興味を持つことが悪いとは思っているわけではなく、最終的に対象者の方の大切な作業とその背景を聞き取り、それを家族や大切な方と共有し、作業を利用して効果のある実践をすることが大切だと思っています。

 

【目次】

第一回:作業療法の本質とは

第二回:70人のリハ科立ち上げ。どう束ねる

第三回:高齢者の運転支援に携わる

最終回:若いことは可能性しかない  

 

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澤田辰徳先生プロフィール

1999年広島大医学部保健学科作業療法学専攻卒。

急性期,在宅,特別養護老人ホームでの臨床を経て,2006年に聖隷クリストファー大に着任し,教員として教育現場を経験する。

07年広島大大学院保健学研究科保健学博士。

09年のイムス板橋リハビリテーション病院の開設時より,リハビリテーション科技士長を務める。

その後同院の訪問・通所リハビリテーション事業所の責任者を兼務し,

13年に日本臨床作業療法学会を立ち上げ,会長に就任。

現、東京工科大学 医療保健学部 作業療法学科 准教授。

 

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