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脳の「見える化」 慶大などのチーム開発

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慶應義塾大学の岡野栄之教授らとスタンフォード大学のマーク・シュニッツァー准教授らの共同研究グループは、小型蛍光顕微鏡を用いて自由行動中のマーモセット脳深部神経活動の可視化に世界で初めて成功した。

▶ 世界初・自由行動環境下における霊長類の大脳皮質深部の多細胞活動の計測に成功

 

神経細胞が活動するときに蛍光を発する蛍光カルシウムインジケーターと蛍光顕微鏡を併用するカルシウムイメージング法は、数百個から千個の神経活動を同時に計測し可視化することができる。従来は、脳深部の神経活動を大規模に計測するためには、動物の頭部を装置に固定する必要があったため、複雑な動作や社会行動を行わせながら神経活動を計測することができなかった。今回の研究では、共同研究者のシュニッツァー准教授らが開発した超小型蛍光顕微鏡により、内視鏡レンズを脳に埋植することで脳深部の神経活動を自由行動環境下で計測が可能となった。

 

マーモセットの大脳皮質の運動野で神経細胞に蛍光カルシウムインジケーターを強制発現させ、このマーモセットが随意運動するときに実際に運動野の神経細胞の活動が計測されるか検証したところ、マーモセットがレバーを引く課題を行うと運動野の神経活動が計測データで確認された。さらに、自由行動環境下における運動野の神経活動を計測するために、樹上生活性であるマーモセットがはしごを登っているときの神経活動の計測データの解析により、手がはしごを掴むタイミングで活動する神経細胞を同定した。

これらの神経細胞一つ一つが運動制御にどのように関与するか検証を行うために、マーモセットが左右に手を伸ばす課題を行ったところ、手を伸ばす方向によって神経細胞が活動パターンを変化させる「方向選択性」をもつことがわかった。これらの脳神経活動をもとにマーモセットが手を伸ばす方向を予測する計算モデルを作成したところ、高確率で実際の到達方向を予測することに成功した。

 

本研究で開発した脳深部の自由行動下での計測技術は、運動野より深部に位置する大脳基底核や海馬への展開が可能であり、ヒトに類似した社会性行動や不安行動、認知記憶に伴う神経ネットワークの研究への貢献が期待される。マーモセットはヒトに類似した脳構造・機能を持っており、さらに薬物動態もヒトに近いと考えられている。日本では次世代まで導入遺伝子が受け継がれる遺伝子改変マーモセットの作製技術開発が積極的に行われており、本研究の成果をパーキンソン病やアルツハイマー病、自閉症などの精神・神経疾患モデルマーモセットに適用することにより、ヒトにおける精神・神経疾患の新たな治療へ展開されることが期待される。

 

この研究成果は8月22日の Cell Reports誌に掲載されている。

脳の「見える化」 慶大などのチーム開発

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