マクロに医療を捉えることを担う
学生インタビュアー:
まず、現在の本橋先生のお仕事を教えてください。
本橋先生:
現在は、聖マリアンナ医科大学の医学部で教員をしています。
また、週1日、独立行政法人 国立病院機構本部で診療情報分析研究員をやっています。
どちらの仕事も医療に関連していますが、理学療法とはあまり関係ないです。
学生インタビュアー:
医学部ではどのようなものを教えていらっしゃるのですか?
本橋先生:
公衆衛生です。医学部では、公衆衛生は必須です。公衆衛生は、医の倫理、保健医療論、疫学、統計、予防医学・健康増進、母子保健、高齢者保健、精神保健福祉、感染症対策、食品保健、学校保健、産業保健、環境保健などが含まれ、とても広域な学問です。学生インタビュアー:
では、国立病院機構本部では、どのようなお仕事をされているのでしょうか?診療情報(DPCデータやレセプトデータ)を分析し、医療の質の改善事業を行っています。診療情報分析なんて、あまり聞きなれない言葉ですよね。
国立病院機構では、全国にある144の機構病院に入院したすべての患者さんの入院日から退院日までに行った医療行為や処置、薬剤などがデータ化され、保管されています。
入院データだけでなく、外来のデータもあります。これらの診療情報データを活用して、医療の質の評価や診療の分析を行っています。
学生インタビュアー:
医療の質や診療を分析すると、どのようなことがわかるのでしょうか?本橋先生:
理学療法士を目指している学生さんでもわかる例をひとつ挙げると、1年間に144の機構病院で、人工膝関節全置換術の手術をした患者さんの人数や特性(年齢・性別など)、入院期間、退院先、手術から何日目にリハビリテーションが開始されたのか、1日何時間リハビリテーションが提供されていたのか、どのくらいの間隔(毎日、それとも隔日)でリハビリテーションが提供されていたのかなどがわかります。また、144病院の施設間での比較も可能です。以前は、各病院に調査票を送り、カルテから上記の内容を調べてもらい、その結果をデータ化して分析していました。
この方法では、莫大な時間と人が必要となるため、複数の施設で実施することは難しく、多施設間での比較が困難でした。
しかし、現在は、診療情報データが標準化されたおかげで、短時間で、しかも少ない労力で、多くのデータを得ることが出来るようになり、多施設間での比較も容易になりました。
多施設間で比較するメリットは、自分の病院が提供している医療や診療の状況を客観的、又は相対的に評価することができ、医療の質の向上や診療の標準化に役立ちます。
外部から感じる2つの問題点
学生インタビュアー:
次に、本橋先生の理学療法士としてのキャリアについて教えてください。
本橋先生:
理学療法士の免許取得後は、順天堂大学医学部附属浦安病院のリハビリテーション室(現在はリハビリテーション科)で2年間臨床をやっていました。
急性期病院でしたので、様々な疾患の急性期を勉強することができ、特に疾患別のリスク管理については先輩や医師から厳しい指導を受けました。
また、病院の組織や経営、地域連携などについて興味を持ったのもこの時期でした。
順天堂大学医学部附属浦安病院での様々な経験は、のちの訪問リハビリテーションで大変役に立ちました。
学生インタビュアー:
現在は、理学療法の分野から離れているとのことでしたが、臨床や教育を通して感じていた理学療法士の問題点があれば教えてください。本橋先生:
私が感じていた問題点は大きく分けて2つあります。ビジネスモデルを授業に
学生インタビュアー:
私自身、学生としてインタビュアーをさせて頂き、様々な職種や職域の方々にインタビューすることで視野が広がり、将来を考えるうえで、とてもプラスになっていると実感しています。
本橋先生:
大学4年生の臨床実習前に、様々な分野で活躍されている理学療法士の話をきいたり、ディスカッションすることで新しい視点でリハビリテーションを考えたり、広い視野で理学療法士という仕事を考えることができるようになるのではないでしょうか。
また、自分たちでビジネスモデルを作るなんていう授業があっても面白いと思います。
以前、私が勤めていた専門学校で、医療保健福祉概論という眠くなるような授業を担当していました。
その時の授業の中で、学生さんたちに簡単なビジネスモデルを作ってもらったことがあります。
本橋隆子先生の経歴
【主な経歴】
法政大学法学部法律学科卒業
東邦薬品(株)営業職に就職。中外製薬(株)営業職に転職北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科理学療法学専攻卒業
順天堂大学医学部附浦安病院リハビリテーション室(現在はリハビリテーション科)就職
京都大学大学院 医学研究科 社会健康医学専攻 MPH授与
京都大学 博士(社会健康医学)